[東京 6日 ロイター] - 黒田日銀総裁は6日、参議院財政金融委員会で、米中の貿易摩擦をはじめとした保護主義的な動きを最大のリスクに挙げ、必要に応じて適切に対応していく考えを表明した。また、将来の緩和余地を確保するために直ちに金利を引き上げれば、むしろ物価安定を遠ざけることになる、と語った。藤末健三委員(自民)の質問に答えた。

総裁は、日本経済を取り巻く先行きリスクのうち、「特に米中間の貿易摩擦を始めとする保護主義的な動きに注意が必要だ」とし、「最も大きなリスクが貿易摩擦と、その世界経済への影響だ」と貿易摩擦の動向に強い警戒感を示した。

貿易摩擦の帰すうが見通せない中で、貿易摩擦が長期化すれば企業や家計のマインドに悪影響を与えるとともに、金融市場の不安定化につながる恐れがあるとし、日銀として「必要に応じて適切に対応していく」考えを示した。

大規模な金融緩和が長期化に伴い、日銀の将来的な出口戦略に対する懸念も強まっているが、総裁は「いずれかの時点で出口について情報発信することは必要」としながら、物価2%目標の実現が遠い現状で出口戦略を具体的に説明することは「市場の混乱を招く恐れがある」と指摘。

また、世界経済の先行きに不透明感が強まっているが、「将来の緩和余地を残すために直ちに金利を引き上げることは、むしろ物価安定を遠ざける」とし、否定的な見解を示した。

2019年10月に予定されている消費税率の引き上げの影響については、14年4月よりも引き上げ幅が小さいことや軽減税率が導入されることに加え、政府が需要平準化対策を検討していることなども踏まえて「影響は小幅なものにとどまる」としながら、「消費者マインドへの影響など不確実性が残っており、注視していく」と語った。

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