【橋本舜】健康食品は「宗教」ではいけない

2019/5/18
5月7日に放送された『The UPDATE』では「健康食品は人を幸せにするのか?」と題して、BASE FOOD CEOの橋本舜氏、ライター・編集者の速水健朗氏、産業医の大室正志氏、株式会社ブラウンシュガーファースト代表の荻野みどり氏の計4名をゲストに迎え、健康食品や健康の未来について議論した。
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番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、健康の語源は、体も健やか(すこやか)で、心も康らか(やすらか)であることだ、という橋本氏の「健体康心」が選ばれた。
橋本氏は、「健康」の定義はそもそも「身体と心、どちらも良い状態であることだ」とし、心の状態を重視していない「健康食品」の課題に切り込んだ。
果たして、私たちは「健康食品」と、どう向き合うべきなのか。完全栄養食の普及を図る橋本氏の見る未来図とは。

「健康食品」を目指さない

そもそも、橋本氏が手がけるBASE FOODは、彼自身が「健康食品」に対する課題感があり始めたものだった。
巷には、栄養補助食品やサプリメントなどが数多く立ち並ぶが、消費者の立場として、自分が健康になるために、本当に必要なものがわからなかった。
今回の番組における議論でも、「健康食品」の効果効能について、懐疑的な部分が指摘され、その必要性自体が論じられた。
その中で多く出ていたキーワードは「宗教(思想)」だ。「健康食品というのは、宗教のようなもの」で、それを信じるかどうかは個人によるという論調。
それに対し、橋本氏は「健康や食品が宗教であっていいのか?」と疑問を呈した。その際の発言の意図について、こう語る。
橋本 まず、他の出演者の方々と違い、今の僕は事業者という立場です。
正直、今の時点だと消費者の立場からは、何を選んで食べるのが健康にいいのか、判断が難しい状況です。
ですから、健康を気にしないで、自分の好きなものを食べる、ということ自体は否定しません。
ただ、こういった状況は、事業者からしたら肯定すべきことではないですよね。社会としては改善すべきことですから。
健康はやはり大切で、失った時にその価値に気付くので、健康を気にしないで自分の好きなものを食べても、本当に健康でいられるように、社会をリ・デザインしないといけない。
そういう社会を目指してBASE FOODを創業していますが、まだ創業3年で社会全体を変えるところまでは至っていません。
ただ、10年後20年後、こういう理想が達成されている社会を作る、という意思のもとに事業を行っています。
橋本氏は、現状の「健康食品」に対する課題感について語る。
橋本 健康食品は、美味しくないイメージが強いですよね。あと、文化的ではないというイメージもある。
本来の食品は、美味しくて、文化的で、値段にも幅があり、そしてそれが自分の身体にとってもいい、というものですよね。
いわゆる健康食品というのは、現状、健康意識が高い人だけが、サブ的に取り入れているものです。ただ、健康意識の高い人というのは、もともとけっこう健康なので、これ以上健康にできる余地が小さい。
日本社会において、健康な人を増やすためには、10年先の健康を考える意識の高い人ではなく、1秒先の美味しいことを優先する人たちに、広がっていかないといけないと思っています。
だから僕は、そういう人たちが誰でも食べている「主食」から変えたいと思っているんです。
そういう点で、BASE FOODは「食品」を健康にはするけれど、いわゆる「健康食品」ではないし、そこを目指してもいません。

誰しも食品の文化的側面を気にしている

「主食」を変えることで、健康意識の低い層まで訴求する、というBASE FOODの志は、まだ道半ばでもある。
橋本 イノベーションというのは、健康食品に限らず、どうしても意識が高く、金銭的に余裕のある人たちに受け入れられるところから始まります。
その後、意識も低くて、金銭的に余裕がない人にも広がっていく。
これがキャズム理論で言う、イノベーター・アーリーアダプター・マジョリティ、という話ですので、その道は辿らざるを得ない。
BASE FOODも、今は健康意識が高い人たちが取り入れています。そのユーザーとは、たとえばNewsPicksの読者のような、長期視点で考えられるニューエリートの人たちです。
でも、その人たちに広まり、生産量が増えれば、値段は下がっていきます。そうすると、より多くの人たちも、BASE FOODを食べる時代がくる。
それはもうパソコンやスマートフォンなども含め、あらゆるイノベーションが辿る道ですよね。
「健康食品」ではなく「リアルフード」として幅広い層に普及させるため、BASE FOODは「文化的側面」も大切にする。
橋本 たとえば、会社の代表である僕がこの番組に出る理由です。
僕はタレントではないし、役割としては事業を伸ばせばいいわけで、メディアに出る必要はないはず。それでも出るのは、BASE FOODのビジョンを伝えるためです。
【独自】僕は「主食」で、世界を健康にすることに決めた
何も知らずにBASE FOODを食べるのと、創業チームの想いを知って食べるのって、同じ食べ物でもまるで受ける印象が違うじゃないですか。それも「文化」だと思います。
誰だって、絶対気にはしているはずなんですよ。だって、たとえばなんだかよくわからない白い物体があっても、僕たちは食べないじゃないですか。
目の前に出された食べ物が何料理なのか、どこでどのように作られているのか、そういった文化的側面を少なからず気にしているはずなんです。
僕は、BASE FOODがリアルフードとして普及するために、国内外問わず、シェフと協力をしたり、食文化の継承はとても意識しています。
このGWもイタリアのローマで料理教室に参加したりしていました。
栄養があるだけではなく、美味しさや値段、そして文化的側面も重視する。どれかひとつ欠けていてもいけない、と橋本氏はいう。
橋本 結局、バランスなんです。今日番組内で質問者が「バランスが大事なんだと思います」と言ったら、「何が言いたいの?」ってバッサリ否定されていてかわいそうでしたけど、僕は彼が言っていたことに同意します。
討論番組やメディアって「バランス」がつまらないから、基本的に二項対立にするんですけど、正直、二項対立の時代って明確に終わっているんですよね。
世の中のトレンドは、両立思考だと思います。
「健体康心」や「美味しくて体にいい」というように。美味しければいい、とか、身体に良ければいい、とか、そういう低レベルな効率主義はもう終わっているんです。
白黒はっきりさせるって簡単です。分割していって、セクショナリズムでやりましょう、みたいな。でも、それだと何も発明は生まれないし、社会はよくなっていかないでしょう。
だから本当は、もっとカオスな中でベストを目指すべきなんです。
それは難易度は高いのだけれども、だからこそ、社会はより高みにいくことができるのだと思います。

次回は『早稲田vs慶應』

5月21日(火)のテーマは「早稲田vs慶應 私学頂上決戦」
日本を代表する東京都内の私立大学として、早稲田大学と慶應義塾大学の実力を比較。
就職やビジネス面では、どちらの大学出身者がどの業界に強いのか、両大学で得られる人脈やコミュニティの重要性を交えて語ります。
果たして、令和における早慶の存在意義とは?また、日本を進化させるための早慶の役割とは?
日本の高等教育の未来についても、豪華ゲストと多面的に議論します。ビジネス早慶戦を、ぜひご覧ください。
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<執筆:園田もなか、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>