[東京 16日 ロイター] - 収束の兆しがみえない米中間の貿易摩擦について、ロイターが日本企業に聞き取り調査を実施したところ、3割を超える企業が何らかの影響が出ていると回答し、すでに対岸の火事ではない実態が明らかになった。

先行きの影響を懸念している企業は半数超に達しているものの、米国を巡る貿易摩擦が一段と拡大した場合の具体的な対策は約9割が「検討していない」としており、現状は動向を警戒しつつ見守っている段階にあるようだ。

調査は9月27日から10月10日にかけて実施した。資本金10億円以上の中堅・大企業482社に調査票を送付。252社が回答した。

実際に影響が出ていると回答した企業は全体(回答239社)の33%。このうち「大いにある」との回答は2%ポイントですべてが製造業だった。非製造業でも31%が「ある程度はある」としている。

影響を「懸念」している企業は、こちらも製造業を中心に全体(同243社)の53%が「懸念がある」と回答した。特に「輸送用機器」「化学製品」「鉄鋼・非鉄」では7割を超える企業が懸念を示している。

具体的に「輸送用機器」からは、米国で生産するための「中国からの輸入原材料に大きな影響が出ている」、「中国拠点から(米国への)輸出がある」と実害を指摘する声が出ているほか、「万一、日本からの輸出車に高関税が課されると、極めて大きな負の影響が想定される」と日米貿易交渉の動向への警戒感も強い。

非製造業は、製造業に比べて懸念度合いは低いものの、「世界経済全体の落ち込みを懸念している」(不動産)、「景気が悪くなる恐れがある」(小売)などマインド面を含めて需要の減退につながらないか注視している。

中国に輸出拠点がある企業(同97社)のうち、13%が事業を「中国以外に移管する検討をしている」と回答。そのうち、具体的な移管先として75%が「中国以外のアジア」としており、「日本」は17%だった。

今後3年程度を見通した場合、米中をはじめとした貿易摩擦がサプライチェーンに打撃を与える可能性を聞いたところ、40%が「可能性がある」と回答。特に多くが警戒するのは「原料が入手しづらくなり、原料価格が高騰する」(鉄鋼)といった原材料価格の上昇だ。「中国工場の操業ができなくなる」(機械)といった切実な声もある。

もっとも、米国を巡る貿易摩擦がさらに激化した場合の対策については、「検討している」との回答は1割強にとどまっている。9割弱は「特に検討していない」としている。企業は「どこで決着するのか見えない」(精密機器)という不安材料を抱えたまま、保護主義的な通商政策の行方を固唾をのんで見守っている。

日米両首脳は9月下旬、農産品や工業用品など幅広い品目を対象にした「物品貿易協定」(TAG)の協議に入ることで合意した。自動車などの対米輸出に高関税が適用された場合の具体的な対応(1つのみ回答)については、「生産性向上によるコスト吸収」が全体(238社)の10%と最も多く、次いで「米国への事業移管」が7%だった。

このうち「米国への事業移管」は「化学製品」の42%、「輸送用機器」の36%に達しており、「輸送用機器」では14%が「米国以外への事業移管」も挙げている。

(伊藤純夫 編集:石田仁志)