[ブリュッセル 11日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は11日に公表したユーロ圏に関する年次報告書で、ユーロ圏経済は通商を巡る緊張の高まりのほか英国の欧州連合(EU)離脱やイタリアの債務問題などのリスクに直面しているとの見解を示し、欧州中央銀行(ECB)の新たな刺激策への支持を表明した。

今回のユーロ圏に関する報告書は、ラガルド専務理事が11月にECB総裁に就任する前では最後となる。

IMFはユーロ圏が「低成長と低インフレの長期化」に直面する中、ECBが金融政策を緩和的に維持することは「必要不可欠」と指摘。ユーロ相場については、昨年上昇したもののなお若干過小評価されているとし、ドイツやオランダなどの大幅な貿易黒字を抱える国にユーロ相場の再均衡化に向け投資を拡大させるよう呼び掛けた。

IMFは、世界的な通商を巡る緊張の高まり、英国のEU離脱を巡る先行き不透明性、イタリアの高債務に起因する脆弱性などをユーロ圏経済に対するリスクとして指摘。ユーロ圏の2019年の経済成長率は1.3%と、18年の1.9%から減速するとの見方を示した。ただ20年は1.6%に加速するとした。ユーロ圏の経済成長率については、欧州委員会が前日に発表した四半期経済予測で19年は1.2%、20年は1.4%になるとの見通しを示している。

インフレ率については19年は1.3%にとどまるとし、22年までECBの目標は達成しないと予想。「インフレ目標を下回り続けていることは、長期的な金融緩和が必要であることを示している」とし、ECBの緩和的な金融政策に対する支持を示した。

ECB内で検討されている金利の階層化については疑念を示し、「銀行の総合的な利益に対する影響は極めて小さい一方で、信用状況に対する影響には疑問の余地がある」としたものの、インフレ期待が一段と悪化した場合、一段の緩和が必要になる可能性があり、新たな資産買い入れは選択肢の1つとなるとした。

このほか、ユーロ圏の銀行を通してマネーロンダリング(資金洗浄)が行われるリスクを集約的に監視する仕組みの導入が必要との見解も示した。