Imani Moise

[17日 ロイター] - 米国の銀行株は今月に入ってから、景気後退(リセッション)への懸念を背景に急落している半面、業界幹部は米経済は非常に良い状態だと不安を一蹴し、表面的な融資関連のデータも堅調に見える。

しかしホームエクイティローン(持ち家の評価額からローン残高を差し引いた分を担保とする融資)や、商業不動産融資、クレジットカード融資といった分野では異変が起きていることが、ロイターが政府統計を分析して明らかになった。各銀行は、リスクが高いとみなされる顧客との取引も縮小している。

これらは全て、米銀が近くリセッションがもたらす痛みを受けることを覚悟している証拠と言える。

「銀行業界は今、ある程度の適温状態(ゴルディロックス)を享受している時期にある」とロイターに語るのは、フラッグシップ・バンク・ミネソタのアンディ・ショーナック最高経営責任者(CEO)だ。

ショーナック氏は「金利は相応の利益を稼げるほど高く、クレジットの質はよほどのことがないと損失を被らないほど良好だ」と説明する。

複数の業界幹部は、米経済が恐らく2007─09年の世界金融危機後の長期にわたる景気拡大の最終段階に入ったとは認めながらも、与信関係の数値が大きく悪化し始めるまでは、引当金を増額したり、顧客との取引を減らす理由は見当たらないと主張している。

シティグループ<C.N>のジョン・ガースパッチ最高財務責任者(CFO)は先週のイベントで、市場の動きと「現場の風景」には現時点で大幅なかい離が存在しており、ファンダメンタルズはなお非常にしっかりしているようだと強調した。

このイベントに出席したバンク・オブ・アメリカ<BAC.N>のブライアン・モイニハンCEO、ウェルズ・ファーゴ<WFC>N>のティム・スローンCEO、JPモルガン<JPM.N>のジェイミー・ダイモンCEOらも同意見だった。

実際、デフォルト率や引当金の水準などは過去最低に近い。ところが銀行は一部の分野からは手を引き始めているのだ。

例えばニューヨーク連銀が公表した調査に基づくと、10月までの4カ月で信用履歴の低い顧客からのローン申請は約半分が却下された。前年同期の却下比率は43%だった。

また銀行は、特にサブプライム層の借り手を中心に既存口座の7%を閉鎖。この割合はNY連銀が調査を開始した2013年以降で最も高くなっている。

業界全体でホームエクイティローンは8%減り、クレジットカード融資や商工業ローンなども伸びが鈍りつつある。

カード融資では最大手クラスのキャピタル・ワン・ファイナンシャル<COF.N>は、新規顧客を積極的に勧誘しながらも、それぞれの顧客への融資限度を抑えている、とリチャード・フェアバンクCEOは先週のイベントで明らかにした。

何人かの地銀幹部も、最近になって慎重姿勢を強めたと話す。具体的には建設が始まったばかりの工事プロジェクトや、事前のリース合意がない不動産などへの融資を回避している。

ニュージャージー州のオーシャンファースト・バンクのクリス・マーCEOはロイターに、借り換えサービスから撤退し、工業ローンの残高を圧縮し始めたと述べた。「景気悪化時には工業不動産は極端に流動性が低下してしまう。欲しがられず、必要とされなければ、ほぼ価値はゼロになりかねない」という。