[香港 15日 ロイター] - ビール大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)<ABI.BR>がアジア太平洋地域の子会社の香港IPO(新規株式公開)を断念したことを受け、ゴールドマン・サックス(GS)<GS.N>のシニアバンカーが、自社のIPO実績を強調するメールを社員あてに送っていたことが分かった。

ABインベブは12日、子会社「バドワイザー・ブリューイング・カンパニーAPAC」<1876.HK>の香港上場を断念したと発表。「市場環境」など理由に挙げた。

この案件では、モルガン・スタンレー(モルガンS)<MS.N>とJPモルガン<JPN.M>が主幹事を務めていた。グローバルコーディネーターやブックランナーとして他に11行が名を連ねたが、ゴールドマンは関わっていなかった。

ロイターは、ゴールドマンのシニアバンカーが12日、日本を除くアジア太平洋地域のインベストメントバンカーに送った電子メールを入手。

メールの中でこのバンカーは、「できるだけ早く」顧客に電話をかけ、ABインベブ子会社の香港上場失敗は市場の閉鎖を意味しないと安心させる必要があると指示した。

また、「モルガン・スタンレーはここ10年間に延期された香港IPOの2大案件で主幹事を務めた唯一の銀行だ」と指摘。

「ゴールドマンは香港で2010年以来、スポンサーとして10億ドル超の大型IPOを26件、成功させてきた」とし、「モルガン・スタンレーの19件、JPモルガンの15件を上回る」と実績を強調した。

今回のABインベブ子会社の他にメールが言及していたのは、2014年4月に中国の万洲国際(WHグループ)<0288.HK>が予定していた45億ドル規模の香港IPOの延期だ。

WHグループのIPOは、バリュエーションが割高との見方から、投資家の需要が十分集まらなかったため、延期された。当時、この案件にゴールドマンはスポンサーとして、モルガン・スタンレーなどと参加していた。

その3カ月後、WHグループはモルガン・スタンレーと中銀国際だけが主幹事を務めたIPOで21億ドルを調達した。

ゴールドマンとモルガン・スタンレーはコメントを差し控えている。