(ブルームバーグ): 情報漏えい問題に揺れる野村ホールディングスは24日、東京都港区のホテルで定時株主総会を開催した。米議決権行使助言会社が取締役選任に疑義を唱えた永井浩二最高経営責任者(CEO)らを含めた取締役の選任議案は可決された。しかし、最終赤字に沈んだ業績の立て直しや不祥事で失った信頼回復など課題は山積みだ。

株主総会の議案は会社が提案した10人の取締役選任のみ。これに対して、米助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、情報漏えい問題で先月に金融庁から行政処分を受けた責任を取るべきだなどとして永井CEOら3人の再任に反対を推奨した。

市場関係者は永井CEOの取締役選任案は可決されるとみていた。ユナイテッド・ファースト・パートナーズのアジアリサーチ責任者、ジャスティン・タン氏はISSの国内投資家に対する影響力は大きくないとして、再選される可能性が高いとコメントしていた。野村HDの資料によると、ISSが今年反対推奨をしている取締役3人の昨年の定時総会での選任案への賛成率は、永井CEOが96%、古賀信行会長は86.5%、園マリ社外取締役は78.3%だった。昨年、ISSは園氏の選任にのみ反対推奨し、一定の影響力を及ぼしたが、結果として再任されていた。

経営に対する圧力も

一方、総会に出席した株主からは落胆の声が相次いだ。東京都足立区在住の岩渕恵美子さん(70)は1株約700円で野村HD株を購入したといい「半分ぐらいに下がってしまい、すごく残念」とため息をつく。総会では金融庁に処分を受けた話が出たといい「評判が悪いから売られてしまうのではないか。株主に心配をかけては駄目だと思う。社員教育をしっかりしてほしい」と注文を付けた。

また、20年来の株主だという阿部幹夫さん(85)は、情報漏えい問題に対する経営陣の姿勢を見極めようと体調不良を押して参加した。しかし、経営陣一人一人が「自分の責任というものを全うしていないような気がして、がっかりした」という。「もう少しシビアな考えをもっていないと、これから野村の将来性はどうかなと思った」と懸念を示した。

野村HDによると、今回の株主総会の出席者数は618人と昨年と比べて131人増加。所要時間は3時間11分(昨年は2時間20分)と、総会屋グループへの利益供与事件が問題となり、過去最長を記録した1997年の総会の3時間19分に迫った。

2019年3月期の連結業績は米リーマン・ブラザーズなど海外買収企業の「のれん」の巨額減損が響き、純損益は1004億円の損失と10年ぶりの赤字に陥った。5月に金融庁の行政処分を受けて、社債の主幹事から野村証券を外す動きも相次いだ。野村HDの足元の株価は380円前後で推移しており、1年前と比べて3割下落するなど低迷が続く。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真代表取締役は「恐らく今の株価で含み益の個人株主はほとんどいない」と指摘。「ガバナンスが駄目で収益も上がらない状態では、経営トップはいいかげん辞めるべきだと考える人もいるだろう」として、永井CEOに突きつけられる不信任票が大幅に増えれば、経営に対する相当な圧力になるとの見方を示した。

(総会の結果や株主の声などを追加して記事を更新します.)

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