[東京 16日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は16日、衆議院財務金融委員会に出席し、2015―16年に比べて世界経済が悪化していく可能性は低いと述べた。宮本徹委員(共産)の質問に答えた。

黒田総裁は、世界経済は生産・貿易活動に弱めの動きが見られるとしながらも、「15―16年に比べて、世界の市場も総じて落ち着いて推移している。各国の内需や非製造業の動きも比較的しっかりしている」と指摘。先行き、当面減速の動きが続いたとしても、「総じて見れば緩やかに成長していく」とし、米中貿易摩擦の帰すうなど不確実性が存在するものの、「世界経済が15―16年ごろよりも悪化していく可能性は低い」との見方を示した。

麻生太郎財務相も、米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において、世界経済は「年後半から加速し、中期的に堅調に推移していくとの認識が共有された」と述べ、日本経済についても「雇用・所得環境の改善を背景に、内需を中心に緩やかな回復が続いている」と指摘した。

そのうえで、今年10月に予定されている消費増税について、麻生財務相は、少子高齢化の下で社会保障費の充実は大事な視点だとし、「安定財源の確保は絶対の課題。10月に10%に引き上げさせていただく予定」と述べた。

日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れについて「物価安定目標実現のための政策枠組みのひとつであり、これまでのところ大きな役割を果たしている」とし、株価安定は「目標ではない」と述べた。金融市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止することで、前向きな経済活動をサポートすることを目的としているという。

ETFを通じた日銀の株式保有割合は株式市場の時価総額の4%程度であることをあらためて示した。また、ETF買い入れ額の売買代金の総額に占める割合は1%以下だとした。

総裁は「日銀は今後も、政策のベネフィットとコストを比較考量しながら、その時々の状況に応じた適切な政策運営に努める」と述べた。また「物価安定の使命を果たすため、その時々の経済・物価情勢に応じて必要な施策を実施している。あらかじめ特定の手段を排除することなく、ベネフィットとコストを比較考量しながら最適な手段をとっている」と強調した。

*内容を追加しました。

(清水律子)