読書が仕事と生活の質を向上させる

生活の質を向上させたい人にとって、読書は最も簡単な方法の1つだ。読書はストレスを減らし、知能や記憶力を高め、心を開いてくれると示唆する研究結果が次々と発表されている。
もし次に読む本を探しているのなら、成功している企業幹部17人が最も影響を受けたと語る本を手に取ってみてはいかがだろう。
1. 『FACTFULNESS(ファクトフルネス)  10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング他 著(邦訳:日経BP社)
「この本の主な焦点は、極貧生活を送る人の数、電気を使用できない人の数、女性の教育レベルといった社会の重要な側面について、ほとんどの人が間違った思い込みをしている理由を説明することだ。
1つのテーマをよく調査せず、本当の理解なしに臆測してしまうことを避けるよう教えてくれたこの本は、私の大きな助けになった。トレンドデータに注目することの重要性も教えてくれた」
──トビー・ガブリナー。企業にグロースプラットフォームを提供し、オンラインで売り上げを伸ばす手助けを行うアドロール・グループ(AdRoll Group)のCEO。同社従業員は500人超で、全世界に6つのオフィスを持つ。
2. 『The Choice: Embrace the Possible』エディス・エバ・エゲル博士 著(未邦訳)
「私がこれまで読んできたグリット(やり抜く力)やレジリエンスに関する本の中で、最も強力な1冊だと思う。16歳でナチスのアウシュビッツ強制収容所に連行されたエディス・エゲル氏の物語だ。
エゲル氏は強制所に着いてすぐ、両親と離れ離れになり、両親はガス室に送られた。エゲル氏はその後、想像を絶する体験をしたが、ホロコーストの恐怖に屈することはなかった。
実際エゲル氏は、こうした体験を経たことで、人生を肯定する強さと並外れたレジリエンスを手に入れ、世界的に有名な心理学者として充実した人生を送ることになった。
エゲル氏の母親は死の間際に、成長へと向かうマインドセットを娘と共有したという。エゲル氏はそれを心に刻んでいる。
『これからどこに向かうのかわからないし、これから何が起きるかもわからない。でも、あなたが心の中で積み上げたものは、誰にも奪うことはできない』」
──ダン・グラック。VCファンド、パワープラント・ベンチャーズ(Powerplant Ventures)のマネージングパートナー。同社は、消費者向け食品飲料やフードサービス、フードテック新興企業への投資を行っている。具体的には、ビヨンド・ミート、リップル・フーズ、スライブ・マーケットなどだ。
3. 『The Most Powerful Woman in the Room Is You』リディア・フェネット 著(未邦訳)
「仕事と家族。情熱を燃やすプロジェクト。こうしたすべてのバランスを取りたい人の助けになるのがリディア・フェネット氏の著作だ。
彼女のデビュー作はオークションハウス、クリスティーズのマネージングディレクター兼戦略的パートナーシップ責任者まで上り詰めたキャリアの年代記だ。どのように仕事で成功を収め、同時にどのように世界中のNPOのために5億ドル以上を集めたかを説明している。
親友との本物の信頼関係や、思わず大笑いしてしまう体験。女性が仕事で成功を収めるために大きな助けとなる実例や教訓を共有してくれる。
さらに、バーバラ・コーコランやマーサ・スチュワート、ニーナ・ガルシア、デボラ・ロバーツなど、女性リーダーたちの賢明な助言が随所にちりばめられている。
物語の力、労働倫理、コミュニティーの活用、交渉、失敗から学ぶこと、周囲にインスピレーションを与えるリーダーシップの原則など、さまざまな話題を取り上げている。フェネット氏は何より、出会ったすべての人と、人間的なレベルでつながることの重要性を理解している」
──クリステン・アレグリ・ウィリアムズ。世界的なテクノロジーソリューションプロバイダーとして、6700以上の企業に向けて人事技術ソリューションを提供しているSAPサクセス・ファクターズ(SAP SuccessFactors)のCMO。「HR Innovation Award」の受賞者でもある。
4. 『スイッチ!―「変われない」を変える方法』チップ・ハース、ダン・ハース 著(邦訳:早川書房)
「自宅で家族や友人と過ごす時間から仕事のプロジェクトまで、人生のあらゆることに『意図』を持つよう促してくれた魅力的な一冊。交流するすべての人と、2人だけの体験を築いていくことの永続的な恩恵を強調している。
私が学んだことは、自分の行動に直感的なインパクトや情緒的なつながりを持たせたいと思ったとしても、そのために週末の自由時間であれ、仕事の予算であれ、リソースを使いすぎる必要はないということだ。
より多くの人(そして企業)がこの本の教訓を生かし、本物の有意義なやり方で周りの人たちと関わり合えば、世界はより良い場所になるだろう。重要なのは、投じる時間や金額ではなく、交流の質なのだ」
──ザール・シュワルツ。フォーブスの「グローバル100」企業の92%を含む1万社以上に対して、ソフトウェア、サービス、専門知識を提供しているBMCのCMO。
5. 『SHOE DOG(シュードッグ)』フィル・ナイト 著(邦訳:東洋経済新報社)
「私の頭に入り込み、いまだに振り落とすことができない物語だ。
まず、私は子どものころからナイキに夢中だったため、伝説の人物から裏話を聞くことができて感激している。起業家として読んでも、リスクを取ることやレジリエンス、決して諦めないことについて書かれた力強い本だと思う。
彼の失敗や挑戦、リアルに描写された成功までの紆余曲折、そしてもちろん、美術学生に35ドルを支払い、いまやナイキの象徴となったスウォッシュのロゴをデザインさせたことなど、彼の勝利の逸話を楽しむことができた。
ナイト氏は、まるで隣に座っているような感じで読者に語りかけてくる。冷酷な実業家というより、旧友や助言者といった雰囲気だ。この本は、読者にインスピレーションと謙虚さを与えてくれる。間違いなく、私がこれまでに読んだ中で最も正直な創業物語だ」
──ジョシュア・ザッド。全世界で180人以上の従業員を雇用しているアルフレッド・コーヒー、アルフレッド・ティー、キャリダッド・ビア(Alfred Coffee, Alfred Tea, Calidad Beer)の創業者兼CEO。
6. 『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』ナシーム・ニコラス・タレブ 著(邦訳:ダイヤモンド社)
「あらゆるプロ、とくに起業家や企業幹部、医師は、曖昧な状況で決断を下さなければならない。
タレブ氏は、日常に蓋然性的な意思決定を持ち込むための枠組みを、豊富な逸話とともに紹介している。あらゆるシナリオで極端なケースを考えながら、最も起こりやすい結果という実際的な現実を生きるうえでの助言だ。
私はこの本を読んだことで、病院と役員会で、より良い診断を下すことができるようになった」
──グリフィン・マイヤーズ博士。全米に50近くの拠点を持つプライマリー・ケア・ネットワーク、オーク・ストリート・ヘルス(Oak Street Health)の共同創業者兼最高医療責任者。同社は、メディケアの受給資格を持つ成人に対して医療を提供している。
7. 『The Mom Test: How to Talk to Customers and Learn if Your Business is a Good Idea When Everyone is Lying to You』ロブ・フィッツパトリック 著(未邦訳)
「仕事のアイデアであれなんであれ、適切な質問をすることで自分のアイデアの正当性を確認することについて、この本は素晴らしいレッスンを提供してくれた。
適切な質問とは、アイデアの善し悪しを尋ねることではない。あなたが解決しようとしている問題に関して共感をもつ方法、どうすれば価値を追加することができるかについて、基本的な真実を突き止めることだ」
──ステファン・リッター。職場のコラボレーションと生産性を改善するためのソフトウェアツールを提供し、2万人以上のユーザーがいるRuum by SAPの共同創業者兼最高製品責任者。
8. 『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール他 著(邦訳:NHK出版)
「この本が個人的な転機となり、私はそれまでの仕事でしてきたことをすべて考え直した。その教訓はシンプルだ。自分は何も知らないと認め、毎日、すべてのことに疑問を持つことだ。
この本は、クラシック音楽の市場を再編するためのマニュアルのような役割を果たしてくれた。クラシック音楽市場は、世界規模のニッチ市場であり、完全に断片化しており、アーティストとオーディエンスのさまざまな相互依存の上に成り立っている。
新たな方法で需要と供給を結びつけるテクノロジーに関するピーター・ティール氏の考えは、適切な問いを投げ掛け、市場におけるわれわれの潜在的役割を明らかにする助けとなった」
──ティル・ジャンクズコウィッツ。全世界180カ国のユーザーに、クラシック音楽のストリーミングサービスを提供するIDAGIOのCEO。アプリのダウンロード数は100万回に達している。
9. 『シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」』ネイト・シルバー 著(邦訳:日経BP社)
「私がこの本を好きな理由は、われわれ人間にとって理解するのが難しく、受け入れるのはさらに難しい『不確実性』を扱っていることだ。
予測の専門家としてのシルバー氏自身の体験が数多く引用されているが、すべてのビジネスリーダーが直面するもっと大きな問題もいくつか取り上げられている。大規模なデータの読み方、確証バイアスが有害な理由、『確実な予測』が外れる理由などだ。
逸話や実例を織り交ぜながら、データに関する物語をつくって伝えるには、概算が有効である理由を教えてくれる。好印象で大胆で明白な予測ほど、外れる可能性が高いとシルバー氏は断言している。
ビジネスリーダーとして、不確実性は人生の一部だと理解し、『ニセの自信』を認めないことが重要だ。こうした基本的理解を受け入れれば、仕事であれ、私生活であれ、これから起きる可能性のあるあらゆることに備え、うまく対処できるようになるだろう」
──ギル・ソマー。全世界3000以上のパブリッシャーにビデオプラットフォームを提供しているコナティックス(Connatix)の製品担当バイスプレジデント。
10. 『パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのか』アンドリュー・S・グローブ 著(邦訳:日経BP社)
「グローブ博士はインテルの創業者で、同社が爆発的な成長を遂げた時期にCEOを務めていた人物だ。シリコンバレーで最も先見性があるリーダーの1人と考えられている。
事業や市場を現実的な視点から見ること、変化や実験を受け入れることなど、インテルを成功に導いた戦略、哲学のいくつかがこの本には書かれている。グローブ氏は、後に現代技術や企業経営を定義づけた原則の多くを支持していた。
パラノイアだけが生き残るというタイトルは簡潔だが、グローブ氏の時代にインテルで働き始めた私からすると、この本と彼の哲学を一言で表した素晴らしい要約として感じられる。多くのビジネスは、自身の神話に取りつかれ、市場力学の変化を見逃してしまうからだ。
素晴らしいリーダーとは、市場の変化に合わせていつでもビジネスをつくり変えられる人物、変化の一歩先を行くため、積極的に実験する人物であるべきだ」
──アーロン・マッキー。位置データによって現実世界のオーディエンスを理解する手助けを行う世界的なテクノロジー企業、ブリス(Blis)のCTO。同社の顧客には、サムスン、マクドナルド、HSBC、メルセデス・ベンツ、プジョーなどの大手ブランドが名を連ねている。
11. 『兵法』孫子 著(邦訳:岩波文庫)
「孫子は古代の軍事戦略家で、そのアプローチや戦略が後の軍事思想に大きな影響を与えた人物だ。この本には、戦争のさまざまな側面について書かれている。孫子の教えは、現代の私生活と仕事にも簡単に応用できる。
『戦争』とは興味深い言葉だ。必ずしも軍事的な意味ではなく、内面的あるいは対外的な衝突の喩えとしても用いられる。私にとっては、軍事戦略の本というより、現実に適応し、乗り越え、尊敬に値する人生を送るための指南書に近い」
──テレサ・フォーマン。数々の賞に輝くデジタル・クリエイティブ・エージェンシー、マクミラン(McMillan)の新社長。テスラ、ユナイテッド・レンタルズ、日立、アドビ、インテュイット、トレンドマイクロなどの大手ブランドを顧客に持つ。
12. 『7つの習慣成功には原則があった!』スティーブン・コビー 著(邦訳:キングベアー出版)
「最初の仕事を始めてすぐに読んだ本。私が好きな概念の1つは、『まずは理解するよう努力しよう、その後、理解されることを求めよう』だ。
このスキルは、リーダーシップの最も重要な側面とは言わないまでも、最も重要な側面の1つだ。基本的に、共感すること、話を聞くこと、質問すること、フィードバックを受け入れることが含まれる。私はこの20年、リーダーシップの中核を成す原則として、この概念に何度も立ち返ってきた」
──ティナ・シャオ。チェース傘下の企業、WePayのCOO。コンスタント・コンタクト、ゴーファンドミー、ミートアップをはじめとする1000以上のプラットフォームが支払いシステムで利用している。
13. 『ピーター・リンチの株で勝つアマの知恵でプロを出し抜け』ピーター・リンチ他 著(邦訳:ダイヤモンド社)
「複雑な概念を理解し、記憶にとどめる最も良い方法は、親近感の湧く物語にすることだ。ピーター・リンチ氏は(この本で)、かつてエリートだけのものと考えられていた株式投資をとりあげ、逸話を多く取り入れた楽しいやり方で説明している。その教訓は、残りの投資人生を通じて忘れることはないだろう。
ただ消費者として生きているだけで、すでにウォール街のスーツを着た連中より優位に立っている。自分の判断を信じればいい。他人の判断より劣っていることなどなく、多くの場合は、むしろ優れているためだ。
実際、私は事業を立ち上げたとき、人は自分の判断を信じるべきであり、世間の常識に従う必要はない、と考えることができた。われわれは日々、この理想に導かれているし、顧客との関係にも役立っていると思う。人々は、テクノロジーが直感に従う力を与えてくれると感じたがっている」
──エメット・サベージ。アメリカ株式市場の上位1%銘柄をスマートフォンで購入できるサービスを提供し、複数の賞に輝くMyWallSt(元ルビコイン)のCEO。
14. 『Coders: The Making of a New Tribe and the Remaking of the World』クライブ・トンプソン 著(未邦訳)
「現在の世界はますます、コードを書き、巨大な規模で実行する個人や小さなチームの意思決定によって形づくられている。日常生活に浸透する製品やサービスに影響を与えたければ、それらがどのようにつくられるかを理解する必要がある。
この不透明な世界に一般大衆がアクセスできるのは、コーダーたちのおかげだ。この本は、そのコーダーたちに焦点を当てた待望の1冊だ。コーダーたちは多様な才能、視点によってIT革命をもたらし、現在、IT革命はあらゆる業界のほぼ全域に広がっている」
──アーロン・ペインター。全世界250以上の企業顧客にソフトウェア対応のクラウドサービスを提供しているクラウドリーチ(Cloudreach)のCEO。大手投資ファンド運用会社ブラックストーンの4400億ドルに上る投資ポートフォリオにも含まれている。
15. 『あなたのチームは、機能してますか?』パトリック・レンシオーニ 著(邦訳:翔泳社)
「私はこの本を一気に読み終えた。スポーツからビジネス、家族まで、良いチームとは何かということに、私はいつも興味をそそられてきた。私はキャリアを通じて、さまざまな大きさのチームを率いる機会に恵まれてきた。
カーボン・ブラックのCEOになってからは、チームがわずか数年で数十人から1100人超に成長するという経験をした。これほど急速な成長は当然、成長痛を伴う。そして、『チーム』の概念はどんどん重要になっている。
レンシオーニ氏はこの本で、ただ機能する良いチームをつくることと、素早く実行できる最高のチームをつくることの違いを強調している。素早く断固とした行動を取るチームをつくり、活用したければ、この本を読んでみることを強くおすすめする」
──パトリック・モーリー。「フォーチュン100」企業の30社を筆頭に、全世界5000以上の顧客を持つエンドポイント・サイバーセキュリティー企業、カーボン・ブラック(Carbon Black)のCEO。
16. 『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』キャシー・オニール 著(邦訳:インターシフト)
「正直に言うと、この本を手に取ったのは、大量破壊兵器(weapons of mass destruction)という言葉にひっかけた、大量数学破壊兵器(weapons of math destruction)という造語に引かれたためだ!
細かく設定されたアルゴリズムが社会に害をもたらすという前提には懐疑的だったが、読んでみると、洞察に満ちた内容だった。著者はデータに関する深い知識を持っており、その知識から導き出した洞察や、データの対象者にもたらされる影響を提示している。
たとえば、偏ったデータで訓練すると偏ったモデルが完成する。モデルの誤用がワシントンD.C.の学区で教員たちのキャリアを傷つけたという物語が、この問題をリアルなものにしている。
著者の根本的な考え方(資本主義や大企業に対する不信)には賛同できないが、機械学習革命がビジネスに与える影響について理解したい人、モデルが人生に与える影響を知りたい人におすすめの良書だ」
──アルヴィンド・プルショタム。シリコンバレーに本社を置き、全世界に6つのオフィスを持つシティ・ベンチャーズ(Citi Ventures)のマネージングディレクター兼ベンチャー投資責任者。
17. 『Almost Everything: Notes on Hope』アン・ラモット著(未邦訳)
「自分自身を認めることさえできれば、仕事での成功、そして人生への満足はほぼ約束される。簡潔だが深遠なアン・ラモット氏の本は、人間の複雑さを受け入れる隙間をつくってくれる。
われわれは皆、素晴らしい行いをすることもあれば、大きな失敗を犯すこともある。ラモット氏は、すべてを受け入れるだけでなく、有効活用している。
彼女は希望について、有益な言葉を述べている。『希望は、私たちの目の前にあるもの、私たちを驚かせるもの、うまくいくように見えるものから湧いてくる』」
──ベス・アンドリックス・モナハン。96社の顧客を持つPRエージェンシー、インクハウス(InkHouse)の共同創業者兼CEO。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Christina DesMarais/Contributor, Inc.com、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:archideaphoto/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.