[東京 18日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>と三菱自動車<7211.T>は18日、会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前会長のカルロス・ゴーン被告が、オランダに設立した折半出資の統括会社「日産・三菱B.V.(NMBV)」から報酬名目で不正に約10億円を受け取っていたと発表した。両社が進めていた内部調査で判明した。

記者団の取材に応じた三菱自の益子修会長兼最高経営責任者(CEO)は判明した不正について、昨年11月19日のゴーン氏逮捕を受けて内部調査を開始した後に「日産幹部から、ゴーン氏にNMBVから不正の疑いのある支払いがあったとの情報開示を受け、初めて認識した」と説明。「それまでは私を含め、当社関係者は一切知らなかった」と語った。

また「日産の社内でも知っていたのは限られた人だけ。(日産の)西川(廣人)社長にも知らされていなかった」といい、「日産と協力し、ゴーン氏に対する責任追及を検討していく」として損害賠償請求などを検討する意向を示した。日産も「不正に支払われた金銭は返還されるよう今後検討していく」としている。

内部調査によると、ゴーン氏は独自にNMBVと雇用契約を締結。この契約に基づき、2018年4月末から11月にかけて総額約782万ユーロ(約10億円、税額含む)の支払いを受けていた。

NMBVの取締役の報酬決定や報酬を定めた雇用契約の締結は、本来は同社取締役会の決議が必要だが、同氏は他の取締役らと協議せずに雇用契約を結び、不正な報酬を手にしていた。

NMBVの取締役はゴーン氏のほか、西川社長、益子CEOの3人だが、西川、益子両氏は報酬を受け取っていないという。NMBVは日産と三菱自の相乗効果の追求を目的に設立された会社だが、両社の連結対象外で、報酬は開示されていない。

内部調査に関わった弁護士によると、雇用契約は権限がない日産の秘書室幹部(提携以降は三菱自の秘書室幹部も兼務)の署名入りで作成されており、「この契約は無効」であること、取締役会の決議がないことなどを踏まえ、「支払いは不正と判断した」という。刑法上では業務上横領罪の可能性があるとの見方を示した。

同弁護士はまた、両社の戦略的提携契約が結ばれた16年5月の1カ月後となる6月ごろに、ゴーン氏、日産の前代表取締役だったグレッグ・ケリー被告、日産幹部らの間でNMBVを通じたゴーン氏への報酬支払いの検討が始まったと説明。日産の三菱自への出資完了は同年10月で、「資本提携が正式に発足する前から今回の支払いの仕組みを計画していた」と明らかにし、三菱自側は一切、知らなかったと話した。

益子会長は、逮捕に続くゴーン氏の新たな不正発覚について「率直に言わせてもらうと悲しい」と述べた。ただ、今回の問題と日産やルノー<RENA.PA>との提携関係(アライアンス)は「峻別して考えるべきだ」とし、「アライアンスのメンバーになったことは選択として間違っていたとはまったく思っていない」と強調した。今の自動車産業が抱える数多くの問題に「1社で対応していくのは難しい。アライアンスの力を有効に活用していくことが不可欠だ」と語った。

*内容を追加しました。

(白木真紀)