(ブルームバーグ): 2016年の米大統領選に対するロシア介入疑惑を捜査したモラー特別検察官は、トランプ陣営とロシアとの共謀の証拠はないとする一方、トランプ大統領による司法妨害の可能性に関しては潔白であるかどうか結論を出さなかった。特別検察官が先に司法省に提出した報告書の内容として、バー司法長官が24日に明らかにした。バー長官自身は、捜査で得られた証拠では司法妨害を立証できないとの判断を示した。

バー長官は議会への4ページの書簡でモラー氏の報告書について、司法妨害の「問題の双方の側面について証拠を見つけ」ており、「特別検察官が法律上の難題とした部分は未解決となっている」と説明。同報告書でモラー氏が「この報告書はトランプ大統領が罪を犯したと結論付けていないが、大統領の潔白を証明するものでもない」と判断したことを明らかにした。

しかしバー長官は、自分とローゼンスタイン司法副長官は「特別検察官の捜査で得られた証拠は、大統領が司法妨害を行ったと立証するには不十分との結論に達した」と同書簡に記した。

トランプ大統領は同報告書によって共謀と司法妨害という自らの地位を脅かしかねない2つの疑いが晴れたと受け止めた。ただ議会民主党はこれらの問題に関して有罪か無罪かを決定する権限を主張している。

「潔白が証明された」

トランプ大統領はバー長官の書簡公表の約1時間後、「共謀はなく、司法妨害もなかった、完全かつ全面的な潔白が証明された」とツイートした。またフロリダ州パームビーチで記者団に、「違法テイクダウン(タックル)は失敗した」と語った。

バー長官は16年のロシアとの共謀の疑いについて、「ロシアに関係した個人がトランプ陣営に複数回、支援を申し出たことはあったものの、特別検察官はトランプ陣営ないし陣営に関係する者がこれらの企てでロシア政府と共謀ないし連携したとの判断に至ることはなかった」と説明した。

司法省当局者によると、ホワイトハウスはモラー氏の報告書の検討ないし議論に関与せず、事前にバー長官の書簡を閲覧することもなかった。

ホワイトハウスのサンダース報道官は発表資料で、「特別検察官は共謀も司法妨害も見つけなかった」とし、司法妨害を巡る特別検察官の判断部分は事実と異なる形で論評。その上で「バー長官とローゼンスタイン副長官はさらに、司法妨害がなかったとの判断を下した。司法省の結論は大統領の完全かつ全面的な潔白さの証明だ」と論じた。

司法省当局者によれば、モラー氏は司法妨害の判断を含むバー長官の書簡について見解を聞かれることはなかった。

開示範囲

1年10カ月にわたったロシア疑惑の捜査は終結したが、議会では今後数カ月にわたり、モラー氏の報告書をどこまで開示すべきかを巡り論戦が繰り広げられる見込みであり、さらに法廷で争われる可能性もある。バー長官は議会に宛てた22日の書簡で、今後、モラー、ローゼンスタイン両氏と相談の上、モラー氏の報告書のどの部分を追加で公表するかを決めるつもりだとしている。

民主党議員らは同党が進めている調査に必要だとして、報告書全文および根拠となる証拠を開示するよう求めている。ペロシ下院議長とシューマー民主党上院院内総務は24日の共同声明で、「米国民には知る権利がある」と主張した。

ナドラー下院司法委員長(民主)はツイッター投稿で、「モラー氏が大統領の潔白を結論付けることのなかった報告書を受けて司法省が下した最終判断と、非常に懸念される食い違いを踏まえて、われわれはバー長官を証人として喚問するだろう」と述べた。

一方、ニューヨークの連邦地検は大統領一族の中核企業や大統領選挙戦、就任式実行委員会に対する捜査を進めており、トランプ大統領は引き続きリスクに直面している。モラー氏は一部の問題をニューヨーク・マンハッタンやバージニア州アレクサンドリア、ワシントンの各連邦地検や、司法省の国家安全保障部門に委ねていた。これにより大統領個人や事業に関する捜査は継続する可能性がある。

原題:Trump Claims Victory as Mueller Finds No Collusion With Russia(抜粋)

(今後の見通しなどを追加して更新します.)

--取材協力:Billy House、Steven T. Dennis.

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