[ロンドン 2日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は2日、政策金利を0.75%に据え置くことを全会一致で決定した。据え置きは予想通り。国債買い入れ枠も予想通りに4350億ポンドに据え置いた。

中銀は据え置きを決定するに当たり、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が英経済に及ぼす影響が明確になるまで待つことに差し迫ったリスクはないとの見解を示した。ただカーニー総裁は記者会見で、英中銀が緩やかな利上げを再開するペースについて市場は過小評価しているとし、ブレグジットを巡る不確実性が存在することで現時点では金利の適切な水準が押し下げられているとの考えを表明。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)よりもタカ派的な姿勢を示した。

ただ市場はカーニー総裁の発言にほとんど反応しなかった。

英経済はEU離脱賛成派が多数を占めた16年の国民投票以降は減速したものの、当初の予想と比べるとかなり良好な状態にある。

中銀は英経済成長率見通しについて、2019年は1.5%とし、2月に示した1.2%から上方修正。20年は1.6%、21年は2.1%とし、ともに従来の1.5%と1.9%から上方修正した。上方修正は主に世界経済見通しの改善を反映するもの。中銀は「経済成長の基調的な軌道は従来の予想よりも若干力強いように見える。ただ潜在力はやや下回っている」とした。

中銀は今年第1・四半期の成長率は0.5%だったと推定。2月に示した予想の0.2%を上回った。ただ第2・四半期は0.2%に減速するとの見通しを示した。

英国のEU離脱期日は10月31日まで再延期されたものの、中銀は離脱を控えていることで、一部の経済指標の解釈が通常より難しくなっていると指摘。離脱は秩序立ったものになると引き続き予想しているとしながらも、「国内に起因するインフレ指標が示すシグナルはまちまちで、一段の情報が入手されるまで待つことのコストは比較的低くなっている」とした。

英国のインフレ率は現在は目標の2%をやや下回る水準にあるが、失業率は約40年ぶりの低水準で、賃金上昇のペースは約10年ぶりの高さとなっている。

中銀は現在1.9%にあるインフレ率について、向こう2─3年で目標である2%を上回ると予想。2月に示した予想を維持した。失業率については、向こう2年間で3.7%に低下するとの見通しを示した。2月は4.1%だった。

また、金利が1%までしか上昇しなかった場合、向こう3年間で経済が過熱する度合いは2月時点の予想よりも大きくなるとの見方も示した。

カーニー総裁は、原油価格が向こう数年間に下落するとの予測が市場で出ていなければ、上振れはこれよりも明らかに大きくなっていたはずだと述べた。

市場では、政策金利は21年終盤まで1%に引き上げられないとの見通しが出ている。予想される金利水準は2月会合前はこれより約15ベーシスポイント(bp)高かった。

カーニー総裁はこれについて、英経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に変化があったわけではなく、FRBとECBの政策スタンス緩和化による波及的な影響を受けたとの見方を示した。

英中銀の利上げは、08年の金融危機以降では17年11月と18年8月の2回にとどまっている。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの投資ストラテジスト、リューク・バーソロミュー氏は「英中銀はブレグジットで身動きが取れなくなっているが、経済指標からは、それほど遠くない将来に利上げが実施されることがおおむね示されている。現況が維持されれば、中銀内から利上げを求める声が出始めると予想している」と述べた。