誰でも専用の「オンライン編集部」を持てる時代が来た

2018/11/19
記事コンテンツ制作の案件ごとに最適なクリエイターをマッチングできるプラットフォーム「エディトル」が、2019年の春にローンチされる。
ウィルゲートは、2012年から記事作成サービス「サグーワークス」を運営。業界トップクラスのSEOノウハウを活用し、この6年間で2600社のWebコンテンツの作成を支援してきた。しかし、コンテンツ飽和状態の今、「良いコンテンツ」に必要なのはSEO対策だけではない。ユーザーの「心を動かす」コンテンツが必要なのだ。
「オンライン編集部」とも呼べるこのシステムは、Webコンテンツの未来をどう変えるのか。代表の小島梨揮氏が語る。
最前線で感じた“質より量”への危惧
ライターや編集者などのクリエイターとつながりのない企業でも、直接コンテンツ制作を依頼できる──。
ウィルゲートがローンチする「エディトル」は、記事作成サービス「サグーワークス」で培った約21万人のライター人脈を生かしたプラットフォームだ。
企業のニーズと、コンテンツ制作に携わる各領域のプロたちの属性やスキルをオンライン上で適切に結びつけるプラットフォームであり、自社専用の編集チームを作れる「コンテンツクリエイター・マッチングサービス」だと言える。
なぜ、このサービスを立ち上げようと考えたのか。代表の小島梨揮氏は「企業のコンテンツマーケティングを巡るさまざまな課題を解決したかった」と語る。
「マスマーケティングからOne to Oneマーケティングの時代へと移行し、多くの企業が、Webコンテンツを通じて個人に適した情報の提供を進めてきました。
しかし、良質なコンテンツを制作し、コンテンツマーケティングを実施するためには、編集・企画・執筆・校正・校閲と、各工程にプロが介入する必要があり、高コストになってしまいます」(小島氏)
出版社などの紙媒体のコンテンツ制作では、編集長以下、執筆・校正・校閲という一連のフローがあるのが一般的だ。しかしWebコンテンツは、掲載できる量が無限大である特性上、限られた予算で多くのコンテンツを作ることが優先されてきた。
品質を追求すると投資対効果が合わないため、校閲(校正)機能を持たないライターが執筆し、発注する企業側には編集やチェックを行う機能も時間もない。こうして、エビデンスに乏しい、低品質なコンテンツが世に出ていく状況が続いていたのだ。
「記事作成サービス『サグーワークス』の立ち上げ時から、コンテンツマーケティングの流れが“質より量”へと加速していくことに危機感を抱いていました。
『サグーワークス』で執筆から校閲までのプロセスをすべて担う受託型のサービスを展開してきたのは、品質の担保を第一に考えたからです」(小島氏)
「E-A-T」が高くない記事は作っても読まれない
多くの企業が、「品質の重要性はわかってはいるものの、そこまで予算や人的リソースを割けない」としてきたコンテンツ制作だが、ここ数年、品質の担保が重要な課題になっている。
大きなきっかけとなったのは、2016年12月に発覚した医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の問題だ。
「問題発覚以前から、読み手・発注者ともに漠然と『この情報のソースはどこにあるのか』『ファクトチェックはされているのか』といった疑問は持っていたと思います。
問題が明るみになり、“Webコンテンツは信ぴょう性が薄い”というイメージが顕在化した。それがWebコンテンツ作成の市場において、大きなターニングポイントとなりました」(小島氏)
実際、Googleは2017年2月に、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトがより上位に表示されるようにアルゴリズムを改良した。
その後も、医療や健康分野の情報は、医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、信頼性が高い情報が上位に表示されやすくなるようにアルゴリズムが改良され、情報の正確性や信頼性が重要になってきている。
今、Googleの検索品質評価ガイドラインでも『E-A-T』は重要なものとして扱われており、E(Expertise:専門性)、A(Authoritativeness:権威性)、T(Trustworthiness:信頼性)がなければコンテンツは評価されず、読まれなくなりつつある。
「こうした背景から、高品質なコンテンツをできるだけ無駄なく(安く)作るにはどうすればいいのか、という企業のニーズはどんどん大きくなっています。『エディトル』は、それらの声に応える形で開発を進めています」(小島氏)
「エディトル」がコンテンツの質と業務効率の向上を両立させる
そこで「エディトル」は、「外部編集者×外部ライター」という2階層の体制をベースに、必要な機能(役割)を自由に組み合わせることで、高いパフォーマンスを上げられるよう設計した。
コンテンツの企画、執筆者の選定・発注、校正・校閲の発注といった制作プロセスと、それに関わるコミュニケーションをデジタル化し、進捗管理もオンライン上で行うことができる。これらを、まずは社内で運用テストを行いながら、一般公開に向けて迅速に開発を進めている。
「一般公開はまだですが、エディトルの活用法は企業側の体制によって異なる想定です。社内に編集体制がある場合は、専門性を持つライターのみの依頼。少人数で企画から制作、品質チェックまでしなければいけない企業であれば、編集者・ライター・校閲者を工程ごとに依頼。
どんなケースにおいても、品質を保ちつつ、無駄なく、編集チームをカスタマイズできるようにしていきます」(小島氏)
登録しているライターの得意分野、趣味などがキーワード検索で簡単に調べられるのも特徴。それにより、そもそもクリエイター人脈がなければ実現し得なかった、幅広いコンテンツ制作が可能になる。
医師や弁護士、税理士などの専門家を、校閲者としてアサインすることで「高品質なコンテンツ」に必要な「E-A-T」も担保できる。
業務ごとに個別のクリエイターに依頼していたものが、オンラインで完結するようになれば、発注する企業側の業務効率も大きく改善されるだろう。
「品質担保のために、編集経験のある社員が、ライター・編集者・校閲者向けに独自のテストを開発しています。テストの結果に応じて、クリエイターは依頼を受けられる記事の範囲が広がり、単価も上がっていく仕組みです。
一人ひとりの能力が可視化されるので、企業は予算や内容に応じた人材をマッチングさせやすくなります」(小島氏)
集客力のあるコンテンツ制作のノウハウを持った編集者が、構成やタイトル、見出しを設計し、ライターはそれを読み物として魅力的な文章に落とし込んでいく。そのプロセスを一気通貫で依頼できるのは、企業にとって大きなメリットだろう。
出版社との連携で質の高い制作ノウハウを蓄積する
より高品質な制作ノウハウを蓄積するため、ウィルゲートは出版社と連携したメディア運営にも取り組んでいる。
主婦の友社とは2014年に業務提携し、暮らしのアイデア投稿メディア『暮らしニスタ』や妊娠・出産・子育てメディアの『Milly』を運営。小学館の『BE-PAL』、KADOKAWAの『花時間』ともWebサイトを共同運営している。
ウィルゲートが共同運営する、暮らしのアイデア投稿メディア『暮らしニスタ』。
「『暮らしニスタ』では、もともとComoの誌面で展開していた“暮らしのアイデア”が多数集まることから、そのアイデアを誌面とは違い、スペースに限りのないWeb上でどんどん紹介していこうと企画が始まりました。
雑誌の売り上げが落ち込む中、Webシフトによって広告収入を上げることは、どの出版社にとっても重要な事業戦略になっています。一方、私たちは出版社が培ってきた編集部としての知見を学びたい。
紙媒体とWeb媒体のノウハウを交換しながら、今後『エディトル』を活用する企業にアドバイスできることを増やしていきたいと考えています」(小島氏)
ウィルゲートが記事作成の値下げ競争に巻き込まれずに事業成長を続けてこられたのは、SEOコンサルティングで蓄積してきた集客ノウハウに加え、コンテンツの品質担保に早くから取り組んできた結果だ。
コンテンツプロデュース事業を拡張しはじめたタイミングで、プロダクト開発の企画職やエンジニアを増員。素早く顧客ニーズに応えたプロダクトを開発するため、プロダクト部門の採用に注力した。
また、多様な顧客ニーズに応えるため、インバウンドマーケティングを強化することでセールス組織を少数精鋭にし、コンサルティング組織を大幅に増員した。
加えて、ライターや編集者の能力に応じた適正な報酬を設定し、仕事を依頼してきたことが、約21万人の豊富なライターネットワークにつながっている。
「私たちが作ってきたほとんどのコンテンツはマーケティング目的です。だからこそ、いいコンテンツを増やすことは、価値ある商品・サービスがきちんと評価される社会の実現につながるという思いがあるのです。
今後、得意分野を持ったプロフェッショナルが、案件ごとにチームを作って能力を発揮するという働き方はますます広がっていくでしょう。そんな時代に、コンテンツの作り手の方々が『好きなことで稼げる』世界観を実現したい。
コンテンツ作成のプロがネットワーク化され、一元管理できるツールがあれば、企業側、クリエイター側双方の『Willの実現』につながります。『エディトル』が、これからのWebコンテンツの事業構造を変えていきます」(小島氏)
(執筆:田中瑠子 編集:大高志帆 撮影:露木聡子 デザイン:九喜洋介)