運動能力向上から観戦方法の変化まで

ソーシャルメディアからAR(拡張現実)まで、テクノロジーはまったく新しい形で私たちの生活に影響を与えている。そしてスポーツほど、その影響がはっきりと現れている分野はないだろう。
スポーツの世界では、あらゆる方面でテクノロジーが導入されつつある。アスリートたちの運動能力、そしてスポーツ観戦の面でも目覚ましい変化が起こっている。
本記事では、テクノロジーによってスポーツの世界に生じている数多くの変化の流れから、5つのポイントを紹介しよう。

1. 運動能力の水準はさらに向上する

ウェアラブル技術が進歩し、アスリートたちはジャージやシューズのクリート(止め具)に、小型のGPSや加速度計といったデータ収集ツールを埋め込めるようになった。
こうしたツールは、走行距離や心拍数、スピード、ジャンプの高さ、疲労度、過剰トレーニング、水分補給レベル、筋活動、呼吸リズム、神経活動、睡眠パターンなど、健康に関するありとあらゆる指標を追跡してくれる。
それと同時に、ハイスピードカメラや高精細度カメラの普及で、アスリートやチームは、自分たちの動きやトレーニングセッションをかつてないほど細かく記録することができるようになり、運動能力についての掘り下げた分析も可能になった。
これにより、アスリートやコーチたちはそのデータを活用し、より効果的なトレーニングプランを開発したり、フォームを調整したり、運動能力が高まったり低下したりする要因を特定したりできるようになる。
このようにして、運動能力の水準は引き上げられていくだろう。

2. 怪我の予防や治療の効果が高まる

テクノロジーによって、スポーツは多くの点で安全になっている。たとえば、スマートヘルメットなどのウェアラブル技術が進化したおかげで、外傷を負う可能性を監視しやすくなり、より早く効果的な治療への道も開かれてきている。
また、衝突に関するデータを収集してそのパターンを分析し、スポーツでの怪我を防ぎやすくするといった取り組みも行われている。
一方で、怪我のリハビリもテクノロジーの恩恵を受けている。怪我からの回復途中で、体重がかかる運動を行うと悪化する可能性がある場合でも「反重力トレッドミル」を使えば、アスリートは最低限の体力を維持できるといった具合だ。
また、VR(バーチャルリアリティ)ゲームのテクノロジーが、首や脊柱の怪我を治療するのに役立つとする研究結果もある。

3. 審判の仕事がしやすくなる

どちらかのチームから不興を買うような判断をしたレフェリーが、個人的に槍玉にあげられてしまうような可哀想なケースは、誰もが目にしたことがあるのではないだろうか。
進化したテクノロジーは、そうした不運なレフェリーたちの苦痛をいくらか和らげてくれるだろう。
360度カメラやFIFAのゴールラインモニターといった新しいテクノロジーが、レフェリーのプレッシャーを軽減し、スポーツ審判の精度を上げてくれるはずだ。

4. アスリート、志望者、ファンが新たな方法で交流する

インターネットや暗号通貨といったテクノロジーが、スポーツの世界における権力をさまざまな形で分散させ、そのおかげでアスリートやアスリートになりたい人たち、そしてファンとの間に、これまでになかった関わり方が生まれている。
たとえば、ブロックチェーン技術を使ったプラットフォーム「433token」では、世界有数のサッカー選手らに対して「才能ある若者たち5人のメンターになってもらう」という機会を提供している。このメンター制度のスポンサーになるのが、次世代の才能を育成するのに投資するサッカーファンたちだ。
このユニークなプラットフォームは、サッカー選手を目指す若者たちに向けて、世界最高レベルの選手から技術を学ぶという新たな機会を切り開いている。
そしてファンにとっては、自分たちが大好きなスポーツで、次世代の一流選手の育成を支援し、発言権を得るチャンスだ。このようなタイプの交流は、テクノロジーの進歩なしには実現できなかっただろう。

5. スポーツ観戦の形が変わる

テクノロジーの進化で、スポーツファンが次世代の才能を支援できるようになるだけでなく、ファンがスポーツを観戦するという体験の形も変わっていく。たとえば、こんなふうだ。
例1 ファンがスポーツコンテンツを消費する方法は、どんどん分散していくだろう。
決まった時間にテレビの前に座って、放映されている唯一の試合を観る必要はない。

いまや、スマートフォンやタブレットといったデバイスを使い、あらゆるスポーツ関連のコンテンツを、どんな場所でもライブストリーミングで観ることができる(そして、いつでも見直せる)。

例2 VRやARを使った体験型コンテンツを提供するスポーツ番組放送局が増えており、ファンのスポーツコンテンツとの付き合い方も変わってきている。臨場感のある体験が(自宅のソファにいても)できるようになっているのだ。

スポーツファンはそのうち、スタジアムやバーで他の人たちと一緒に観戦している状態を再現したバーチャル体験に参加するようになるのかもしれない。
VRを導入したスポーツ観戦体験から、より安全なヘルメット、運動データ収集の改良やパフォーマンスの改善まで、テクノロジーはスポーツの世界を大きく変えつつある。
テクノロジーの進化は、ファンとアスリート、チームとの間にあった境界を低くし続けている。プラットフォームを超えてスポーツに参加する人々が、今後も増えていくことだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Kenny Kline/Founder, JAKK Solutions、翻訳:半井明里/ガリレオ、写真:Dmytro Aksonov/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.