一流の経営思想家やビジネスリーダーに学ぶ

世界トップクラスの思想家やクリエーターたちから何かを学びたいと思ったとき、最もコスト効率が良い方法は読書だ。どんな分野であれ、知識を増やしたければ本を読まなくてはならない。
私自身も起業家と最高経営責任者(CEO)として、多くの時間を読書に費やし、先輩ビジネスリーダーの考えやアドバイス、知識を学んでいる。
いつでもどこでも読むものに困らないほど無数の本であふれているように見える世の中において、われわれは優れた書籍を、ツイートのスレッド同様に気軽に読むことができる。重要なのは、読む価値が最も高い本はどれかを知ることだ。
以下に挙げる9冊は、適切なプランニング、チームビルディング、一流になるために他の起業家が用いたメソッドなどを説く書籍だ。これらは時代を問わず有益だと言えるだろう。ごく最近出版された本であっても、知恵を授けてもらえるはずだ。
1.『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ著(邦訳:講談社)
良い習慣を身に着けて、2019年に弾みをつけたい人に最適の1冊。良いことも悪いことも含めた自分の行動すべてについて、じっくり考える機会を与えてくれる。
スマートフォンの使いすぎ(悪い習慣)であれ、毎日の読書(良い習慣)であれ、その行動は偶然ではない。人は習慣を計画できるし、そうすべきだ。
2.『SHOE DOG(シュードッグ)』フィル・ナイト著(東洋経済新報社)
起業家に限らず、どんな人にもインスピレーションを与えてくれるのが本書だ。ナイキを築き上げた創業者フィル・ナイトの決して諦めない気概が描かれている。
本書では、誰もがすでに自覚しているかもしれないが、認めるのが怖い事実、つまり「一夜にして成功をおさめることはできない」ことを思い知らされる。
3.『The Score Takes Care of Itself(スコアは後から付いてくる:私のリーダーシップ哲学)』ビル・ウォルシュ著
有名アメフトコーチが書いた本だが、スポーツ本というよりはビジネス本としての色合いがかなり濃い。
本書が主に言わんとしているのは、優れた実績を残しているチームは、チームを最優先し、その次に家族が来るということだ。採用担当者や、初めてチームビルディングを手がけている人すべてに必読の書と言える。
4.『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』パティ・マッコード著(邦訳:光文社)
本書は短くて読みやすいが、教訓がたっぷり詰まっている。
著者は、ネットフリックスが効率的で力強い社内文化を構築する際に貢献した女性だ。私と同じくみなさんも、本書の教訓を自分の会社内で活用できるだろう。どんな企業であれ、社内で最も重要なチームは人事部門であるという議論を始めるきっかけになる。
5.『HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』ベン・ホロウィッツ著(邦訳:日経BP社)
伝説の起業家ベン・ホロウィッツが、成功に満ちた自身の長いキャリアを、困難(HARD THINGS)を中心としたエピソードで綴っている。
つねに難しい決断に迫られるのがリーダーだ。本書で学べる最大の教訓は、善かれ悪しかれ、リーダーはそれらの決断を下さなくてはならないということ。決断することがリーダーの役割であり、それを避けることはできない。
6.『なぜあの会社はブレないのか? ザ・アドバンテージ』パトリック・レンシオーニ著(邦訳:翔泳社)
本書も、高い業績をあげる一流チームを築くために必要なことを、とくにリーダーシップの立場から説いた1冊だ。
リーダーシップは結局、すべてを噛み合わせることだ。健全な組織を築くカギは、ビジネスのあらゆる側面──マネジメント、運営、文化──を一体化させることだ。それにはまず、トップに立つ人間から始めなくてはならない。
7.『PRINCIPLES(プリンシプルズ)人生と仕事の原則』レイ・ダリオ著(邦訳:日本経済新聞出版社)
本書は3冊分の中身がある本だが、私が最も興味を抱いたのは、「個人の原則」に関して著者が考えを述べた部分だ。
ダリオが心がけているのは、徹底的な透明性と率直さだ。彼は、露骨で的を射たフィードバックを行い、ポリティカル・コレクトネスを自粛している(丁寧な言い方で言えば、そういうことになる)。
個人的には、著者の全般的な価値観に賛成しているわけではないが、より定期的かつ建設的なフィードバックをどのようにして与えることができるかについて、感触を得られことを感謝している。
8.『ジェフ・ベゾス 果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者』ブラッド・ストーン著(邦訳:日経BP社)
アマゾンの歴史と、同社の創業者でもあるCEOジェフ・ベゾスの思考について、最も巧みに描いた1冊であることは間違いない。ベゾスを突き動かすものについて、人間味ある素晴らしい洞察がなされている。
いまではほとんどの人が、アマゾンを成功の代表例だと考えているが、本書を読めば、同社がガレージで創業されたこと、倹約と難しい決断が必要だったことを思い出すだろう。
9.『イノベーションのジレンマ』クレイトン・M・クリステンセン著(邦訳:翔泳社)
ひとことで言えば、本書はインスピレーションがほしいときに読む本だ。ここで挙げた中では刊行時期が最も古く、現在に合わない事例が登場するかもしれないが、本書の一般原理は現代にも当てはまる。
イノベーションのチャンスを失うことは、たとえ世界最大の成功をおさめた企業であっても大きな損失につながる。IBMやインテルと同じ試練を、グーグルやウーバーが近いうちに味わうかもしれない。
本書のような1冊があるからこそ、未来から目を離してはならないという気持ちにさせられる。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jared Hecht、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:bowie15/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.