“ゴーン予備軍”は存在する――「怪物」を生まないために
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記事を書いた記者の1人です。
ゴーン・日産報道を長く手掛けたジャーナリスト・井上久男さんに、単なる同社の「お家騒動」に留まらない本問題が投げかける問題について聞きました。
前編はこちらです
ゴーンという「怪物」を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1904/10/news043.html
マスコミ内部で、記者として圧倒的で優秀で志も気概もある大先輩たちが、(特に終身雇用志向の強烈だった往年の新聞・テレビ業界において)自分の意志や正義にそぐわぬ上の意向に従わざるをえなかったり、「組織の論理」ですり潰されていくのを何度も目撃しました。
日産とゴーン氏の事件の真相がすべて詳らかになるにはかなりの時間がかかると思われます。ただ、本問題を「稀に見る特殊事例」と捉えるか、自社や自分事として捉えられるかは、既に問われてもいいのでは、とインタビューを通じて痛感しました。
井上氏も指摘していましたが、会社組織内で独裁的な経営者に邪険にされても、「辞めてよそでやっていける」という自信さえあればさほど怖くないのです。そして、空気を読まず経営者に諫言できるそういった社員の存在が、ひょっとしたら独裁者の君臨しづらい組織をもたらすのかもしれない。
自分の帰属意識を、いつ潰れたりこちらがクビになるかもわからない「今の勤め先」に置くのか、それとも胸を張って自らの専門性やプロ意識に置くのか。
私事で恐縮ですが、インタビュー後、「プロとして自分の仕事に誇りを持つことが、結果的にこの社会全体も良くするのだ」と、妙にさわやかな気分になったことを思い出しました。ゴーン取材を長らく続けてきたジャーナリストの井上久男さんインタビュー後編です。このような事件を生まないために、われわれのような一会社員が心掛けられることはあるのか。
そこを聞いています。
一つには忖度や空気を読むばかりではなく、自分の考えははっきり伝える、ということがあります。
そのためにはどこでも食べていける専門性やスキルを身に付けること。
そうすれば物事を意見するのに、怖くならなくて済むのです。
鳥山明さんを見出した「伝説のジャンプ編集長」と呼ばれる鳥嶋和彦さんにインタビューした際におっしゃっていたのが、鳥嶋さんはもともと漫画もジャンプも好きではなかったので、「言いたいことを言った結果、漫画編集を外してもらえばラッキーくらいに思っていた」ということです。誰もが鳥嶋さんのように生きられるわけではないのも事実ですが、会社員であるわれわれも自分の働き方や人生観を見つめ直すことが必要なのだとあらためて感じた取材でした。
だからゴーンの件は決して「他人事」ではありません。
その思いを込めたタイトルにいたしました。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/29/news002_6.html