育成プログラムの「見える化」で近畿圏ナンバーワン。その底力とは

2019/1/18
マンションデベロッパーとして、土地の企画・開発・アフターフォローまでトータルに手がけているプレサンスコーポレーション。全国でも圧倒的なマンション供給戸数を誇る同社の成長の背景には、独自の並ならぬ「営業術」があるという。

創業時には自身も第一線で活躍し、今や営業部隊100名以上を束ねるキャリアを持つ同氏から、プレサンスコーポレーションの「営業術」について話を聞いた。
徹底したエリア戦略で供給戸数No.1
──マンションデベロッパーはいわば不動産業界のメーカー的存在ですが、プレサンスではどんなコンセプトのマンションを手がけているのでしょうか。
河合 一口にマンションといっても高級なものからお買い求めやすいファミリー向け、投資用の単身者向けまで様々なタイプの物件を扱っています。
 いずれも、立地は都心主要駅から徒歩5~10分圏、あわせて快適性・機能性も重視し、長期にわたる高い資産価値を追求しています。
 最近では、これらのマンション開発にAIを活用したクラウド型顧客管理システムを導入することで、よりお客様のニーズに沿った物件提供を可能にしています。
天満リヴァーシア外観(都市型)
 また、近年のインバウンド需要に伴い、大阪・新今宮に民泊専用ビルの建設を計画するなど、新たな取り組みも進めています。
──新規事業に取り組む一方で、従来のマンション開発では圧倒的なシェアを確立されていらっしゃる。マンション供給戸数で関西圏No.1を誇る、その理由を教えてください。
 徹底したエリア戦略です。当社は不動産業者と築いてきた信頼関係をもとにそのエリアの土地に関する情報をいち早く入手しているので、競争優位の市場環境をつくっています。
 その結果、優良な用地を仕入れることができ、マンションも適正価格で販売できています。投資用のワンルームマンションでは、入居率も常に97%を超え。テレビCMも地域に特化して集中的に放映し、お客様へ積極的にアプローチしています。
 こうしたエリア戦略によって2017年の分譲マンション供給戸数ランキングでは近畿、東海・中京エリアで1位、全国でも2位という高い供給数を誇っています(※)。特に近畿エリアの供給数は8年連続No.1です。
※ 不動産経済研究所調べ(2018年2月現在)
成長の好循環サイクルを生み出す営業術
──このような持続的な成長には、どのような要因があると考えますか?
 まずひとつは積極的な「仕入れ力」です。創業当時から社長が自ら仕入れの現場に携わっていたので他社と比べて圧倒的に意思決定のスピードが速いんです。良い情報があれば担当者からすぐに直接社長に確認をとれる体制が整っています。
 次に「商品力」。当社は一戸建て、マンション、ホテルなど様々な不動産開発を通じて豊富なノウハウを蓄積しているので、それぞれの土地を生かした開発に強いんです。
 土地の売り手側からしても「プレサンスならどんな土地でも上手に調理してくれるだろう」という安心感があるんですね。こうした信頼関係があるので、大量の土地情報を優先的に入手することができています。
 大量の物件を扱うことで資金調達面でも建築コストの面でも良い条件が得られます。例えば建築工事を請け負うゼネコンは、年がら年中工事があるわけではなくて、もちろん閑散期もある。
 そんなときプレサンスなら工事があちこちにあるので、閑散期で人手を余らせたくないゼネコンにとってもメリットがあり、当社も建築コストを抑えることにもつながり、互いにwin‐winの関係が成り立っています。
 コスト面を抑えられるということは、そのぶん物件を購入するお客様にもより価格を抑えてご提供できる、だから多くのお客様に購入いただける、という好循環が生まれます。
 実際に、当社は常にほとんどの物件を完売。プロジェクト融資も早期返済しているので、金融機関からの信頼も厚く、優遇された条件での資金調達ができています。
 この「財務力」によって、積極的な仕入れが可能となり、好循環のサイクルへとつながっています。
 もちろん、いくら「仕入れ力」「商品力」「財務力」が高くても、それに伴う社員一人ひとりの「営業力」がなければここまでの成長はなかったと思います。
育成プログラムの「見える化」で個々の成長度合いを把握
──持続的な成長には社員の営業力が大きいとのことですが、創業当時と現在とで営業スタイルは変化しているのでしょうか。
 今も昔もお客様へのファーストアプローチは電話営業です。ただ、私が入社した頃は会社もまだ上場していなかったので、知名度もブランド力もありませんでした。
 特に電話ではお互いの姿が見えないので、会社の存在や商品が本当にあるのかというところまで疑われましたね。当時は地道に営業活動をするほかにお客様から信用を勝ち取る方法がなかったんです。
 しかし単なるワンマンプレーでは、人も育たないし、会社の要となる「営業力」も存分に発揮できない。そこで、これまで積み重ねてきた成功体験をもとに、営業部隊の根幹となる育成プログラムを少しずつ体系化させていきました。
──育成プログラムの体系化というと?
 AIを活用した、いわゆる「見える化」です。セールスフォースを導入し、営業進捗はもちろん、商品知識トレーニングといったプログラムも全てそこに組み込んでいます。
 上司は日々社員の動きや成長度合いをチェックできるので、何か問題を抱えていたり、伸び悩んでいたりする子が一目でわかる。だから声もかけやすいし、指導もしやすいんです。社員一人ひとりの成長速度は異なります。
 だからこそ、彼らが今どこで迷っていて、何が問題になっていて、それに対してどう解決策を講じていくか、一緒になって考えられるようにしています。
 さらに、成績の良い営業担当はどんな電話営業をやっているのかというのも、今ではCTIで共有することができますし、お客様との電話の内容も上司がチェックできる仕組みなので、的確なフォローやアドバイスができる。
 昔と違ってそのあたりが全て見えるようになっているので、部下も変なところで悩まなくなってきています。
マンツーマン体制で社員の「営業力」を磨く
──では、実際の育成プログラムについて具体的な内容を教えてください。
 知識面の教育には、単なる自社物件の商品知識だけでなく、ファイナンシャルプランニングのトレーニングも含まれています。
 税金知識、金融商品や生命保険や年金、相続といった様々な知識を習得し、お客様の立場に立った、お客様目線での営業をすることが肝心だからです。
 実践的な教育としては、創業当時から上司と部下のマンツーマン体制で行っています。例えば、新入社員なんかは初めのうちはほとんど仕事ができないのは当たり前。
 だから上司と一緒に商談に同行し、わからないことがあればその場で質問して一つずつクリアにしていく。
 商品の勧め方や接客の仕方などを上司の真横で学び、成功体験を積み重ねることで初めて独り立ちをする、という流れです。
──育成プログラムの可視化によるメリットはなんでしょうか?
 育成プログラムを確立するようになってから、成長スピードが格段に速くなっています。実際に、新入社員で入社したその1年目に2段階昇格し、係長になっている人もいます。
 年齢や役職に関係なく、意欲があって結果を出している人はきちんと評価されていますね。だからこそ、社員同士の競争力も強いのです。
 例えば、売上に苦戦している先輩が近くにいると「自分ももうちょっとゆっくりしといていいのかな」とマイナスの方に引きずられることがありますが、仮に自分と年の近い先輩が役職について、どんどん売上を上げている姿を見ると「自分もそうなりたいな」というプラスの意識が働きますよね。
 これは売上目標についても同じことが言えます。目標の100%をギリギリで達成するのではなく、200%、300%以上の売上で達成するのが当社では当たり前。高い目標に貪欲に突き進むことで、さらに社員の「営業力」が磨かれていきます。
 常にこうした良い刺激が社内に広がっているので、やる気のある人にとっては最高の環境だと思います。
インセンティブ制度や就業環境改善による高循環サイクル
──高い目標を実現できる人材に対して、どのような待遇や環境を整えていますか?
 インセンティブ制度ももちろんですが、資格取得の支援制度、社宅・家賃補助制度など、社員の働く環境づくりに注力しています。オンとオフの切り替えをきちんとつけるために、長期休暇も取得可能です。
 毎年恒例の社員旅行では、これまでにバリやハワイ、オーストラリアなどに全社員で行きました。
 それこそ昔の不動産業界は、「体育会系」「ブラック」「離職率が高い」といったイメージが少なからずあったと思いますが、当社はこのように職場環境や組織体制の基盤を整えているので、離職率は以前より大幅に下がってきています。
 役職に関係なく社員同士の距離が近いので、よく職場の皆と飲みに行ったりもしています。仕事のことだけでなくプライベートのことまで、ざっくばらんに話ができる関係なのは嬉しいですね。
 日頃からコミュニケーションをとっているおかげか、こうした職場の仲間意識の高さも社員のモチベーションアップにつながっていると思います。
求めるのは「素直さ」「粘り強さ」
──優れた営業力を継承し体現していくために、今後どのような人材が必要ですか。
 一番は「素直な人」です。何か失敗したときに、100%自分に原因があると思い、反省することができるような人です。他責の捉え方をする人は、しばらくするとまた同じ失敗を繰り返します。
 営業職というとどうしても話術にたけている必要があると思いがちですが、実際はそうではありません。「素直さ」がある人は、成績もどんどん伸びています。
 それから「粘り強さ」がある人。これはまだ私が若手で失敗ばかりしていた頃のエピソードですが、当時上司でもあった社長の山岸から「俺も昔はできなかった」と言われたことがありました。正直、それを聞いてすごく安心しましたね。
 よく「何でお前はできないんだ」と頭ごなしに叱咤する人がいますが、うちはそうじゃない。つまずいたら一緒になって解決策を考える。失敗を乗り越える粘り強さを磨いてくれるんです。
 だから「今はできなくても、頑張ったらこの人みたいになれるんだ」と、またひとつ目標ができていく。失敗しても前に進める力のある人は、将来すごいパワーを発揮すると思います。
 昨今、不動産業界はIT化が遅れているといわれていますが、当社では物件入居率の見える化、採用の見える化など、AIを駆使した様々な見える化プロジェクトを進めています。
 まだまだ発展途上であるプレサンスと共に成長し、次世代のデベロッパーとして活躍いただける熱意ある仲間を私たちは求めています。
(執筆:木村里紗 構成:クエストルーム 編集:奈良岡崇子 撮影:合田慎二 デザイン:砂田優花)