【異説】「鉄の女」メルケルは本当に「欧州の守護者」なのか

2018/11/10

経済危機を膨れ上がらせた張本人

混乱に満ちたこの時代に、世界は冷静なリーダーシップを備えた稀有な人材を失う──。2021年にドイツの首相の座から降りるアンゲラ・メルケルの政治生命の終焉を「追悼」する記事は、そんな論調であふれている。
EU(欧州連合)にとって、その損失は極めて深刻だという。ブレグジットという名のイギリスとの泥沼離婚、ハンガリーやポーランドで台頭する専制主義、ポピュリスト的なイタリア政府との対立──。
ヨーロッパが様々な困難に直面するなか、迫りくるメルケルの引退によって、EUは結束のための強力な旗手を失う。こう指摘する専門家やジャーナリストは数知れない。
メルケルには「自由主義陣営の守護者」という好意的なイメージが定着しているが(Jesko Denzel/The New York Times)
だが、現代ヨーロッパ史におけるメルケルの評価について、多くのエコノミストはそこまで寛容な見方をしていない。