[東京 11日 ロイター] - 日銀は、1月の輸出や生産が大きく落ち込んだことを受け、14、15日の金融政策決定会合で内外経済の現状と先行きを重点的に点検する。海外経済は減速感を強めているが、設備投資や個人消費など内需は比較的堅調とみており、景気は「緩やかに拡大している」との判断を維持する見通し。一方、輸出や生産、海外経済は下方修正を検討する。物価のモメンタム(勢い)は維持されているとして、現行の金融政策の継続を決める公算だ。

<海外経済、中国と欧州が弱め>

1月鉱工業生産指数(速報)は前月比3.7%減となり、経済産業省は生産の基調判断を「足踏みをしている」に下方修正した。

また、1月の輸出は前年比8.4%減と落ち込んだ。特に対中国向け輸出は同17.4%と激減した。生産などの落ち込みを受け、1月の景気動向指数の基調判断が「下方への局面変化を示している」に引き下げられるなど、景気の不透明感が強まっている。

国内経済指標下振れの背景には、中国経済の減速がある。中国は過剰な債務の圧縮(デレバレッジ)政策を進めてきた結果、インフラ投資などが急減速した。中国経済について、黒田東彦総裁は「昨年後半以降、かなり減速している」との認識を示している。

このほか、排ガス規制やフランスでの政治的なデモなどで、昨年末以降弱くなった欧州経済も、戻りが見られない状況だ。

こうした足元の情勢を受けて、金融政策決定会合では、生産、輸出、海外経済の判断を引き下げる方向で検討する。日銀は1月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、輸出と鉱工業生産は「増加基調」、海外経済は「総じてみれば着実な成長を続ける」としていた。

<年後半の回復シナリオは維持>

現時点では、海外経済も含めて、年後半には回復するとのシナリオが基本だ。中国では、デレバレッジ政策を巻き戻すようなマクロ政策を打っており、政策効果を見極める段階にある。ITサイクルの持ち直しや、米中貿易摩擦も緩和方向への動きが期待されており、推移を「もう少し見極めたい」(幹部)との声が多い。

現段階では、国内における企業の設備投資が目立って慎重化する兆候はみられず、個人消費も増勢を維持しているとみている。内需は引き続きしっかりしていることから、国内景気は「緩やかに拡大している」との総括判断は据え置く見通し。

もっとも、海外経済の減速を背景にした輸出や生産の落ち込みが、マインド悪化を通じて設備投資や個人消費に影響を与える可能性など、年後半回復の見通しの確度や長期化の懸念について、会合で重点的に議論する。

<現時点では物価のモメンタムは維持>

現時点で日銀内では、物価2%目標に向けたモメンタムは維持されているとの見方が大勢で、現行の金融緩和政策を粘り強く続けるスタンスだ。

ただ、片岡剛士審議委員は2月27日、「早いタイミングでデフレから脱却して正常化を進めるために、今大胆なことをもっとやるべきだ」と述べ、追加緩和の必要性を主張した。

原田泰審議委員も6日、「景気が悪化し、2%の物価安定目標の達成が困難になるなら、躊躇なく金融緩和を強めることが必要」と述べるなど、政策委員のなかから追加緩和への言及が出てきている。

こうした声が広がりを持つかどうか、鍵を握るのは、中国をはじめとする海外経済のの動向だ。政策効果が思ったほど出ずに、減速が長期化すれば、日本経済に与える影響も大きくなってくることが懸念され、追加緩和必要論も勢いを増してくることが予想される。

(清水律子 伊藤純夫 編集:田巻一彦)