【求人掲載】「自律・分散・協調」が自走する次世代組織の正体

2019/2/21
マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のフレデリック・ラルー氏が著した『ティール組織』の発刊を機に、日本でも次世代型組織としてティール組織に注目が集まっている。

従来の典型的な日本企業のように、ピラミッド型で上司が部下を管理する組織とは違い、上下、左右の組織の壁を取り払い、社員一人ひとりがミッションとビジョン、バリューを共有し、その達成に向けて社員が自発的にプロジェクトを生み協調して成果を出す──。それがティール組織のコンセプトだ。

だが、革新的なマネジメント論と評価されているものの、そのメソッドが確立されているわけではないだけに、実践に移せている企業は多くない。そんな中、決済代行サービスのネットプロテクションズがティール組織に近い姿を具現化している。ネットプロテクションズ流のティール組織とは。若手社員3人のインタビューを通して、次世代のチームのあり方を考える。
「縦」と「横」で構成するマトリクス組織の理由
──ネットプロテクションズはティール組織に似たチームビルディング、チームマネジメントを行っていると聞きましたが、詳しく教えてください。
河西 ネットプロテクションズにはもともと、「自律・分散・協調」を重んじる文化と風土があります。経営陣や所属チームの上司の指示を起点にプロジェクトが動き始めるのではなく、社員の「やりたい」という意志を起点に動き出すプロジェクトが非常に多い。
経営陣は、かなり広い範囲で現場に裁量を与えます。会社のビジョン、ミッションに通じる内容で納得性があり、賛同する仲間を集めることができれば、所属する組織、役職、社歴、年齢、性別、経験は関係なくやりたいことに挑めます。
結果として、社員の自律性が中心になって業務改善提案や新プロダクト・サービスの企画プロジェクトが生まれ続けているのです。
一昨年からティール組織が注目を集めていますが、社長の柴田はもともとフラットな組織作りにこだわっており、社長就任時から一貫して「自律・分散・協調」を打ち出していて、カルチャー、仕組み、ルールを整備してきました。
そのうえで、昨年には、これまで徐々に準備を進めてきていた人事評価制度を刷新。特定部門内に収まらない各メンバーの多様な仕事ぶりを、限定された数人の上司ではなく、さまざまなメンバーが評価する仕組みに変え、より「自律・分散・協調」する組織へと進化させました。
ですので、ティール組織を参考にしたのではなく、結果的に今、ティール組織で描かれているようなチームになっていたという実感です。
東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻修了。2013年4月にネットプロテクションズに新卒入社。新卒1年目から一人で新規市場調査を開始し、2年目に事業立ち上げ責任者に就任、3年目に「NP後払いair」を正式ローンチ。事業戦略立案、予算策定・管理、サービス企画・設計、セールス/マーケティング戦略立案・実行などを担当。その後、自ら希望を出して人事企画に異動。採用・育成・評価・配属・その他制度などの企画・設計全般を担当し、新人事制度「Natura」の企画設計・導入・改善もリード。現在は新規事業企画・戦略立案PJTとシステム開発も兼任。
──社員にとってはチャレンジしやすい働きがいのある理想的な組織だと思いますが、実際にどんな組織でどう運営しているのかが、気になります。
酒井 当社には、人事やマーケティング、セールスといった一般的な職種別のグループが13個あります。それとは別に12個のワーキンググループがあります。
ワーキンググループとは、新卒採用や働き方研究、新規事業立案など全社的な組織運営に携わる業務に、20%のリソースを使って参加できる制度です。
多くの社員は、複数の職種別グループに在籍していたり、ワーキンググループに参加したりするなど、1つのグループに閉じない働き方をしています。
同志社大学卒業後、2016年にネットプロテクションズに入社。入社後はセールスグループに所属し、主にNP後払いの大手企業営業を担当する。また新サービスatoneにも関わり、同社の提供するBtoC向け決済事業に広く従事している。営業の他には、オウンドメディアの記事企画やサイト運営にも関わっている。
実際に私もいくつかの業務、プロジェクトを兼務しています。2016年4月に新卒入社して以降、セールス部門に所属していますが、基幹事業である「NP後払い」や新サービス「atone」の戦略立案や提案活動を行いながら、オウンドメディアを運営するワーキンググループに所属しています。
またワーキンググループとは別で、突発的に全社的なプロジェクトが発足することもあり、その一環で先日全社員が参加する合宿の設計にも携わっていました。
──徳永さんと河西さんはどのようなジョブを兼務しているのですか。
徳永 私は社内の業務システム開発部門に携わっていますが、その一方で、複数の自社サービスに共通して活用できそうなキーテクノロジーを研究・開発するプロジェクトと、より良い働き方を研究し実現するワーキンググループに入っています。
前職のシステム開発会社よりも携わる領域は広がっているのですが、仕事とプライベートとのバランスが健全に保てています。
同志社大学卒業後、商社系SIerでマスメディアや自動車メーカーのITインフラ設計・構築・運用設計に携わる。2016年12月から現職。入社後の社内出向で、3つのプロダクトのセールスとCSを3カ月かけて経験。その後、決済サービスのリスクコントロールシステムチーム、コーポレートITチームをリードし、社内カルチャーを醸成するワーキンググループなどにも従事。最近ではビジネスアーキテクトグループ全体の運営、エンジニアキャリア採用の設計にも携わっている。
河西 私は人事部門に加えて、テクノロジーの知識と経験を積みたくて、社内情報システムの設計・開発業務を担うIT部門に参加して、異なるキャリア形成に励んでいます。
30歳目前に未経験の仕事ができることなんて、あまりないと思うんです。ネットプロテクションズでは自らの得意分野、専門領域を職務別グループで生かして自分の存在意義を感じながら、ワーキンググループ・兼務・異動などを通じて新たなキャリア形成に挑むことができる。職種・職能で限定されない働き方ができるのは、当社のユニークな点だと思います。
一般的に転職する理由の一つとしてジョブチェンジしたいけれど、所属会社が異動を認めてくれない、希望の部門に配属されない、転職してジョブチェンジできたとしても収入がダウンしてしまう、といったストレスがあると思いますが、当社にはそれが全くない。むしろジョブチェンジやハイブリッドキャリアを推奨するような雰囲気さえあります。
酒井 複数の異なる業務経験を積めるだけでなく、複数のチームを兼務することでさまざまなメンバーと交流する機会に恵まれ、多様な人や意見に触れられることも大きいです。そこで得た観点を、また別の仕事に生かすことで相乗効果を発揮することこそが兼務のメリットだと思います。
──「やりたい」という気持ちを持ってプロジェクトを立ち上げたとしても、知識や経験が浅ければプロジェクトをリードするのは難しいようにも思います。
徳永 そこは「協調」文化が支えてくれます。組織の壁があまりなく、困った人がいれば、面倒くさがらずに助け合うカルチャーが根付いていますから、自分だけで抱えずにオープンに意見を収集しディスカッションできます。
また、自律・分散・協調を重んじる文化と河西が話しましたが、それに加えて5つのバリューという行動規範に社員全員が腹落ちしている点が大きいでしょう。それがベースにあるからこそ率先してみんなが協力できています。
酒井 行動規範に基づいた話でいいますと、私が上半期に取り組んでいた大手企業向けの提案内容を作成するプロジェクトが、それにあたると思います。
日々の営業活動から、必要性を見いだしプロジェクト化させたのですが、それに賛同してくれたメンバーはセールス部署ではない所属で、年次もバラバラの方ばかり。
3年目で、立場も日頃取り組んでいる業務も異なるメンバーが集まったチームをリードしていくのは、とても難しかったのですが、それでもメンバーが知見と経験をシェアしてくれて、とてもいい機会になった経験があります。
河西 新しく発足したデータサイエンスのプロジェクトにおいて、入社2年目がリーダーになって、それをCTOがサポートするような、一般的な会社で言えば上下逆転の構図があります。酒井も話していますが、こうした立場が関係ないチームビルディングが非常に多いんです。
徳永 こういう関係性は社内だけではありません。常駐いただいているパートナー企業の方にも「ネットプロテクションズはとても働きやすい」と言ってもらえることがあるのですが、立場に関係なくフラットに企画段階から一緒に意見を言い合えるような関係になっていることで、お互いに働きやすく最大の効率が得られているのだと思います。
評価制度は、個人の成長を支援するもの
──お聞きしてきた組織では、従来のトップダウンの評価制度は通用しないように思います。複数の仕事を兼務しているだけに誰がそれぞれを評価するのでしょうか。
河西 カルチャーや組織体制は徐々に構築されてきていたものの、適正に評価できる制度が追いついていなかった部分がありました。ですから、実情に適した「Natura」と呼ぶ新人事制度をスタートさせました。
当社が目指す組織では、全員がマネジメント人材として機能する必要があります。ですから、特定のメンバーに恒久的に権限・責任が集中する役職は不要でしたので、マネージャー職を廃止しました。
人事評価は特定の上司が一方的に行うのではなく、「360度評価」という全員が全員を評価する仕組みを取り入れました。
評価という不公平感・競争意識につながりやすい業務ですから、11項目のコンピテンシーを設定し、各項目で誰もが評価しやすい基準を整え、そのうえで、評価するための研修を全員が受講するほどこだわりました。今は1人あたり5~15人の社員を評価し、社員の給与が決まっています。
そのうえで、給与レベルを表すグレードは可能な限りシンプルでわかりやすく設定しています。
360度評価は、お互い評価する側にもなるし、される側にもなります。そうすると、一般的なピラミッド構造で芽生える「上下」の意識はなくなり、評価に対する納得性が高まります。そうなれば、各メンバーがそれぞれのメンバーに対して成長支援の視点を持つようになり、競争ではなく共創関係が成り立つんです。
自律した働き方を可能にする情報開示
──フラットな組織は縛られることがない自由なチームとも言えますが、一方で意見がまとまりにくいような側面も感じてしまいます。
河西 360度評価のおかげかもしれませんが、自分の意見を「正」として、異なる意見と戦うのではなく、相手の意見がどうして違うのだろうと背景を捉えにいく思考が根付いています。
徳永 NPメンバーは自分と異なる意見が出ていた場合、自分にはない「前提」がその相手にはあることをわかっているので、それが何なのかを確認しにいくことが多いです。河西が言うように認め合う文化、メンバーへの信頼がベースにあるから、意見が異なっても、建設的議論に発展しやすいんです。
「こうなりたい」を描ける人が輝く
──仕事を自ら生み出していくスタイルだと、「何をしたら良いかわからない」という人も出てきてしまうのではないでしょうか。
河西 確かに、自律性が求められるのは間違いありません。大きな会社であれば「1年目はこれ」という仕事の振られ方になる半面、その通り着実に仕事をしていけば社内で通用するキャリアがついてくるかもしれませんが、当社にはそうした指示前提の仕事はほぼありません。ですので、自らの意志がない人には、言葉を選ばずに言えば当社は向いていないかもしれません。
ただ、逆に、やりたいことやアイデアがたくさんあるのに、組織の壁や既存の業務プロセスなどに阻まれて悔しい思いをしている方にとってはとても有意義なフィールドであると思います。興味がある人は、私たちの組織や仕組みにぜひ触れていただきたいと思います。
酒井 「機能」として与えられる仕事をただこなすだけではなく、自分が何をすべきか考えて動ける人のほうが当社は向いているかもしれません。自分で動きたいのに動けなくて、もどかしく思っている人には輝ける場所だと思います。
徳永 そして、自分の能力を極める「内向き」のゴールではなく、それを使って社会になにかをアウトプットする人、個の力というよりチームで実現しようとする人は、当社のチームやカルチャー、仕組みを存分に「楽しんで」仕事に取り組んでもらえるはずです。
(取材・編集:木村剛士 構成:加藤学宏 撮影:的野弘路 デザイン・図:田中貴美恵)