グーグルが「プロジェクト・アリストテレス」で180チームを対象に研究を行った結果、「世界クラスのチーム」が持つ特徴を突き止めた。

カギとなる「チームの集団規範」

企業に勤めていたころを振り返ってみると、私が所属していたチームのいくつかは突出した存在だった。自分は特別な組織に所属しているという実感があった。息を合わせて同じ方向にボートを漕ぐユニットにのみ可能な目標を達成しているという実感があった。
こうしたチームを特別なものにしていた要因を明らかにするのは難しかったが、今後は特定できそうだ。
グーグルは「プロジェクト・アリストテレス」の一環として、180チームを対象に行なった研究の成果を発表した。アリストテレスの言葉「全体は、部分の総和に勝る」にちなんで名づけられたこのプロジェクトの目的は、大きな成果をあげる最高のチームを実現する要因を突き止めることだった。
そこから得られたのは、かつてない驚くべき結果だった。
研究チームは最初、ベストなチームとはさまざまな際立った特徴を持った「ベストな個人たち」で構成されているという仮説を立てていた。
ところが、それは間違いだった。チーム全体のパフォーマンスを向上させる個人の特性に、顕著なパターンは見つからなかったのだ。
わかったのは、大切なのは「このチームに誰がいるか」ではなく、「このチームはどのようにしてともに働いているか」ということだった。具体的には「このチームの集団規範は何か」ということだったのだ。

「イエス!」と答えられるか

では、優れたチームパフォーマンスを生み出すのは、どのような集団規範なのだろうか。それこそまさに、私が優れたチームにいたときに感じていたものだった。
グーグルの研究チームは、それを5つの質問にまとめている。優秀なチームなら、それぞれに「イエス!」と力強く答えられるはずだ。
1. われわれはチームの一員として、不安や恥ずかしさを感じることなくリスクを取れるか
これは「心理的安全性」の問題だ。
大きな成果をあげているチームのメンバーは、ほかのメンバーの前でリスクを取ることを恐れない。過ちを認めたり、質問したり、新しいアイデアを披露したりしても、罰せられないことを彼らはわかっている。
そしてリーダーは、誰でも受け入れるという姿勢のお手本を彼らの前で示す。
これには私も共感できる。いまでもはっきり覚えているが、かつて所属した最高のチームでは、その一員であることや評価してもらっていることが実感できた。自分のすべてをさらけ出せるという安心感もあった。それはまさに本物であり、素晴らしい体験だった。
2. クオリティの高い結果を予定どおりに出すことについて、互いを信頼できるか
互いを信頼できることは、この世で最も大きな力のひとつだ。頼もしいチームメイトが、自分の役目を果たしてくれることがわかっていれば、あなたも自分の役目を果たすことに集中できる。
アカウンタビリティがあるとき、あなたはチームメイトを失望させたくないと思う。しかしそれ以上に、さらに10パーセント努力して、ほかのメンバーからさらに認められようという意欲が高まる。
実際、ミシガン大学が行なった社会心理学研究から、相互の結びつきを高めることは、個人的な目標を追求することよりも、メンバーにとって大きな意味を持っていることが明らかになっている。
そうした感覚は、素晴らしいチームで素晴らしい仕事に取り組んでいるときに、さらに高まる。
3. 目標や役割は明確か
チームには、一定の構造と明確さが必要だ。まさにこれに尽きる。それぞれのメンバーは「組立ライン」における自分の役割と同僚の役割を理解していなければならない。
チームリーダーはこうした理解を、役割に関するグループディスカッションを行うことで確実なものにできる。これによって、あるメンバーの貢献度をほかのメンバーが理解していないせいで、その人がチームを追われるという事態を防ぐことができる。
目標について言うと、私は自著『Make It Matter』のなかで、相互の結びつきを高めるための方法として「3つのC」を紹介した。
リーダーが定める目標は、コモン(Common[共通的]:全員が同じゴールに向かって努力する)で、コンペリング(Compelling[抗しがたい力]:目標が自動的にエネルギーを生み出し、人々を引き寄せる)で、コオペラティブ(Cooperative[協力的]:達成するにはチームが一丸となって取り組むしかない、高い目標)でなければならない。
4. 個人がそれぞれ意味を感じる何かに取り組んでいるか
私たちが意味を見出す物事とは、感情的なつながりを生み出し、記憶に残り、重要に感じられることだ。自分の仕事と感情的につながるとき、その仕事が自分にとって重要だと思えるとき、私たちはそこから意味を得る。実のところ、私たちはそうした意味に飢えているのだ。
人材開発を研究するリンダ・ホルビッチ博士が行なった調査から、私たちの70パーセントは、生活よりも仕事に意味を見出そうとしていることがわかっている。
優秀なチームのリーダーは、それぞれのメンバーにとって何が重要かを把握し、それに応じて、割り当てる仕事やその枠組みを調整する。
5. 自分たちが行なっている仕事は重要なものだと、根本から信じているか
これは「インパクト」の問題だ。チームの誰もが、組織における重要な目標に貢献していると感じているだろうか。
大きな成果をあげているチームのリーダーは、メンバー全員が、自分の仕事がチームのミッションとどう合致しているかを理解できる体制をつくっている。
私が過去に所属した最強クラスのチームには、メンバーの仕事と組織の目標の間にあるいくつものポイントを、時間と労力をかけて結ぶリーダーが存在していた。
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5つの質問を共通分母的にまとめるひとつの質問がある。それは「このチームに誰がいるのか」や「このチームはどんな成果をあげたのか」ではない。「このチームは私をどんな気分にさせるのか」だ。
この問いへの答えを、あなたはこの先もずっと忘れないだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Scott Mautz/Keynote speaker and author, 'Find the Fire' and 'Make It Matter'、翻訳:ガリレオ、写真:urbancow/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.