[ブリュッセル 27日 ロイター] - 欧州議会選で環境派が躍進し、マクロン仏大統領が率いる政党が初めて議席を確保したことから、今後の欧州連合(EU)の通商政策はより守りの姿勢が強まり、気候変動への対処を重視するようになる公算が大きい。

これまで欧州議会の主流勢力だった中道右派と中道左派はともに大きく後退し、法案を通過させる上でリベラル派や環境派の支持を得なければならない場面は多くなるだろう。

定数751の欧州議会において、リベラル派は今回40議席余り増やして第3会派を形成する見通し。それを主導するのは21議席を持つマクロン氏の「共和国前進」で、EU企業の保護や温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定の順守を公約に掲げた。環境派の議席も52から69に増えている。

ルモワンヌ仏外務副大臣は、通商問題に関するEUの会合を前に記者団に対して「欧州議会選の結果に目を向ければ、欧州の人々の守ってほしいという願いや、温暖化対策に配慮して、フランスがいくつかの問題に欧州の通商政策を適応させる積極的な旗振り役を続けていくことを望む動きがあると分かる」と語った。

環境問題を別にしても、EUの中でフランスは中国に外国企業への市場開放を迫るための新たな措置を講じるべきだと最も声高に主張する国の1つだ。環境派もまた、EUが中国に対して強硬姿勢を取ることを求めている。

通商政策は、直近の5年間の欧州議会で政治的な関心が高まった問題で、食品の安全性から温暖化まで幅広く議論が行われた。実際、2009年にEUの通商合意に欧州議会の承認が必要となって以降は、実現した協定には持続的な経済発展を促したり、投資家と政府の紛争を解決する制度の改善などの項目がより多く盛り込まれた。

それでも環境派は、EUがカナダ、日本、シンガポールと交わした自由貿易協定に反対票を投じた。環境派によると、これらの協定は市民や労働者の権利よりも大企業の権利が優先され、金融サービス自由化などの規制緩和に重点が置かれており、環境や消費者にとっての安全性と質の高い基準にはマイナスだという。

<貿易協定の条件>

EUは今後、中南米諸国が加盟する南部共同市場(メルコスル)や、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシアなどと自由貿易協定を結ぶ可能性がある。EU離脱後の英国と新たな合意を交わしたり、米国との間でもより限定的な取り決めをするかもしれない。

欧州委員会は、米国との協議は全面的な通商協定にはならず、環境問題などの追加的なコミットメントを保証するような協定でもないと説明。しかし、環境派は納得していない。

欧州委のカタイネン副委員長(成長・投資担当)は27日、新しい欧州議会では中道右派の欧州人民党(EPP)、中道左派の欧州社会・進歩同盟、リベラル派の欧州自由民主連盟(ALDE)という親EU連合に環境派が加わってもおかしくないとの見方を示した。

ただ環境派がそうした動きに出る場合、相応の見返りを求めるだろう。

環境派が発するメッセージが、他の政党に影響を及ぼしてきた面もある。スウェーデンのリンデ貿易相は、自身が属する社会民主労働党が選挙期間を通じて、EUは今後、パリ協定に調印したり、環境関連製品への輸入関税撤廃に賛成したりする国や地域とだけ自由貿易協定を結ぶと約束してきたと説明した。

リンデ氏は、同国の16歳の少女グレタ・トゥンベリさんの活動によって環境保護が一段と脚光を浴びるようになった流れを受け、新欧州議会の特徴が環境問題への取り組みになることに期待を表明した。

(Philip Blenkinsop記者)