まずはこれらの基本問題に取り組むことで、起業が成功する可能性が高まるはずだ。

すべて「イエス」で答えられるか

筆者はこの2年間に、2万人以上の起業家の売り込みを聞いてきた。筆者が最もよく聞かれる質問は「私に投資してくれますか」を除けば、「私のアイデアは良いものでしょうか」だ。
起業を志す者たちは、給料の良い仕事を辞めてスタートアップを立ち上げる前に、賛同を得ようとして筆者のもとにやってくる。
筆者は数十年にわたって、ほかのエンジェル投資家やベンチャーキャピタリストと協働してきた結果を「未来の創業者たちが筆者を訪ねてくる前に自問自答すべき7つの質問リスト」にまとめることができた。
もし以下の7つの質問すべてに「イエス」で答えられたら、あなたのアイデアはおそらく素晴らしい。もしそうでなければ、まだやるべきことがあるはずだ。
1. 業界、顧客、問題に執着しているか
成功している起業家は、仕事好きだ。たとえ無報酬であっても、彼らは業界や顧客層、問題について学ぼうとする。成功を勝ち取るためには、起業のチャンスに執着しなければならない。
「執着」と「関心」の違いは、かなり大きい。関心があるのは当然のことであり、それだけでは不十分だ。
執着とは、何かについて1日に何十回も考えることを意味する。執着がなければ、戦略的優位の実現に必要な洞察を蓄積できない。そうした洞察は、何かに何千時間も集中することによってのみ得られるのだ。
2. そのソリューションは実際に構築できるか
アイデアは、絶え間ない実行を伴って初めて、価値あるものとなる。アイデアと製品の両方を実行できなければならない。少なくとも、試作品や最低限の存続可能な製品を用意できる状態であるべきだ。
最低限の存続可能な製品とは、アーリーアダプターに使ってもらい、コンセプトのけん引力を実証できる製品である。
3. 需要には、どれくらいの弾力性があるか
鎮痛剤か、ビタミン剤か。経費を削減するものか、売り上げを生み出すものか。
最高のチャンスとは、需要弾力性のない(商品価格の変化によって需要が変化しにくい)市場で、満たされていないニーズを解決することだ。これは、長期的にはより大きな利益をもたらし、短期的にはより素早く市場をけん引できる。
あなたが目指すビジネス機会は「欲しいもの」ではなく、ニーズを満たすものでなければならない。ニーズとは、それなしでは生きられないものであり、空気、水、食べ物はその典型例だ。「欲しいもの」とは、高級な靴や車など、それなしでも生きられるものだ。
「欲しいもの」は、価格が上昇すると需要が小さくなっていく。ニーズを満たすスタートアップであれば、アーリーアダプターを引きつけ、売り上げを生み出すことに苦労しないはずだ。
4. 市場は大きく、成長しているか
いまは、ハッカー対策製品の市場がホットであり、サラブレッドの蹄鉄の市場ではホットではない。なぜ小さな勝利に集中しなければならないのだろう。血と汗と涙を投じているというのに。勝利は、ふさわしい価値があるものであるべきだ。
しかも、ニッチ市場に注力すれば、リスクははるかに大きくなる。小さなプールで泳げば、そこを往復して学ぶチャンスも小さい。成長中の大きな市場にソリューションを投じることを目標にしよう。ニッチ市場から始めても構わないが、成長の余地が大きい市場でなければならない。
5. 指数関数的に優れているか
既存の市場に参入する場合、あなたは自動的に不利な存在となる。サンクコスト(すでに回収が不可能であるコスト)がかかり、ライバルよりもブランド認知度が低いためだ。不利な状況を乗り越えるには、すべてのライバルより10倍速く、安く、強く、軽い存在になり、人々を既存の製品から乗り換えさせる必要がある。
ネットフリックスは、10分の1の価格で10倍のコンテンツを提供し、ブロックバスターを倒産に追い込んだ。あなたのソリューションは、ほかのどの選択肢と比べても、指数関数的に優れていなければならない。
6. すべてを投じる覚悟はあるか
デザイン思考、リーン・スタートアップといった手法を用いれば、サイドビジネスとして起業することは可能だ。しかし長期目標はあくまで、フルタイム、年中無休、全力投球であるべきだ。中途半端なやり方で世界を変えた人など存在しない。
7. アーリーアダプターに容易にアクセスできるか
アーリーアダプターとは、あなたが解決できる問題を抱えているが、現在は非常に非効率的な方法で問題を解決しようとしている顧客だ。スペルチェッカーが登場する前、われわれは第三者に校正を依頼していた。スペルチェッカーに比べると、10倍の費用と時間がかかっていた。
成功を勝ち取るためには、明快かつ安価な料金設定でアーリーアダプターを獲得し、それを足がかりにすべきだ。製品を顧客に直接届けられるようにしなければならない。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Sean Wise/Best-selling author, venture capitalist, and founder、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:HT-Pix/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.