1ガロン当たり5.2ドルで販売

廃棄物発電(waste to energy)は以前から「ゴミからエネルギー」の逆が行われていると指摘されてきた。つまり、起業家のエネルギー(energy)が消耗し、資本家の資本が無駄(waste)になっているというのだ。
カリフォルニア州プレザントンに拠点を置くフルクラム・バイオエナジー(Fulcrum BioEnergy)は、これまでとは違う道を採用した。同社はまず、1億ドルと10年間を投じ、どういうビジネスが最も効果的かを正確に突き止めたのだ。
フルクラムは2019年、ほとんど無料で入手できる地方自治体の固形廃棄物を回収して、旅客機を動かす燃料「ジェットA(Jet A)」に転換する予定だ。
ジェットAは現在、1ガロン当たり5.2ドルで販売されている。難易度が高いことで知られるこの分野であっても、この価格とコストであれば有効とみられる。
フルクラムの共同創業者でもあるジム・マシアス社長兼最高経営責任者(CEO)は自社について、他社より優れた新しい技術の提供を目指しているわけではないと語る。同社が目指しているのは、手に入れられるなかで最も良い新しい技術を組み合わせて、ビジネスモデルのリスクを抑えることだ。
マシアスCEOは「当社では、単一の魅力的な新製品との結びつきがあるわけではない。そういう意味では唯一の企業だ」と言う。
「われわれの金融パートナーは、異なるアプローチを取った。つまり、より良いビジネスモデルとはインテグレーター(統合者)になることだ」

無機廃棄物を除去する「逆リサイクル」

マシアスCEO自身、非常に優秀なインテグレーターだ。
同社に投資している企業は、フロントエンドには廃棄物管理サービス会社のウェイスト・マネジメントや、ごみ処理会社のウェイスト・コネクションズ。バックエンドには、ジェット燃料を購入するユナイテッド航空やキャセイパシフィック航空などが揃っている。
こうした航空会社に対して、フルクラムは燃料価格の高騰をヘッジする。また、7000万ドルの助成金を同社に出している米国防総省に対しては、燃料の供給リスクをヘッジしている。
ネバダ州リノ近郊には、フルクライム初の大規模な原料加工施設がある。トレーラーが匂いの強い積み荷を降ろしていく広い区画には、プラスチック等の無機廃棄物を除去する特殊な装置がある。いわば「逆リサイクル」のプロセスだ。
競合他社は一般に、バイオマス源としてトウモロコシやスイッチグラス(イネ科の多年生熱帯牧草)などを使用している。フルクラムがエネルギー源として地方自治体からの固形廃棄物(ゴミ)を使用するのは、これらの供給がトウモロコシなどと比べて予測可能だからだ。実際、都市からのゴミは必然的に発生する。
無機廃棄物を除去された有機物は、大型容器に投入され、高圧や高温で分解される。このプロセスは基本的には、地球がかつて石油を生成した過程と同じだ(絶滅した恐竜と、数億年もの加工時間は含まれていないが)。
このガス化プロセスは、別の投資パートナーであるサーモケム・リカバリー・インターナショナル(ThermoChem Recovery International)からライセンス供与を受けている。
ガス化プロセスのなかで、有機廃棄物の中の炭素と水素は、炭化水素に転換される。炭化水素は、石油や天然ガスの化学的基礎だ。こうして製造された合成燃料「シンガス(syngas)」は、硫黄や粉塵などの不純物を取り除いたのちに、ジェット燃料に精製される。

航空路線利用は2036年までに2倍

フルクラムは現在、最終段階に関しては投資パートナーと協力しているが、リノにある自社の精製所で処理も始めている。
実は、マシアスCEO自身、恐竜になりかけていた時期があった。同氏はカルフォルニア州の大手電力・ガス供給会社PG&Eに20年間勤務していた(PG&Eは2000年に経営危機に陥り、連邦倒産法第11章を申請したことでも知られている)。
しかし、絶滅ではなく進化を遂げた。1990年代の電力自由化の黎明期に、独立系発電事業者カルパイン(Capine)に参画したのだ。
マシアスCEOは同社で、創業者のピーター・カートライトとともに、標準設計を採用した効率のよい発電所を国内に数多く設置していった。
マシアスCEOはフルクラムで、同様の青写真を追求している。理想的な廃棄物エネルギー回収工場を作るために、どの段階においても最良のプロセスを求めて徹底的に調査した。そして、効率的な設計の工場を多数建設することで迅速な拡大を目指しているのだ。
フルクラムは、ユナイテッド航空が本社を置くイリノイ州シカゴに工場建設を計画している。ほかにも、テキサス州ヒューストンやワシントン州シアトル、イギリスでも建設を予定している。
航空路線の利用は2036年までに倍になることが予測されている。マシアスCEOのビジネスは出発準備が整ったといえるだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bill Saporito/Editor-at-large, Inc.、翻訳:ガリレオ、写真:TheCrimsonMonkey/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.