中国のスタートアップ新石器(Neolix)が、配達用ロボットバンの量産を開始した。新石器のほかにも、シリコンバレーのニューロ(Nuro)が同様の技術をテスト中だ。

デリバリーの未来を変える

デリバリーの未来は、ドローンではなく「ロボットバン」かもしれない。
中国のスタートアップ新石器(Neolix)は5月24日、小型バンのような形をした自動運転配達車の量産を開始した。こうした車を手がける世界初の企業を豪語する同社は、京東商城 (JD.Com)や華為技術(Huawei Technologies)などの大手顧客をすでに確保している。
新石器は規模を拡大し、最初の1年で1000台の納品を達成できると見込んでいる。その影響は、とてつもなく大きなものになりそうだ。
阿里巴巴集団(アリババグループ)のジャック・マーは、中国国内のデリバリーは10年以内に、1日あたり10億件に達すると予測している。そして、この技術の商業化は、人を運ぶ自動運転車にとっても教訓になると考えている。
この分野の企業は新石器だけではない。シリコンバレーのニューロ(Nuro)は2019年、約10億ドル(約1095億円)の資金を調達。アリゾナ州で食品雑貨の配達を開始しつつある。
新石器の創業者である余恩源(45歳)は、北京にある彼のオフィスで行われたインタビューで「自動運転車は世界を変えるだろう。馬車の時代から自動車の時代へ移ったときと同じように」と語った。
「私はずっと、すべてをかけて挑む価値のあるものを探してきた。私がいま取り組んでいることが、まさにそれだ」

荷物の受け取り方法には制約

余はこれまでに、中国国内にあるキャンパスなど、まわりを囲まれたエリアで100台以上の車をテストしてきた。新石器製のバンの価格は標準的な車とほぼ同じで、1台約3万ドル(約330万円)だ。
余は以前、物流業界向けのスマートツールを開発していた人物であり、商品の配達は始まりにすぎないと語る。
彼が思い描いているのは、自動販売機を搭載したロボットバンが24時間・年中無休でさまざまなものを販売し、利用者が店まで足を運ぶ必要がなくなる未来だ。
余の自信は、中国のeコマースブームからやって来ている。このブームは、時価総額4000億ドル(約43.8兆円)の阿里巴巴集団をはじめとする巨大企業を生み出してきた。
人間の配達も、ロボットに後れを取るまいと、スマートロッカーなどの開発で効率を高めてはいるが、ロボットが力を高めつつあることはまぎれもない事実だ。ロボットバンなら、給料を払わなければならない配達員は必要ない。人間が運転する車より、事故も減るはずだ。
ただし、制約もある。人間がその場にいて荷物を受け取るか、あるいは車で行ける場所(1階のロッカーなど)をあらかじめ決めておいて、そこに荷物を置いていってもらうかしなければならないのだ。
こうした問題に対してフォードモーターは、荷物を車から玄関先まで運ぶ二足歩行の小型ロボットをソリューションとして提案している。

5年で年間売上10万台を目指す

人を運ぶ自動運転車は現在、大きな規制の壁にぶつかっているが、それに比べると無人配達車のここまでの道のりは抵抗が少なかったと、余は語る。新石器のバンは現在、北京の南西約100kmに位置する新都市「雄安新区」のほか、北京の一部地域や、江蘇省常州市でも運用されている。
デリバリーロボットが現れつつあるのは中国だけではない。
アメリカでも、自動運転の大型トラックが、アリゾナ州フェニックスからテキサス州ダラス間で郵便物を運んでいる。前述したニューロも、2018年12月からアリゾナ州スコッツデールで、スーパーマーケット大手クローガーのロボット・デリバリーサービスを行なっている。
余が、スマート・ロッカーや配達員のためのデジタルアシスタントなどの物流機器から自動運転車への進出を決めたのは2016年だった。
余は現在、非公開会社である新石器の筆頭株主だ。彼のほかには、自動車情報サイト「汽車之家(Autohome)」を創業した李想や、ベンチャーキャピタルの雲啓資本(Yunqi Partners)、耀途資本(Glory Ventures)らが出資している。
余によれば、常州市東部にある新石器の生産ラインでは、年間3万台以上の製造が可能だ。売り上げが伸びれば、パートナーと共同で海外に工場を設立することも計画しているという。
新石器は現在、スイスや日本、アメリカをはじめとする国々の潜在的顧客と話し合いを行っており、5年で年間売上10万台到達を目指している。
「最小の製品から始めたいと思っている」と余は語る。「ロボットタクシーが私たちの日常生活に入り込んでくるころには、100万台を超す自動運転配達車が稼働する世の中になっている可能性がある。自動運転技術を後押しする主要なドライバーになるのは、自動運転配達車のメーカーだろう」
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(執筆:Bloomberg News、翻訳:ガリレオ、写真:©2019 Bloomberg L.P)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.