[キャンベラ 2日 ロイター] - オーストラリア政府は2日、来年度(2019年7月─2020年6月)予算案を発表した。今年度・来年度・再来年度の経済成長予測を下方修正したものの、景気後退のないプラス成長が30年目に突入するとの見通しを示した。

来年度は財政収支が黒字になるとの見通しも表明。黒字計上は、世界的な金融危機前の2007/08年度以降で初めてとなる。

来年度の財政黒字は71億豪ドル(50億米ドル)となる見通し。昨年12月時点の予測から30億豪ドル上方修正した。

これを受け、政府は減税と医療・教育・インフラ支出増額を発表。同国では5月中旬に総選挙が実施される予定。

議会で演説したフライデンバーグ財務相は「予算が黒字に戻り、豪州が軌道に戻ったと発表する」と述べた。

財務省は「個人消費、企業投資、豪輸出品への需要持続が、いずれも経済成長に寄与する見通しだ」とし、優遇税制措置やインフラ支出も成長を下支えするとの見方を示した。

今年度の経済成長予測は2.25%。来年度と再来年度の経済成長予測はともに2.75%。輸出と個人消費がけん引役になる見通しという。豪州の前回の景気後退は1991年に終了した。

フライデンバーグ財務相は、基本シナリオでは、途切れないプラス成長が続くとしながらも、国内外で「本物で明確なリスク」が浮上しているとも発言。

「住宅市場は冷え込んでおり、信用も伸び悩んでいる。洪水や干ばつの経済への影響もまだ完全には出ていない」と述べた。

また貿易摩擦や中国経済の減速が、輸出依存度の高い豪経済のリスク要因になるとも指摘した。

財政収支が黒字になることで、来年度の純債務は国内総生産(GDP)比18%に低下する見通し。2029/30年度までには純債務が消滅する見込みという。

就職サイト、インディードのエコノミスト、カラム・ピッカーリング氏は、「経済が停滞する中、現時点で必要なものは財政黒字ではないとの議論は正当化される」とし、「予算を巡る状況が良好なら、他になすべきことは多くある」と述べた。

TD証券のアナリスト、アネッテ・ビーチャー氏は、予算案に含まれた「目標を定めた財政刺激策」はオーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)による金融緩和の必要性を打ち消すものになるとの見方を示した。

RBAはこの日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを1.50%に据え置くことを決定した。

オーストラリアでは失業率が2月に4.9%と、8年ぶりの水準に低下。見通しの期間中は5%で推移すると予想されている。このほか、賃金の伸びは20/21年までに3.25%と、現在の2.1%から加速する見込み。

ただオーストラリア労働組合評議会(ACTU)のプレジデント、ミシェル・オニール氏は、政府の賃金見通しは「幻想」に過ぎないとし、「今回の予算案は票を買おうとする試みだ」と批判的な見方を示した。

*内容を追加しました。