有報に経営戦略・リスク明記 金融庁指針
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記事にある戦略やリスク情報について記載する場所は、有価証券報告書において既に用意されています。とは言え、上場企業一般(ざっくり時価総額数百億円から数千億円級)における有価証券報告書の開示プラクティスでは、これらの経営者の考えに関する情報につき、形式的な開示に留まることが多いです。
今後出てくるとされる(by 記事)金融庁からの指針は、「形式的な記述にとどまらず、投資家が実態をちゃんと理解できるようにしっかりと書きなさい」、というようなものでないかと推察します。
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レノバ(私の勤める会社)のIPO時の目論見書(←これがアップデートされて後に毎年の有価証券報告書になる)においては、私自身が、会社の経営者自身が語るべき戦略やリスク情報に関する部分をメインでドラフトしました。
目論見書のドラフティング時に意識していたのは、米国上場企業のFiling documentや米国における資金調達時でのディスクロージャーです。というのも、米国では、10-K(有価証券報告書)やProspectus(目論見書)において、自社の「戦略や強み(S&S = Strategy and Strengths)」、「リスク情報(Risk Factors)」や「経営者による財務分析(MD&A = Management Discussion and Analysis)」を、投資家に分かりやすく開示するからです。
私にとり、米国でのディスクロージャーレベルが、適切な水準だと思っています。
上場後、私がCFOとして機関投資家やアナリストと1 on 1ミーティングをするとき、たまに「御社のディスクロージャーは結構しっかりしていますね。有価証券報告書に知りたいことがちゃんと書いてある笑」と講評頂きます。「有価証券報告書に知りたいことがちゃんと書いてない」会社が多いから、こんな話になります。
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ご参考:
レノバの有価証券報告書
【事業の内容】計13ページ
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】計10ページ
【事業等のリスク】計15ページ
【MD&A】計8ページ
上記合計:計46ページ
他の再エネ事業を行う企業の有価証券報告書
【事業の内容】計2ページ
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】計2ページ
【事業等のリスク】計3ページ
【MD&A】計4ページ
上記合計:計11ページ官僚の報告書ではないので、民間企業にこんなことを期待すべきではない。
隙のない作文を作ることに注力すると、そういうことに長けた官僚のようなスタッフが増える。
株主総会の禅問答を、有報に書くようなものだ。
お願いだから、金融庁はまず自庁で作成し、他の省庁にも作成を依頼して欲しい。実証実験をしないで、いきなり実施させるのは無茶だ。
この答申に加担した、学者の方も、是非、自分の大学や研究機関で作成してみて欲しい。
こんなことをしてるから、生産性はあがらず、企業の競争力は落ちる一方だ。PIPEsで上場維持しながら集中投資するファンドマネジャーと、実際に開示文書を作るCFO/CIROと、戦略を立てて実行に移して組織を指揮する事業会社の代取の3つの立場を経験した事があるが、短期業績へのプレッシャーと決算工数を増やす四半期決算の開示を止めて、この様な定性的に掘り下げた記述を拡充する方が良い。戦略の機密性は実際には大きなリスクはない。なぜなら、企画する事と実際にいつどの様に実行するかは全くと言っていい程別物だからである。ただ、これに実際的な意味合いを持たせるにはコーポレートガバナンスコードで既に推奨されているが、経営陣への株式報酬の比率をもっと増やす事が必要だ。株主と利益を一致しないと、立てられた戦略や把握したリスクは株主目線のものにならない。
また、経営戦略やリスク、株主還元方針をコミットせずに極力抽象的に書き下すのはそこそこ難しいので、国語が出来る財務経理の価値が上がると思う。