[東京 23日 ロイター] - 日銀は23日、1月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で物価見通しを引き下げた。ただ、物価見通し引き下げの主因は原油価格。黒田東彦総裁は会見で、2019年度を中心に物価が下振れていることについて「一時的」と述べ、物価安定目標2%に向けたモメンタムは維持されているとの見方を示した。

日銀は、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする現行の金融政策を据え置いた。

1月展望リポートでは、政策委員の物価見通し(消費増税・教育無償化を除くケース)中央値は、昨年10月に続き20年度までの3カ年、いずれも下方修正された。特に19年度は原油価格下落を背景に1.4%から0.9%に大幅修正した。19年度の物価見通し引き下げは4回目。一方、20年度は1.5%から1.4%への小幅な修正にとどまった。

黒田総裁は会見で「昨秋以降の原油価格の下落によるところが大きく、直接的な影響は一時的なものにとどまる」と述べた。また「20年度はそれほど変わってない」とも指摘し、「物価見通し自体が20年度に向けて大きく変わったわけではない」との見解を示した。

今回の物価見通しには、携帯電話料金の引き下げは織り込まれていない。日銀では、携帯料金の引き下げについては、短期的に物価押し下げ要因になるが、消費者の実質所得が増えることで中長期的には消費にプラスに働く可能性があるとみている。

展望リポートでもう一つ特徴的だったのは、海外経済について「下振れリスクはこのところ強まっているとみられ、企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある」との1文を加えた点。

黒田総裁は「米中の経済摩擦や欧州の要因などが海外の下方リスクをやや高めているのは事実」と指摘した。ただ「現時点で、米国や中国のメインシナリオを変えるようなリスクが顕在化しているとか、顕在化しつつあるという状況ではない」とみているという。

米中貿易摩擦については「長引けば世界経済に大きな影響が出てくる」との懸念を示しながらも、「個人的意見だが、収束に向かうと思っている」と述べた。

22―23日の金融政策決定会合では、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を決めた。

長短金利目標と上場投資信託(ETF)など資産買い入れの目標額も据え置いた。決定会合前、株式市場の一部では日銀がETFの買い入れ比率を変更するのではないかとの思惑が浮上していたが、変更は行われなかった。

また、貸出増加支援と成長基盤強化支援のための貸出支援制度のほか、被災地金融機関を支援するための資金供給制度について、受付期間の1年延長を全員一致で決めた。

今後の政策対応余地について、総裁は「現時点で主要な中銀も短期政策金利が大きく引き下げられるほどには上がってない。ショックや不況時に、短期金利引き下げという伝統的なやり方で対応する余地は狭まっているが、それは非伝統的な金融政策余地が狭まっているということではない」とし、「政策の余地が全体として狭まっているとは思わない」と述べた。

*情報を追加し再構成しました。

(清水律子 伊藤純夫)