[東京 18日 ロイター] - かんぽ生命保険<7181.T>は、2019年度以降、株式資産の自社でアクティブ運用する比率を従来の2倍となる2割をめどに徐々に引き上げる。現在は株式資産の大半を外部機関に委託してパッシブ運用しているが、独自のESG(環境、社会問題、企業統治)評価などを使って成長株や高配当株に投資する。運用部門を率いる立花淳常務執行役(チーフ・インベストメント・オフィサー、CIO)がロイターの取材で明らかにした。

かんぽ生命の株式運用残高は約2兆円。現在、1割に当たる2000億円程度をアクティブ運用している。2割になれば4000億円規模となる。

自社アクティブ運用の柱となるのがESG投資だ。同社のインハウス運用チームは2年前から取り組む高配当株投資に加えて、今年度から独自のESG評価メソッドを使った日本株のアクティブ投資を300億円規模でスタートさせた。これまで順調なパフォーマンスが確認されたことから、同戦略についても4月以降、1000億円規模をめどに順次拡大したいと立花CIOは話す。

立花CIOによると、一般的なESGスコアと過去10年間の株価パフォーマンスを社内で分析したところ、スコアが高いほど株価パフォーマンスが悪い「逆相関」が確認されたという。その要因について、「スコアが高いのは結局、余裕があってESGに前向きないわゆる『出来上がった』企業。その会社の事業や利益、収益性基盤がどうなっているかは評価項目に入っていない」と指摘した。

「一方で我々は、世界のESG課題の解決に寄与する特別な技術やビジネスを持ち、それらが収益成長のドライバーとなっている日本企業に選別投資する。選ばれるのは『これから』という企業が多い。他のESGファンドとは全く別物だ」と述べた。

実際、同社オリジナルのESG評価を使った成長株ファンドの投資先トップ10には、スーパーなどで使用される食品トレー大手のエフピコ<7947.T>や、LEDヘッドランプなど自動車照明器大手の小糸製作所<7276.T>など、一般的なESGファンドの保有銘柄常連のトヨタ自動車<7203.T>やKDDI<9433.T>とは異なる顔ぶれが並ぶ。

例えば、エフピコは食品トレーの製造シェアが首位、さらに使用済みトレーのリサイクルシステムを確立しており、環境に配慮するだけでなく、原料の石油価格の変動に左右されにくい収益構造を持つことが高評価につながった。

「ESG関連の製品や事業が会社の売り上げや利益の構成比にどれだけ寄与しているか、また向こう3年の売り上げと利益の成長にどれくらい寄与するか──。それらは企業の公開情報に載っているわけではない。運用チームの8人のファンドマネジャーとアナリストが年間のべ300─400回の企業面談や工場訪問を行って、もちろん推計値になるが、個別に評価している」という。

同社市場運用部によると、同ファンドの設定来のパフォーマンスは、TOPIX<.TOPX>を2.5%ポイント上回り、主なESG指数のMSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ<.dMIJP00006PJP>やFTSE Blossom Japanに対しても同じ期間でアウトパフォームしている(3月8日時点)。

ただし、かんぽは昨年末の株安局面でも日本株を買い増しておらず、立花CIOも目先の株式相場には慎重だ。

「世界景気の鈍化が続くとみており、まとまったサイズの調整が起きる可能性がある。必ずしも弱気ではないが、少し慎重姿勢を続けなければと考えている」として、来年度は日本株ポートフォリオの総額を増やすのではなく、外部委託パッシブからインハウスアクティブへのシフトを進める意向を示した。

(インタビュアー:植竹知子)