都市人口の急増、地価の高騰

国連の予測によると、2050年までに25億人以上が都市で暮らすようになる。これにより、私たちの生活と都市で生きる枠組みが根本から変わるだろう。
現在、世界の人口の90%以上が、陸地面積全体の約10%に集中している。その密度は高くなる一方だ。都市人口の急増は地価を高騰させ、都市の住人は自宅の規模と機能性を考え直すことになる。
たとえば、狭い住居を増やすために、共有の空間が充実するだろう。友人をもてなすスペースがなければ、民泊仲介大手Airbnbなどのサービスを利用して広いダイニングルームを数時間、借りることもできる。
このような習慣は、世界のさまざまな地域で実際に行われている。モロッコでは自宅にオーブンがなくても、近所同士で利用する共有オーブンがある。
さまざまな目的の空間の賃貸は、新しいトレンドというわけではない。オフィススペースの共有はすでに広まっている。しかし、コ・ワーキングと同じ発想から、新しい形で生活を共有する「コ・リビング」が生まれつつある。
シェアオフィス運営大手のウィーワークが手がける「ウィーリブ」などの試みは、都市がますます過密になるなか、手頃なコストで活気あるライフスタイルを支援しようとしている。
コ・リビングの概念は、私たちがどこまでシェアを受け入れるかという基準も変える。プライバシーに関して妥協できない人は、狭い住居で暮らすことに慣れなければならない。一方で妥協できる人は、シェアによって心地よい生活を手に入れることもできる。

柔軟なライフスタイルに対応

生活空間において、プライバシーと人のつながりのどちらを重視するかという考え方も見直される。
1970年代のヒッピーの共同生活は、個人や家族が専用の空間を保ちつつ、台所やリビング、戸外のスペースを共有した。同じように未来の住宅は、つながりが重視されるだろう。
まさに絶好のタイミングでもある。近年はますます多くの人が仕事を求めて都心に移り住んでおり、私たちのキャリアはかつてないほど短いサイクルで変わるようになった。
リンクトインのデータによると、若い世代は30代前半までに転職を経験している。転職に伴い、勤務地か居住地、あるいはその両方が変わる場合も少なくない。そのために社会的なつながりを損ない、家族と遠く離れて暮らす人も増えている。
仕事や生活の場所が頻繁に変わり、一カ所で働く期間が短くなるにつれて、長期の賃貸や住宅の購入は時代にそぐわない判断となり、新しいライフスタイルに対応できない。
職業訓練プログラムを提供するスタートアップ、ジェネラル・アッセンブリーの共同創業者は、コ・リビングのプロジェクト「コモン」を立ち上げた。会員になると、ニューヨークやサンフランシスコ、シカゴ、ワシントンDCなど6都市20カ所で、家具や設備がそろった物件に「移動」できる。
東海岸と西海岸を定期的に行き来する人や、数年おきに仕事が変わる人は、住まいの概念も同じくらい柔軟になるというわけだ。

人と人のつながりを復活させる

住居費を抑えるためにシェアやダウンサイジングをすることは、急速な都市化や雇用の機会を考えると不都合もありそうだが、社会的な利点は多い。
住人同士の関係を維持しやすいように設計された共同住宅は、すでに人気が高まっている。
イギリスで共同住宅を開発しているフォージバンクは、住人同士が会いやすい場所をつくり、自宅を出るたびに誰かしらに会えるようにしている。
人と人のつながりを復活させる似たような試みは、さまざまな共同住宅プロジェクトで行われている。コ・リビングが気に入って選ぶ人も、都会で暮らすために結果として選ぶ人も、その数は増え続けるだろう。
住まいの未来は、柔軟性と共有が進み、小規模の賃貸と共用施設のおかげで比較的手ごろになるだろう。私たちを取り囲む物理的な壁は高くなっても、精神的な壁を低くする機会が増える。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Alexandria Lafci/Co-founder of New Story、翻訳:矢羽野薫、写真:daruma46/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.