[上海 16日 ロイター] - 中国の株式市場で、投機筋が再び活発に動き始めた。取引や資金調達、裏口上場などの規制が緩和されつつあるからだ。

背景には、資金繰りが苦しくなっている企業に新たな出資を促したり、合併・買収(M&A)を実現させて、2015─16年のような市場の崩壊を食い止めたいという当局の思惑が透けて見える。

こうした動きは、株価の乱高下を防ぐために2─3年前に相次いで導入された、より厳格な規制措置が撤回されることを意味する。一面ではそれは開かれた頑健な市場の妨げになる不必要な規制を取り除く効果があるのかもしれないが、むしろ目先の安定を確保するために持続的なバリュエーションを犠牲にする危険な手段だとの懸念も出ている。

ウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメントのパートナー、ユアン・ユウェイ氏は「これら全ての緊急措置は『悪魔との契約』だ」と語り、市場を支える上で投機筋に助けを請うのは今後のトラブルの原因になりかねないと付け加えた。

確かに特に過去1年間は、相場操縦やインサイダー取引の徹底的な取り締まりもあり、投機筋はおおむね鳴りを潜めていた。

ところが先月、中国証券監督管理委員会(CRSC)が市場の信頼感を高めようとして打ち出した一連の措置が、投機筋の急速な復活につながった。具体的にはM&Aの承認手続き迅速化や、新規株式公開(IPO)申請を却下された企業による裏口上場の支援などだ。直近では、上場企業がより頻繁に、より幅広い投資家層に株式の追加発行ができるように規則を修正した。

そのため買収の標的になりそうな企業や、上場廃止されてもおかしくない企業に投機筋の買いが殺到。上場廃止の可能性を含めた高い投資リスクがある「特別処理銘柄(ST)」で構成される指数は、先月19日以降に30%余り高騰している。

この間、優良企業主体のCSI300指数<.CSI300>の上昇率は3%にとどまった。

裏口上場目的で買われるのではないかとみなされた企業にも投機筋の資金が向かった。

例えばカーエアコン製造の恒利実業発展<000622.SZ>は、過去3週間で株価が3倍に跳ね上がった。同社が、値上がりはファンダメンタルズを無視しているといくら警告しても、投機筋はどこ吹く風だ。

実際に計算してみると、同社の今の収益力とバリュエーションに基づけば、株を買った投資家が配当支払いを通じて資金を回収するには2800年かかる。

またワクチン不正問題の渦中にあり、上場廃止リスクに直面する長生生物科技<002680.SZ>も投機筋の買いで値上がりした。

しかしウォーター・ウィズダムのユアン氏は、本来なら破綻したはずの企業を支えるための規制緩和は、特定の利益集団への譲歩であり、政府が「ポピュリズムにさらわれた」表れだと指摘した。

LCセキュリティーズのファンドマネジャーは、市場の行動を歪めるものだと批判。「価値の乏しい企業を買って大儲けできるとすれば、だれが優良企業に興味を示すだろうか」と苦言を呈した。

それでも当局にとっては、目下の心配としては新たな投機バブルよりも株価下落が続くことの方が大きいようだ。

上海証券取引所は2日、取引口座の停止といった締め付け的な措置は実行を控えると表明。CSRCは先月末に市場への「不要な介入」を減らすと宣言している。

(Samuel Shen、John Ruwitch記者)