【オリラジ中田】壁にぶつかるな。抜け道を探し、ルールを変えよ

2019/2/4

まず「自分のコンテンツは何か」を考える

中田 お笑い、音楽、アパレル、いろんなことにチャレンジしてますけど、昔から「芸人のくせに」とか、「お笑いだけやっていればいい」っていうのは、よく言われてました。でも、人に何を言われようと、自分は自分のやり方でやればいいんです。
 経営者たちと話していると、優秀な経営者ほど次から次へと新しいビジネスにチャレンジしてるんですよね。ひとつ成功したら、それは別の人に任せて、自分は次の新しいことを始める。
 彼らを見ていると、成長する上で、そうやって仕事のジャンルをまたいでいくのは、当たり前なんだってよくわかります。
 「お笑いだけでいいのでは」って言われても、僕自身、生まれたときから芸人だったわけじゃないっていう思いもあるわけですよ。普通に大学を出て、お笑いが好きで憧れの世界に飛び込んだだけ。
 その飛び込んだ先で「自分のコンテンツ」を追求したときに、自分の何が生かせるかが大事だと思うんです。
 お笑いの世界には、懸命に受験勉強して慶應義塾大学を卒業したという人間はほとんどいなかった。それが自分の特殊性や強みになっていったんです。お笑いにしろ、学歴芸人ということにしろ、あとから自分のコンテンツに加わったもの。
 そう考えると、別のことでもパフォーマンスを発揮できるんじゃないかって思うのは、自然なことですよね。
 自分のコンテンツを増やしていくことは大事ですが、無理に周りに合わせる必要もない。周りの価値観なんてどんどん変わっていくものだし、そのままの自分でいればいいと思うんです。
 お笑いやりながら歌をやったって、アパレルで店を出したって、外野の声に振り回されない。「自分のやり方で自らのコンテンツをアップデートしていくこと」が大切だと思ってます。

目標にたどり着くのはドキュメンタリー

 目標にどうやってたどり着くのか、本当にたどり着けるのかなんて、いつだって誰もわかりませんよね。そこがまさにドキュメンタリーで、どうなるかわからないけど、どこかには必ずたどり着く。
 その過程が一番面白くて、自分のコンテンツになる部分だとも思っています。
 例えば、オリエンタルラジオはデビューと同時にブレイクした。このまま売れ続けるなんて当時から全然思ってなかった。だって、芸歴20年の芸人さんに比べたら、歴史もテクニックもなんにもないんですから。
 じゃあ、どうするか。ここで、かつて受験勉強で培った「傾向と対策」が役立つんです。「蓄積がなくても勝負するには何だ?」と分析して、出てきた答えが「早く売れたこと」だった。
 早く売れた分、人気が上がったり下がったりするはずだ。その“ドキュメンタリー”を視聴者には楽しんでもらえばいいと、覚悟していました。
 どんな状況でも、自分の特殊性を考えて強みにしていく。受験マインドで自分を分析・追求することでその強みが見えてくるし、それこそがやりたいことで社会に貢献する最大の力になっていくんだと思います。

「Just Do It !」──失敗を積み重ねた先に成功がある

 よく策略家っぽいって言われるんですが、僕にしてみると、全然そんなことはない。「とにかくやってみよう!」で、ここまできています。
 好きな言葉は「Just Do It !」ですからね。まずはやることが大事。
 働く人たちにとって「前例がないから駄目だ」という壁にぶち当たることは多いでしょう。でも、悲観的になる必要なんか全然ない。失敗を繰り返した人間だけが知る「ギリギリのバランス」がある。
 そう、自分はここまでできるんだという限界を肌感覚でつかめるんです。
 失敗したら、それとは違う方法で「トライ&エラー」を繰り返せばいい。限界にぶつかったら撤退し、道を変えることも“攻め”。その結果、予想もしなかった着地点にたどり着けるという喜びがあるからです。
 「PERFECT HUMAN」だって、実は6曲目ですからね。その前は、強烈な失敗の連続でした(笑)。1曲目なんて、人に歌ってもらった歌を流して、僕と藤森が舞台で口パクするというコンセプトで、ファンから大ブーイング。
 「あ、みんな、人の歌を歌ったふりすると怒るんだな」って、そこで初めて気づいたりして(笑)。
 でも、それだって、やってみないとわからなかった。そもそも何かに挑戦するときは、たとえ、そのとき理解されなくてもいいと思ってますからね。
 だって、時代を変えるものって、それまでの常識とは全然違うもので、反発されて当然。むしろ、喜ぶべきだと思っていますから。

「前例がない」の壁には抜け道がある

 もちろん、何をするにしても壁にはぶつかりますよ。
 僕は歌もダンスもすごく下手。それなのに、音楽ユニットを一番やりたいのも僕。これって、いきなり“壁”ですよね(笑)。しかも、ボーカルレッスンもダンスレッスンも一切受けず、歌やダンスが下手という壁を乗り越えようとはしない。
 そうじゃなくて、「歌やダンスが下手な僕が、センターに立てる音楽をどう作るか?」を考える。それが、「PERFECT HUMAN」です。失敗に失敗を重ねて生まれた「抜け道」が、世間からウケました。
 結局、壁にぶつかったときに、どう立ち向かうかなんです。
 そこで、壁は越えてはならない。正攻法でガンガンぶつかっていく必要なんかない。壁はよければいいんです。だって、大事なのは、目的地にたどり着くことですから。
 だいたい、みんな、すべてスムーズに目標が達成できることが成功だと思ってますよね。そこが僕とは違ってて、僕は目的にたどり着くまでの道のりはドタンバタン倒れるようなことばかりがあると思ってますから。
 そうやって倒れて、はってたどり着く先にあるのが成功。
 壁にぶつかるのは想定内なんです。その壁をよけるためなら、ほかの船に乗り換えるのも全然OK。そのおかげで、予想もしない場所にたどり着いたりすることもあるかもしれない。それはそれで楽しみですよね。
 例えば、僕が新しく始めたアパレル。最初は勢いがあったのに、あるときからパタリと売り上げが止まってしまった。こんなに大勢を巻き込んであんなぶち上げたのに、「どうすんの、これ?」。
 そういうときは必ず紙とペンを持って、やれる可能性のあることを思いつく限り書き出す。書き出したものから、本当に効果があって実現しやすいものからつぶしていけばいい。
 それを全部やりきるまでは、とにかく口に出して「まだやれることはある」と自分に言い聞かせます。「絶望の淵に立たされたと思っているかもしれないが、まだやれることはある。落ち着け」と。
 矢尽き、刀折れ、兜(かぶと)も何もかもなくなった。そうなったならあきらめもつくが、まだそうじゃない、って。

新ジャンルへのチャレンジで成長に急カーブを描け

 これまでのキャリアやスキルを別のジャンルにそのままスライドすると、イノベーションが起きます。
 「PERFECT HUMAN」がブレイクしたのは「ENGEIグランドスラム」というお笑いネタ番組。お笑いから音楽にジャンルをまたいだ結果の成功例です。
 今の音楽番組は持ち時間がすごく短いんですが、お笑い番組は6〜7分をフルで使える。しかも、「ENGEIグランドスラム」はゴールデンタイムで視聴率も音楽番組とほぼ同じです。歌番組で歌うよりもかなり高いマーケティング効果でした。それができたのも、僕が芸人だったから。
 30代、40代って、自分のスキルやキャリアが円熟する年齢。でも、そこでそれまでの道だけに縛られるのはつまらないと思うんですよ。
 若い頃は時間がかかったり、うまくできなかったこともそつなくこなせるし、そのままのペースでいれば緩やかな成長もできる。でも、だからこそ、それまで準備にかけていた時間を別のチャレンジにあてられますよね。
 アパレルのように、新しいことを始めることがすごく新鮮だし、自分の成長カーブが急上昇するのが実感できるんです。そこが面白いし、やっていてすごく楽しい。誰かと勝ち負けというよりは、単純にトライして結果が出るのがうれしいんですね。
 その気持ちこそ、新たなチャレンジへの原動力だと思います。
お笑いだけにとどまらず、コメンテーター、歌、アパレルとジャンルを問わず、その知性とチャレンジ精神を発揮し、結果を出している中田敦彦氏。「壁があって当然。そこから何がやれるかをとことん考える」という言葉には、失敗を恐れない強い意志を感じる。

一歩踏み出さず悩み続けるよりも、まずは行動することが大事。失敗したら、それとは違う方法で「トライ&エラー」を繰り返していく──“今までの自分”をぶち破り、常に新境地を切り開く中田氏の原動力は自分の成長。次世代のビジネスリーダーたちに参考にしてもらいたい点だ。

※本記事は、今までの固定概念にとらわれず、悩んでいる自分を行動によって変えようとする人に向けたロート製薬の発毛剤「リグロEX5」による連載です。次回は明石ガクト氏が登場します。
(取材:秋山美津子 編集:奈良岡崇子 撮影:大畑陽子 デザイン:田中貴美恵)