【絶叫】ふるさと返礼品の危機。泉佐野市、“国の脅し”を語る

2018/12/10
今年もふるさと納税の季節がやってきた。
ふるさと納税とは、出身地や縁のある自治体に寄付(ふるさと納税)をすると、ほぼ全額が所得税・住民税から控除されるという制度だ。
控除を受けるには、原則として確定申告が必要。それだけに例年、年末には駆け込みが発生し、まさに今年もこれから年末商戦本番、というタイミングだ。
ところが今年は、大きな異変が起きている。来年度には法改正され、返礼品次第では税金が控除されなくなる可能性が浮上しているのだ。
そもそもこの制度、10年前に総務大臣だった菅義偉・現官房長官が「生みの親」。総務省や財務省はもともと大反対だったが、強い人事権を握る菅氏には、表立って逆らいづらいという“オトナの事情”がある。
いつしか現在のような、寄付者に対する「返礼品」の過当競争に陥り、総務省も忸怩たる思いで眺めてきた。しかしそれは当初から懸念されていた、極めていびつな制度だったのである。
例えば、自治体Aの住民が自治体Bに10万円の寄付をして、自治体Bが3万円分の返礼品を寄付者に送ったとしよう。
寄付者は自治体Aでの納税が控除されるから、自治体Aは10万円の損だ。
一方、自治体Bにとっては7万円がまるまる利益。ただ国全体でみれば、税収は10万円から7万円に減ることになる。財務省も反対するわけだ。
そして、返礼品競争はどうなるだろう。そう、合理的に考えれば、3万円→9万9999円になるまで、続くのだ。
しかも、である。控除の対象となる寄付額の上限は「住民税の2割」まで。つまり高額所得者ほど、タダで高価な返礼品が得られる。その本質は、お金持ちほどいいモノがもらえる「金持ち優遇策」だ。
年収600万円なら、返礼率3割でざっと2万3000円程度。これが年収1億円の人となると、実に130万5000円分がタダで得られる設計だ。
もちろん、自治体は「国全体では税収が減る」などと、ツマラナイことは考えない。
財政難で鬼気迫る自治体にしてみれば、背に腹は代えられない。いびつな制度であろうと、そこに“宝の山”があるのだから、寄付集めに参戦しないほうがおかしいわけだ。
ところが、ここにきて多額の寄付金を集めてきた自治体ばかりが悪者扱いされ、必死にふるさと納税を盛り上げようと奔走してきた自治体からは、総務省への恨みつらみが聞こえてくる。
なかでも、総務省から名指しで批判され、反発している“不良自治体”がある。2017年に全国トップの金額を集めた、大阪府の泉佐野市だ。
読者の中には、泉佐野市に寄付することで、「よなよなエール」や「肉」、LCCピーチの「ピーチポイント」といった返礼品を受け取っていた人も多いかもしれない。
しかし今、返礼品の「総合デパート」と化した泉佐野市は、迫る法改正で“閉店危機”にさらされている。
本日よりお送りする特集『踊る!ふるさと納税』第一回の本日は、NewsPicks編集部が泉佐野市を徹底取材。
千代松大耕市長を直撃し、今の心境から、水面下で起きている「総務省からの脅し」の内情までを、すべて打ち明けてもらった。

公立小中学校に「プールがない街」

──泉佐野市は2017年度、ふるさと納税135億円を集め、全国1位になりました。
千代松市長 正直、まさか100億を超えるとは思っていなかったので、びっくりしました。
われわれが提供している返礼品は、地元特産の「泉州タオル」や「水ナス」「地酒」などのほか、地元の焼肉店が目利きした「肉」、関西国際空港を拠点とするLCC、ピーチで使える「ピーチポイント」など、全40カテゴリー・1000種類以上を取り揃えています。