[ワシントン 6日 ロイター] - 米商務省が6日発表した4月の貿易赤字は前月比2.1%減の507億9100万ドルだった。モノの輸入が15カ月ぶりの低水準となり、民間航空機を中心とした輸出の落ち込みを相殺した。市場予想は507億ドルだった。

3月の赤字額は当初発表の500億200万ドルから519億600万ドルへ改定された。

商務省はこのたび、2014年まで遡って統計を改定した。

トランプ米大統領が掲げる「米国第一主義」政策の中心的な課題である対中貿易赤字は29.7%増の269億300万ドルとなった。一方、対メキシコの貿易赤字は14.1%減の82億ドルとなった。

トランプ氏は5月上旬に、2000億ドル規模の中国製品に最大25%の追加関税をかけ、米中貿易摩擦が高まった。中国は報復措置をとった。

米国とカナダ、メキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で合意に至ったが、トランプ氏が前週、メキシコからの不法移民対策として同国からの輸入品全てに関税を課すと発表したことで協定がこじれるとの懸念がある。10日より5%の関税を課し、メキシコの対策次第で段階的に引き上げるという。

MUFGのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「米国と世界各国との貿易は劇的に減少しており、経済が大打撃を受ける可能性は高まっている」と指摘。「グローバリゼーションと各国間の貿易拡大があらゆる面で恩恵をもたらしてきたが、足元では貿易量の減少がそれらの恩恵を取り去ろうとしている」と述べた。

ナロフ・エコノミック・アドバイザーズの首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「米大統領は関税を課すつもりのようだ」とし、メキシコや中国との貿易摩擦が長引けば「ほぼ確実に消費者・企業双方の活力を削ぐだろう」とした。

4月はモノの輸入が2.5%減の2086億5500万ドルと、18年1月以来15カ月ぶりの低水準だった。輸入は広範な項目にわたり減少した。消費財が10億9900万ドル減。自動車や資本財も減った。軟調な輸入は国内需要が弱いことを示唆している可能性がある。

モノの輸出は3.1%減の1369億4200万ドルだった。15年1月以来の大幅な落ち込みだ。民間航空機が22億9600万ドル減少した。米航空機大手ボーイング<BA.N>の最新鋭旅客機737MAXが、5カ月間で2件の墜落事故を起こした後に運航停止となり、ボーイングは737MAXの納入を3月に停止した。

消費財や自動車の輸出も減った。大豆も減少。米中貿易摩擦が最近高まったことから大豆輸出は今後さらに落ち込む可能性が高い。

世界最大の大豆輸入国だである中国は、貿易摩擦が起きる際に大豆を関税対象としてきた。通商交渉が順調に進む局面では姿勢を和らげる。

実質の貿易赤字を示すインフレ調整後のモノの貿易赤字は819億1200万ドルと、前月の829億9400万ドルから減った。4月に赤字額が減ったことは、貿易が第2・四半期国内総生産(GDP)を押し上げる方向に働くことを示唆する。

景気は総じて、第2・四半期に減速している。

4月は製造業生産と住宅販売が落ち込んだほか、個人消費は緩やかな伸びにとどまった。アトランタ地区連銀が算出している第2・四半期GDPは年率で1.3%増。前月発表された第1・四半期GDPは、好調な輸出と在庫の積み上げ、防衛関連支出が押し上げ要因となり3.1%増加していた。

*内容を追加しました。