[東京 26日 ロイター] - 日銀が26日公表した10月30─31日の金融政策決定会合の議事要旨によると、海外経済の下振れリスクが大きくなっているとの認識が大方の委員で共有され、予想物価上昇率への影響を懸念する声も出た。金融政策運営は、現行の緩和策を粘り強く続けることが適切との見解が示される一方、金融機関収益への影響を注視していく必要性が共有された。

会合では経済・物価の先行きリスクについて「米国等の保護主義的な動きを中心に、このところ、海外経済を巡る下振れリスクが大きくなっている」との認識が共有された。

特に米中間の貿易摩擦について、何人かの委員が「現時点でわが国経済に及ぼす影響は限定的」としながらも、「国際金融市場の動揺や企業マインドの悪化という間接的な経路」を通じた影響を警戒。

ある委員は、不安定化している株式市場について「内需型企業よりも、外需型企業の株価下落の方が大きい」とし、「市場は、日本企業にも貿易摩擦問題がある程度影響しうるとみているのではないか」との見解を示した。

これに対して「極端な悲観論に傾斜しないよう留意すべき」との指摘が出た。一方、需給ギャップの改善によって実際の物価が上昇し、それを受けて予想物価上昇率が高まるとのメインシナリオについて「その前提となる海外経済に下振れリスクが高まっていることは気がかり」と物価への影響を懸念する声もあった。

金融政策運営は、大方の委員が物価2%目標の実現には時間がかかるものの、「2%に向けたモメンタムは維持されている」として、「現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当」との認識を共有した。

一方で、金融緩和の長期化が金融仲介機能や金融システムに及ぼす影響について、政策委員は「現時点でリスクは大きくない」としながらも、金融機関の収益力の低下が続く中で「先行きの動向を注視していく必要がある」との認識を共有した。

こうしたリスクに対して利上げなど金融政策での対応を求める声があることについて、1人の委員は「金融システムの安定確保を目的とするプルーデンス政策の重要性を見落としてはならない」と語った。

(伊藤純夫)