困難に直面しているすべての人へ

誰しも苦しい戦いや迫りくる災難に、ぐっと耐え忍ばなくてはならない局面がある。それは、起業家でもリーダーでも勤め人でも、スタートアップでも変わらない。とりわけスタートアップはそうだろう。
それをよく知っているのが、リンクトイン(LinkedIn)の共同創設者で、ほかにも多くの大型スタートアップに多額の投資を行っているリード・ホフマンだ。
ホフマンは先日、自身のポッドキャスト「Masters of Scale(マスターズ・オブ・スケール)」で、誰もが困難を避けられないという真実について語った。また、どん底であがいているスタートアップに贈りたい助言として、次のように語った。
私が創設または投資したスタートアップは、どこかの時点で、それもたいていは何度も苦難の時期を経験する。会社の存亡の危機だ。

生きるか死ぬかは、その緊急事態のなりゆきにかかっている。チームは疲弊する。チームは弱気になる。チームは恐怖におびえる。そんなときに私がすることのひとつは、彼らの前でこんなスピーチをすることだ。

「スタートアップが簡単に成功するなら、誰だってやるだろう。スタートアップは難しいものだ。しかし、難しいからこそ、世界を変えるチャンスになる。

どんなスタートアップも試練の時を経験する。ペイパルやリンクトイン、私が個人的に立ち上げたり、投資してきた事業、フェイスブック、エアビーアンドビー、そのどれもが試練の時を経験している。

そんなときには、『なぜこれがいいアイデアだと思ったのだろう。こんな地雷に遭遇するとは、これほど大変だとは予想しなかった』と考えるものだ。しかし、苦しいときこそ、英雄になれる可能性がある。

これまで誰もなし得なかったことを、成し遂げる可能性がある。社会に影響を与える変化を世界にもたらし、何百万という人の人生を変えることができる可能性がある。だからこそ、この苦難に立ち向かい、みなで団結し、懸命に努力して乗り越えなくてはならない。今が英雄になるチャンスだ」
ホフマンの言葉は、バックに壮大なオーケストラの曲が流れているように響く。こうした言葉から得られるのは、大きな困難に直面しているすべての人に役立つ、次のような教訓だ。

1. 困難は気力をくじくものだと知る

そもそも困難とは、そうしたものだ。困難は、生き方を変えさせる。疲弊させる。恐怖と疑念を呼び起こす。思考や行動にも悪影響をもたらしうる。
ただしそれは、こちらがそうしたことを許せばの話だ。
代わりに困難を、最高の自分を生み出すための点火装置ととらえてはどうだろうか。困難を楽しもう。挑戦することの意味を思い起こそう。挑戦とは、何かに抗うこと、もしくは何かの能力を試すことだ。
もしも挑むべき困難がなかったら、われわれはただ同じことを繰り返し、最も楽な道を行くことになるだろう。これはこういうものだという前提や現状、そしてわれわれ自身を含め、およそ何事に対しても挑戦しようとはしないだろう。
より良い自分になることが、気力をかき立てる燃料になるのだ。

2. ひとりで苦しむのをやめる

困難に直面しているのは、自分ひとりでないことを知ろう。たとえ途方もない困難に自信を失っても、疲れを覚えても、失敗の恐怖にさいなまれても、それは自分ひとりではない。
ホフマンが言うように、また筆者自身の経験からも、誰もが「試練の時」に遭遇する。筆者も起業家として、まさしく「存亡を揺るがす困難」を経験してきた。多大な努力をつぎ込んだことが、実を結ばずに失敗に終わったのだ。
しかし、私はその失敗から学び、再び挑戦するための知恵を蓄えたと感じている。そして、その戦いに臨むのが自分ひとりではないという思いは、不思議なことに静かな力を与えてくれる。
だから最も辛い時期には、ともに働く仲間と一致団結し、気力を維持しよう。ひとりで起業している人は、それでもひとりではないことを知ろう。大きな問題に立ち向かっている今の自分の気持ちは、ほかの個人起業家も経験してきた、または経験していることなのだ。

3.「解決する意味」があるから難しい

どんな困難に直面していようと、その困難には理由がある。それは、誰にでもできることではないのだ。そして、それが困難であるなら、それを解決することは意味のある何かを生むはずだ。
重要度の低い問題がどれもすでに解決されているのは、それがたやすく解決できる問題だからだ。それだけに、難しい問題を解決することは一層重要で、かつやりがいのあることなのだ。

4. 英雄になるのは簡単でない

実現しないのではない、実現できないのだ。英雄は、怪物を倒したから英雄になるのであって、蚊を追い払ったからではない。どんな物語でも、英雄は旅に出なければならない。多くの映画がそのパターンで描かれている。
英雄が立ち上がり、山に向かい、あやうく山から落ちそうになり、苦難に陥り、そこから再起して、ついには勝利を収める。頂上を極める前には谷底を経験しなくてはならず、そうでなくては英雄になれない。
自分がいま直面している、気力をくじくような困難を乗り越えたところで、自分が英雄になれるとは思えないと言う人もいるかもしれない。しかし、その考えは間違っている。
あなたは、ほかの誰かにとっての英雄になる。あなたにあこがれる人や、あなたと同じこと、あるいは同じようなことをやりたいと思っている人、そして目の前にある壁を乗り越えたいと思っている人にとっては、あなたは英雄になるのだ。
この巨大な困難を乗り越えられたら、自分は誰の目に英雄と映るのか、考えてみよう。たとえ自分のためでなくとも、誰かのためになると思えば、戦う気力が湧いてくる。
だからぜひ、英雄の旅を続けてほしい。いつか、映画のような素晴らしい結末が待っているかもしれない。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Scott Mautz/Keynote speaker and author, 'Find the Fire' and 'Make It Matter'、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:c11yg/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.