[ブリュッセル/ローマ 8日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は8日、イタリアの経済成長が向こう2年間は同国政府の予想より緩慢になるとし、財政赤字は政府予想より拡大するとともに、公的債務は縮小はせず横ばいで推移するとの見方を示した。

欧州委が示した予想を受け、イタリア10年債利回りは3.385%から3.413%に上昇した。

ユーロ圏財務相は5日の会合で、イタリアの2019年予算案がEU財政規律に違反しているとの見解を表明しており、欧州委が示した予想はこうした見方を裏付けるものとなる。イタリアが期日の13日までに改正予算案を提出しない場合、欧州委は月内に是正に向けた措置の策定に着手するが、今回示した見通しはその論拠となる可能性がある。

イタリアのコンテ首相は、欧州委の見通しは構造改革などの効果を過小評価していると指摘。声明で「イタリアの改革の健全性と持続可能性に疑問を呈する論拠はない。このため、イタリアの公的財政を巡る他のいかなるシナリオも信頼できないものと考える」とした。

イタリアのトリア経済・財務相も欧州委の見通しは正しくないと反論。声明で「欧州委のイタリアの赤字に関する見通しは(予算案の)不完全な分析に基づいており、イタリア政府の見通しと大きく異なる」とした。ただ政府は欧州委と建設的な協議を継続するとの立場を示した。

欧州委のモスコビシ委員(経済・財務・税制担当)は9日にローマを訪問し、協議を継続する意向を表明。ただ「規則は尊重する必要がある」とし、いかなる妥協も行わないとの立場を示した。

欧州委はEU加盟28カ国の定例の経済見通しの中で、イタリアの国内総生産(GDP)の今年の伸びは1.1%になると予想。イタリア政府が予算案で示した1.2%を下回った。

欧州委は19年は1.2%、20年は1.3%と予想。ともにイタリア政府の見通しの1.5%と1.6%を下回った。

国際通貨基金(IMF)はイタリアについて一段と厳しい見方を表明。成長率は19年が1.0%、20年は0.9%になるとの見通しを示し、経済成長が潜在力を上回っている限り、イタリアは財政赤字と公的債務の削減を優先する必要があるとの見解を示した。

経済成長が低迷することで、財政赤字の対GDP比率は今年1.9%と、イタリア政府の予想の1.8%を上回ることになる。19年は財政支出の拡大と減税などで同比率は2.9%と、政府予想の2.4%を上回る見通し。20年についてはイタリア政府は2.1%に低下するとの見通しを示しているが、3.1%に上昇するとの予想を示した。

EUは加盟国に財政赤字をGDPの3%以下に抑えるよう求めている。