水道というインフラは絶対必要か

古代ローマ人が最初の水道をつくったとき、ある考え方が植えつけられた。それは「現代の都市は、水をあちこちに巡らせるインフラを築かなければならない」ということだ。
今日の都市では、水は巨大な浄水場を通り、その後、地下にある迷路のようなパイプを通って家庭に届けられる。家庭で使われた水は、下水道に流されて下水処理場に送られる。下水処理場からは大量の水が川に流され、川の流れの大半が処理された水で構成されていることも多い。
こうした都市の水インフラは安価なものではない。北米や欧州、オーストラリアの都市の幹部は、20世紀中頃につくられて老朽化しつつある水道を改修するために資金をかき集めている。米国では上下水道を動かすのに年間1100億ドルが使われている。
開発途上国は、こうした世界の豊かな都市のインフラを模倣しようとしているが、その国々も長期的には導入したインフラを維持できないかもしれない。
ほかにもっとよい方法がないか、考えてみる価値はある。古代ローマの方式を再現するのではなく、もっと柔軟で、安価で、環境への影響が少ない持続可能なインフラをつくるのだ。私たちには、そのチャンスがある。

現代版「上下水道を使わない方式」

次世代の水のシステムに移行するために都市が目を向けるべきなのは、一度も複雑な水道インフラに投資したことがない農村社会だ。
世界ではいまだに何百万もの人々が、地域の井戸や雨水を集めたタンクから水を得ている。そして、さらに何百万人もが、使い終わった水を処理するのに浄化槽と濾過用の土地を利用している。
こうしたシンプルな方法は、都市では使われていない。なぜなら、屋根の上の雨水や井戸水では、何階建てもの住宅に住む人々に十分な水を供給できないし、また一カ所に大勢の人々が排水を流したら、濾過用の土地も機能しなくなるからだ。
しかし、少し工夫すれば、農村社会の「上下水道を使わない方式」の現代版を郊外で実用化できる可能性がある。
最初のステップは、水の消費量を減らすことだ。まずは、一般に販売されている節水用の製品を使うと、劇的に世帯の水消費量を削減できる。あわせて、洗濯機やシャワーの水をリサイクルする装置も使うと、世帯の水消費量は75%も減らせる可能性がある。

水は各家庭でリサイクルできる

こうした節水ができれば、世界で最も乾燥した地域以外であれば、水の輸入や下水処理施設の導入に伴う費用や環境へのダメージを生じさせることなく、新たに住宅を開発することができる。
長期的には、世帯ごとの水のシステムは人口が密集した都市部でも使える可能性がある。
家庭で使われる水は、いま存在する技術でほとんど全部をリサイクルすることができる。少し改良を施せば、冷蔵庫ぐらいの大きさの水処理設備と、同じくらいの大きさの貯水タンクを使って、家庭で同じ水を何度も繰り返し使えるようになる。
こうした過激な変更は、現在の水道システムがニーズに合っている都市部では、正当化するのが難しいかもしれない。
しかし、現代の水のインフラが整っていない地域では、次に登場する水のシステムは、過去二千年で初めて、これまでとは異なるものになるかもしれない。
原文はこちら(英語)。
(執筆:David Sedlak、翻訳:東方雅美、写真:Main_sail/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.