[東京 20日 ロイター] - 日銀は19─20日に開いた金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を決めた。海外経済の減速懸念や長期金利低下・株安が進む中で開かれた決定会合だったが、海外リスクの記述に変化はなかった。また、長期金利の低下について、黒田東彦総裁は会見で「問題ない」との認識を示した。

決定会合の結果を記した公表資料。前回会合からの変更点は、設備投資の背景説明で「企業収益が改善基調をたどり」としていた部分を「企業収益が高水準で推移」と変えたところだけだった。

注目された海外リスクは「米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰すうとその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の展開やその影響、地政学リスクなど」と、前回と同様の記述となった。「海外のリスクは高まっている」(黒田総裁)との認識はあるものの、「さまざまなリスクに注意を払う必要はあるが、現時点では、わが国の景気が先行き緩やかな拡大を続けるという中心的な見通しに変化はない」(同)とみており、公表文の記述を変えるような変化は起きていないという認識だ。

海外リスクを受けて、欧米をはじめとして世界的に株安・長期金利低下が進んでいる。決定会合2日目の20日には、日経平均株価が一時700円を超える下落で年初来安値を更新。また、長期金利も一時0.010%を付けた。

黒田総裁は、株安について「企業収益見通しがしっかりしているほか、経済のファンダメンタルズにも大きな変化はない中で、為替市場も比較的安定した動きを続けている」とし、「市場も世界経済に大きな変化が起きているとはみてないのではないか」との見方を示した。

また、欧米の長期金利が低下する中で日本の長期金利も低下しているとし「これ自体は何ら問題にするところではない」と述べ、足元の金利低下を容認する姿勢を示した。

日銀、財務省、金融庁は20日午後6時から国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開催。浅川雅嗣財務官は終了後、記者団に対し「世界経済は緩やかな回復基調にあることに変わりなく、市場の反応はオーバーシュート気味」とし、為替・株式市場で一段とボラティリティーが高まった際には「適切に対応することで意見が一致した」ことなどを明らかにした。

黒田総裁は、物価面でも「物価安定目標の実現に向けたモメンタムは維持されている」とし、消費者物価の前年比は2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見通しをあらためて示した。ただ、総裁は「将来、物価安定目標の実現に向けたモメンタムに必要と判断されれば、適宜・適切に追加緩和を検討していくことになる」と述べ、必要ならば追加緩和を辞さない姿勢を示した。

追加緩和手段としては、短期政策金利の引き下げ、長期金利目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速など「まだまだある」とし「そうした事態になった時に適切に判断して行うことになる」と述べ、「手詰まり感」との市場懸念を一蹴した。

(清水律子)