[東京 20日 ロイター] - 会社法違反(特別背任)の罪などで起訴された日産自動車<7201.T>前会長のカルロス・ゴーン被告(64)の新たな弁護人となった弘中惇一郎弁護士(73)が20日、都内で着任後初めて会見した。ゴーン被告を巡る一連の事件について、全ての起訴事実で「無罪と確信している」としたうえで「日産内部で本来は、処理しなければいけない問題」と指摘。なぜ事件となったのか「大変、奇異な気持ちを持っている」と語った。

弘中氏は「日産が本来は内部で解決すべき問題を検察に持ち込んだ。本来ならば、検察も普通は民事不介入が原則だと思うが、それを取り上げたという感じが強い」と述べた。「会社内部でやるべき問題を検察が事件化し、外に致命的な不可逆的なダメージを与えることについては非常に危惧している」といい、「そういう視点を含め、この事件に取り組んでいきたい」と意欲を見せた。

ゴーン被告の弁護士を巡っては、昨年11月の逮捕後から担当していた元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士らが13日付で辞任したのを受け、弘中氏が新たに選任された。弘中氏は、厚生労働省の郵便不正事件で文書偽造などの罪に問われた村木厚子・元事務次官や、資金管理団体「陸山会」を巡る事件で強制起訴された小沢一郎・自由党代表の無罪判決を勝ち取った経験を持つ。

今回の事件にあたり、弘中氏は小沢氏の陸山会事件を引き合いに出し、あの事件は「明らかに小沢氏を政治的に追い落とす、追い詰めるという目的で、いってみれば、いいがかり的な1つの事件を作り上げた気がする」と振り返った。そのうえで、小沢氏は無罪となったが、政治的な力はかなり落ちた、などと説明。

ゴーン被告もたとえ、無罪を勝ち取れたとしても「彼がこの期間に失ったもの、日産やルノー<RENA.PA>における立場を含めて、なかなか取り返すのは難しい」と話した。

ゴーン被告が羽田空港に降り立った直後に突然逮捕され、長期の拘留に及んでいることを踏まえ、弘中氏は「日本はうっかり行くと、とんでもないことになる。何をされるかわからない国」として「衝撃的な印象を世界に与えた」と指摘。「今後の日本のビジネスの展開にとって、非常に大きな問題になるのでは」と話した。

長期に身柄を拘束し自白を得ようとする捜査手法、いわゆる「人質司法」と呼ばれる日本の刑事司法制度を「国際的な水準に見直していく機会ではないか」とも述べた。

ゴーン被告の弁護団には、同じく村木氏の弁護を担当した河津博史弁護士、1995年に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教メンバーの弁護人を務めた高野隆氏らが参加している。

共同通信によると、東京地裁は20日、ゴーン被告と前代表取締役のグレッグ・ケリー被告、法人としての日産について、争点を整理する「公判前整理手続き」の実施を決定した。

ゴーン被告は会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪、ケリー被告と日産は金融商品取引法違反(同)の罪で起訴されている。

*内容を追加しました。

(白木真紀 編集:田巻一彦)