【深層】サプライチェーン取材でわかった「食品ロス」の裏側

2019/6/25

捨てられた食品の「墓場」

6月上旬。神奈川県の相模原市にある、食品のリサイクル施設に足を運んだ。今、日本で大量に排出されている食品ロスの実態を、この目で確かめるためだ。
食べ物の残り物を豚の飼料にリサイクルするこの施設には、毎日のように大量の「ごちそう」が運び込まれている。
小麦の香りがふんわり漂う施設に足を踏み入れると、軽自動車ほどの大きなコンテナに、パスタがぎっしり詰め込まれていた。
ゆでられた後のパスタにはツヤがあり、思わず食欲がそそられる。捨てられたものだと知らなければ、ちょっと一口つまんでしまいそうなほど、美味しそうだ。
しかし、このパスタはリサイクル工場に来なければ、ゴミ処理場で燃やされる「廃棄物」になるはずだった。
日本では、こうした食品廃棄物は年間で2759万トンも排出されている。そしてその焼却に投入される税金はおよそ1兆円にも上る。
これは、出版や宝飾品小売などの市場規模と同じくらいの金額だ。
ただしこれは、大豆の搾りかすなど「食べられない部分」も含めた食品系の廃棄物の数値。いわゆる食品の無駄は、ここから食べられるものだけを指して「食品ロス」と呼ばれる。
2016年度の食品ロスは、食品廃棄物全体の4分の1に当たる643万トン。とにかく大量の食べ物が、毎日にように捨てられてしまっているのだ。
しかも食品ロスの量は、ここ数年はずっと横ばい。社会問題になりながらも、減少する傾向はない。このままでは、毎年大量の食品ロスが出続けることになる。
そうした危機感を背景に今年5月、無駄な食品のゴミを減らす「食品ロス削減推進法」が可決された。民間、国、そして一般消費者全てに対しての努力義務を明記したもので、国内で初めての食品ロスに関する法案だ。
しかし一方でこの法案には罰則規定はなく、形骸化する可能性を指摘する声もある。
なぜ、食品ロスが出てしまうのか。
NewsPicksはその深層を徹底取材。見えてきたのは、法案だけでは無くせない食品ロスを生む「構造問題」だった。

「サプライチェーン」を徹底取材