中道に落ち着く、集団的意思決定

何か新しいことを始めようとするとき、神経質になってしまうのは自然なことである。だから私たちは、他の人に助言や意見、視点を求め、そうした言葉に耳を傾け、熟考し、判断する。
しかし、決して大きな一歩は踏み出さないだろう。
たしかに重大な決断をする前に、他人の意見を求めるのは理にかなっている。私たちはそうすることを奨励されてもいる。しかも、そうしたアプローチが功を奏することもある。
ただし、非常に重大な決断をする必要がある場合はこれに当てはまらない。それこそ、集団的意思決定が逆効果になってしまう場合だ。というのも、集団思考はたいてい中道の意見で落ち着くからだ。
集団思考は尖ったアイデアを丸くしたり、超少数意見を排除したりする。その結果、アドバイスやフィードバック、そしてとくに議論を深めるために意図的に出された(善意の)反対意見までもが、無難で凡庸な結論に落ち着いてしまう。
加えて、集団的意思決定はあなたに逃げ道を与える。その結論の責任を負うのはグループ全員であるから、うまくいかなかったとしても自分のせいではない、と言い訳ができるのだ。
一方、自分で決断した場合は、すべてが自分の肩にかかってくる。あたなのビジョン、情熱、モチベーション、責任感、すべてだ。
だから、あなたは他人が間違っていると証明するためにも、全力を尽くすだろう。自分が正しいと証明するためにも、あらゆる障害を必死で乗り越えていくだろう。成功を収めるために、どんなことでもするはずだ。

あなたが重大な決断を迫られたとき

これでわかるだろう。あなたが自分の人生で何かを変えたいと思ったとき、本当に必要なのは自分の意見だけなのである。
では非常に重大な決断を迫られたとき、他人からのアドバイスや意見を大事にしながらも、最終決断は自分でするにはどうすればよいのか。この問いへの答えは次のようなものである。
1. 自分の「クレイジー」なアイデアからスタートする
現実的に考えたら不可能だと思うけど、夜中に考えたら可能だと信じられるようなものを選ぶ。
あるいは、誰かに絶対に無理だと言われたアイデアを選ぶ。
(筆者はTEDトークを頼まれたとき、私のような者には不可能だと思ったが、結局は自分が判断を誤っていたのだと後に気づいた)
2. 意見ではなく、データを見る
他人からの助言は有益だが、それはあなたがその助言をデータとして見た場合に限る。
意見には余分な情報もついてくる。たとえば、信頼性(「彼女はとても賢いから、彼女は正しいに違いない」)、罪悪感(「もし彼が正しかったら、いつまでもそのことを言われるだろう」)などだ。
「この町でレストランをオープンしようなんて、君はどうかしてると思うよ」──これは意見である。その意見は正しいかもしれないが、正しくないかもしれない。ただの意見にすぎないのだ。
もしあなたがその人物の意見を重視するなら、どのようにしてその結論に達したのか聞いてみるといい。その結論の背後にあるデータをもらうのだ。
警告や教訓、善意だが根拠の薄い助言など、データでないものはすべて無視しよう。
3. データを評価する
意見や「権威」が排除されると、データ分析はやりやすくなる。プラス面とマイナス面のリストを作り、客観的に賢明な判断を下すのだ。
4. 自分の信念はどれだけ強いか見極める
データ分析では一定のところまでしか到達できない。批判的思考は社会通念に基づく決断に導く傾向があるからだ。
革新的なプロダクトは、後になって考えると、確実なものだと思える。それを思いついたときは成功するなんていう確信などなかったのに。
同じように、新しい産業の台頭は、それが台頭して初めて、それは必然的だったと思えるものだ。つまり、どこかの時点で、どこかの誰かが、他の人たちが信じていなかったことを信じていたのである。
5. 自分は、その「誰か」になれるか
もしあなたが、他人が信じていないものを信じ、その信念の大部分が直感ではなく分析に基づくものであるのなら、一歩を踏み出せばいい。
それは起業かもしれないし、自社の売却かもしれないし、新市場への参入かもしれないし、新プロダクトのリリースかもしれない。いずれにせよ、チャンスにかけてみるべきだ。
あるいは、転職かもしれないし、マラソンへの挑戦かもしれない。おそらくそれは、あなたが以前からずっとやりたかったけど、周りの人たちから正気の沙汰ではないと言われていたことだろう。
自分は決して諦めることなく懸命に努力すると、信じなさい。なぜなら、その決断を下したのは他の誰でもない……あなた自身なのだから。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jeff Haden/Contributing editor, Inc.、翻訳:中村エマ、写真:mikdam/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.