[東京 22日 ロイター] - 厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査問題で、特別監察委員会は22日、厚生労働省が猛省し、関係職員の厳正なる処分が行われることを望む、とする報告書を発表した。

会見した樋口美雄委員長(独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)は「組織的関与ではなく、組織的不関与が問題」としたほか、荒井史男委員(元名古屋高等裁判所長官)も「組織的隠蔽とは認定できない」と述べた。

<統計法違反を認定>

報告書では「統計法違反を含む不適切な取り扱いが長年にわたり継続しており、公表数値にまで影響を与えていたことは、信じがたい事実であり、言語道断」と指摘した。

こうしたことが続いた背景には「担当者はもちろんのこと、厚生労働省として統計の正確性というものに対するあまりにも軽い認識」があったとした。また、不正調査の統計を元に給付されていた雇用保険などで追加給付が必要な事態となったことを挙げ「統計がどのような形で利用されているかについて、想像力が著しく欠如していた」との見解も示した。さらには、長年、漫然と業務が続けられるなど、組織としてのガバナンスの欠如も指摘した。

毎勤統計を巡っては、少なくとも1996年以降、調査対象事業所数が公表資料よりも1割少なかった。また、2004年1月以降、全数調査が必要となっている東京都の規模500人以上の事業所について抽出調査に変更。調査報告書では「事業所からの苦情の状況や都道府県担当者からの要望などを踏まえ、規模500人以上の事業所が集中し、全数調査にしなくても精度が確保できると考えた」と、変更の背景を記している。

04年から17年までは、集計上必要な復元処理が行われておらず、18年のサンプルの入替方法の変更にあわせ、抽出調査に復元処理を行うシステム改修を実施した。ただ、報告書では「隠蔽(いんぺい)しようとする意図までは認められない」としている。

2011年に変更承認を受けた調査計画に記載された内容どおりに調査が行われなかったことは、統計法違反にあたるとした。

外部の弁護士や統計の専門家などによる特別監察委は、事実関係や責任の所在の解明を行うとともに、国民の信頼を回復するための方策などを策定するために、厚生労働相の下に設置された。延べ69名の職員・元職員に対してヒアリングを実施。今回は責任の所在について評価しており、引き続き議論を行い、信頼を回復する方策などは、今後意見を取りまとめる。

<厚労次官など幹部を処分>

特別委による報告書が出たことを受けて、厚生労働省は、関係者の処分を発表した。鈴木俊彦次官と宮川晃審議官の訓告を含め、処分は22人にのぼる。

また、根本匠厚労相、大口善徳副大臣、高階恵美子副大臣は就任時から1月分までの給与(4カ月分)と賞与全額を自主返納するほか、政務官の2人も4カ月分の給与を自主返納する。

根本厚労相は「トップとしてのけじめとして判断した」と述べた。また、自身の責任については「雇用保険などの追加給付と再発防止に全力尽くすことで果たす」とした。

*内容を追加します。

(清水律子)