[シントラ(ポルトガル) 18日 ロイター] - 関係筋によると、欧州中央銀行(ECB)当局者の間では次の政策手段を巡って見解が分かれており、ドラギ総裁が理事会でまだ議論されていない新たな景気刺激策を示唆したことを受け無力感を抱くメンバーも出ている。

ドラギ総裁は18日、ポルトガルのシントラで開催されたECBの年次会議で、物価の伸びが加速しなければ金融緩和を再開すると表明。今月初めの理事会で、新たな債券買い入れや利下げ、ECBの政策ガイダンスの変更が「提起され、議論された」と述べた。

総裁の発言を受けてユーロは下落、債券利回りは低下。トランプ米大統領はユーロを押し下げることで不当に貿易の優位性を得ようとしていると総裁を批判した。

しかし、年次会議の合間に取材した6人の関係筋の話によると、ECB当局者らはこれほど強いメッセージを予想していなかったという。また今後の政策の道筋についてもコンセンサスは得られていないという。

関係筋によると、利下げや新たな資産買い入れの可能性については、先月に付随的に言及されただけで、新規融資が焦点だったことから実質的な議論はなかったという。

6月理事会後のドラギ総裁のメッセージに市場はそれほど反応しなかった。

関係筋の1人は、その後の世界的な貿易戦争のさらなる激化や一連の弱い経済指標からもリスクの多くがすでに顕在化していることがうかがわれ、ドラギ総裁はメッセージを強めざるを得なかったとの見方を示した。

実際、ドラギ総裁は改善がなければ、一段の景気刺激策が実施されるとの見通しを示し、「マイナスの非常事態」が発生した場合に行動するという6月のメッセージを大きく転換させた。

関係筋によると、政策当局者らはドラギ総裁が緩和措置について「既成事実」として市場にかなり強いメッセージを送っていることから7月25日の次回理事会でそれらに反対できなくなることを懸念している。

ただ、世界的な貿易戦争の激化やイタリアの財政を巡る懸念がすでに高まっていることを踏まえると、7月に議論を戦わせる意欲はほとんどみられていないという。

複数の関係筋は、次回理事会までに明確になる新たな情報がほとんどないことから、6月と異なる政策判断を下すことを正当化するのは難しいだろうとしている。

いずれにしても、どの措置をいつ、どういった順序で実施するかについての議論はまだ開かれているという。

関係筋によると、一部の政策当局者は2兆6000億ユーロの債券買い入れプログラムの再開を支持している。一方、長期間にわたって金利を引き上げないというECBの方針を単に改めて強調することを支持する向きや、利下げに傾いている向きもある。

ECBの報道官はコメントを控えた。