人種やジェンダーに左右されない

私はラスベガスの「CXC」カンファレンスで過ごした素晴らしい時間について、多くの記事を書いてきた。とくに、これまでずっと男性一色だったこうしたハイテク分野のステージに、多くの女性が立っているのを見てどれほど驚いたのかについて、書いた。
イノベイティブな女性たちが、未来の新しいテクノロジーや可能性についての「ストーリー」を発表する姿はとても印象的だった。私も、こうした動きをメインステージにもっと持っていくために、自分のやるべきことをやりたいと思っている。
ブロックチェーンという領域は、意外なほど人種やジェンダーに左右されないように、私には見える。
そこに関わる人がどんなものを提供できるか、どんな視点を持っているか、他の人にはできないような形で未来を見通すことができるかといった点を重視しているように、私には感じられる。

多様性やインクルージョンの重要性

どんな分野でも「多様性とインクルージョンが重要だ」ということを説明する時、私はよく、過去に友人と交わした会話を引き合いに出す。友人はそのとき、消防士の格好をした息子を連れていた。
その友人が、多様性とインクルージョンに関する議論はなぜ延々と続いており、これだけ物議をかもしているのだろうかという疑問を口にしたことで、インクルージョンの話になった。
私は彼女の息子を指して、その衣装について訊ねた。友人は、息子は消防士になりたいと言い続けているのだと言う。もう少し詳しく訊いてみると、その子のお気に入りのYouTubeチャンネルには、消防士に扮したスターが出ているのだと教えてくれた。
彼女がそう言うのを聞いて、私は直感的に理解した。私たちが、インクルージョンやゲートキーパー、多様性について話しているのには、次のような理由があるのだ。
1. 何かを生み出す集団が、さまざまに異なるバックグラウンドを持つ人たちで構成されていると、その集団の物事を見通す力やカルチャー、貢献内容はより良いものになる。

 ビジネスはつねに、ほかより優位な「エッジ」を探している。そして現実的にいえば、こうしたエッジはビジネスに欠けているギャップを埋めている。

 こうしたことを実現するために最も明白で効果的な方法が、できるかぎり多様な観点や文化、思考プロセス、知性を活用することだ。

2. 自分の夢を追ってもいいのだと子どもたちに理解してもらうためには、彼ら自身と同じような人たちが、さまざまな場所で活躍している様子を見せなければならない。

3. 私はすでに、2019年は意図的なインクルージョンの年になると述べてきた。なぜならそれこそが、偏見を解消し、意図的にインクルーシブになり、目標を持つための解決策だからだ。

技術の進歩は人間性を高めるか

人間性を前進させるためには、どうするのがいちばんいいのだろうか。その問いに本当にフォーカスしているイノベイターたちが声を上げ始めている。
ブロックチェーンという分野で目にするもののほとんどに私が刺激を受けるのは、この世界には今も、これまでも、これからも、すぐに手に入るスリル(そしてお金)を求めて参入し、すぐに出ていってしまうご都合主義者たちがいる一方で、よいことや透明性、強欲や汚職の終焉を求める人たちが増えているからだ。
数兆ドル規模の貨物輸送・物流業界に向けてブロックチェーンベースのソリューションを提供し、ビジネスを統合しようとしているハイテク企業のShipChain(シップチェーン)で、かつてコミュニケーションディレクターを務めていたシェリー・エーメという女性がいる。
瀕死状態から生還し、心臓移植を受け、ブロックチェーン界の女性トップ100に選出され、本を書き、メディアに寄稿し、ABCニュース、FOX、フォーブス、Thrive Global、Influenciveといった大手メディアにも取り上げられている人物だ。
彼女は世界中を旅して、テクノロジーやリーダーシップ、コミュニティについて講演を行っている。背景にあるのは、10億人の暮らしに影響を与えるという、ひとつのシンプルな使命だ。

ブロックチェーンに多様性を持たせる

ブロックチェーンに多様性を持たせることにより、ブロックチェーンを構築する人たちが協力し合い、ユーザーが何を必要としているかを判断しやすくなるというシナリオが生まれるだろう。
さらに、それよりも大事なことは、ユーザーたちがテクノロジーをめぐって争うのではなく、彼らが必要とするものを手に入れられるようにすることだ。
エーメと私との会話は、次第に話題が変わっていった。長期的な落とし穴についてや、どうすればブロックチェーンというこのテクノロジーに、持続可能な変化をもたらすことができるか。永続的な変化をもたらしたいと望む人たちの未来をどうすれば守ることができるか、といった話題にだ。
1. 信頼を構築し続けなければならない

 エーメと私は2人とも、人々がブロックチェーンの可能性に惹かれるのは、その透明性に魅力があるからだと確信している。

 信頼というものが非常に不足している世界では、とくに古くから存在している数兆ドル規模の金融分野や市場では、これは人々が切望してきた変化なのだ。たとえそれがどんな変化になるのか、人々にはわかっていなかったとしても。

2. これからは、持続可能性を最重要課題にすべきだ

 簡単に得られるお金を求めてやってきて、ひと時のスリルを味わったあとにはすぐにいなくなってしまう強欲な人たちやデイトレーダーは、これからも現れ続けるだろう。

 そうした行為は、共同体全体として阻止し、光を当てていかなくてはならない。それと同時に、長期的なプロジェクトへの支援を支援していく必要もあるだろう。

3. 自分たちのコミュニティを教育する必要もある

 たとえば、私たちが最近経験したレタスがバクテリアで汚染されていた事件には、食品と現在のサプライチェーンプロセスが関係している。

 現状では、レタスにバクテリアが付着していたことがわかったとしても、そのレタスがどこから来たものなのかを食料品店が私たちに伝えるまでには何週間もかかる。これは、サプライチェーンのトラッキングの問題だ。システムが整備されておらず、サプライチェーンには標準化された方法が存在していないのだ。

 ここで私たちが問題にしているのは、相互に作用するグローバルなエコシステムだ。だが、現在のこうしたシステムは実際には、自律性がなく、ほとんど透明性もないまま世界経済を動かし続ける、無限に続くプロセスとネットワークだ。

 たとえ世界経済がこうしたかたちで動いているとしても、こうした事件があれば、不信感はますます高まる。そしてサプライチェーンは、透明性や公開台帳、説明責任などをブロックチェーンのテクノロジーに頼ることができる分野のひとつなのだ。

ブロックチェーンが構築する未来

陳腐な決まり文句に聞こえるかもしれないが、私たちは現在、経済構造の中で最も古いプロセスや市場のいくつかを再構築したり、あるいは解体して再設計したりするためのテクノロジーを手にする地点に到達している。
こうした新しい可能性があるのだから、どうすればこの変化を持続可能で透明性の高いものにできるのか、そして誰にとっても良い方向に持っていけるのかを検討することが、これまで以上に重要になってくる。
私たちは、強欲さではなく善いことを盛り込む、非常に大きなチャンスを手にしている。われわれがどこに着地するのか見るのを、私はとても楽しみにしている。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Tracy Leigh Hazzard/CEO, Hazz Design、翻訳:半井明里/ガリレオ、写真:Suebsiri/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.