[東京 9日 ロイター] - 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306.T>の社長に就任した三毛兼承氏は、ロイターとのインタビューで、グループ中核の三菱UFJ銀行でコスト削減策として打ち出していた9500人分の業務量削減目標をさらに拡大する方針を示した。

三毛社長は9500人の業務量削減目標について「現在、これを上回る手応えが出ている。良い動きであり、さらに進めていく」と語った。また、70%以上(2019年4―12月期)と、他行比で高水準にとどまっている経費率の引き下げが課題との認識も示した。

三毛氏は一昨年、頭取に就任。昨年度からスタートした中期経営計画の策定で中心的役割を果たした。

79年に慶應義塾大学を卒業し、旧三菱銀行に入行。システム部のほか、米州本部長などを歴任し、海外業務に通じている。

インタビューの詳細は以下の通り。

――グループ中核である三菱UFJ銀行の業績の落ち込みが多い。どのように回復させるのか。

「非常に残念だが、業務純益は2011年から下がり続けている。14年に1度増えたものの、これは出資したタイのアユタヤ銀行を連結したからで、基調は変わっていない。社会や顧客のニーズに合ってないビジネスモデルを、レガシーとしてずっと持ち続けてきたのが原因だ」

「こうした問題意識が、昨年度からの中計に反映されている。中計の施策を実行しても利益水準は1回下がってから反転する計画だ。ただ、顧客部門はすでに前年同期比でプラスに反転した。一方で、ピークの11年には業務純益の4割以上の収益を出していた市場部門が、現在の金利環境下で難しくなっている部分は大きい」

――銀行についてはすでに9500人分の業務量削減を打ち出しているが、深掘りするのか。

「現在、これを上回る手応えが出ている。良い動きであり、さらに進めていく。他社と比較した場合、経費率が劣後しており、考えなければならない」

――中計で掲げた大きな施策に対する現状の評価はどうか。

「収益的なインパクトが大きいものとしては、ウェルス・マネジメント分野、海外の非日系大企業との取引、機関投資家向けビジネスなどが挙げられる。中計を議論した2年半前とは大きく環境が異なっており、うまくいっている分野がある一方で、必ずしも思った通りに進んでいない分野がある。現在、内部で議論しているが、今後、施策の中身を見直したり、もう少し加速するために資源投入したりするものが出てくるだろう」

――外貨調達の問題を考えると、バランスシート(B/S)を縮小させないといけないのではないか。

「この10年間、確かにB/Sそのものが大きくなった。ただ、外貨調達のうち、6割が顧客性預金だ。社債や国債を担保にした調達も含めると8割以上はカバーできており、残りが中長期の市場調達だ。短期の円投などで繰り回しているような不安定な状況にはない。ストレステストも掛けており、外貨流動性に問題はない」

「一方で、今後はB/Sのクオリティーを考えなければならない。数年前から、ビジネスモデルの変更に取り組んでおり、オリジネーション(組成)&ディストリビューション(販売)を進めることでB/Sを大きくするのではなく、アセットを常に見直して低採算のアセットの入れ替えを積極的に進めている。今後、そうした取り組みの中でB/S全体のコントロールができるようになってくるだろう」

(布施太郎 編集:田巻一彦)