ペンシルバニア大学ウォートン校のスター的存在であるアダム・グラント教授が、この秋に刊行されるいくつかの書籍から、おすすめ本を紹介する。

新しい季節に必要な新しい視点

季節が変わろうとしている。生産性のエキスパートによれば、そうした時期には、日常的な習慣も一緒に変えるべきだという。
「私たちは季節のある世界に生きている。それなのに、生産性に関するアドバイスは、1日や1週間、1年、あるいは5年といった期間で考えるものばかりであり、季節を基準にしているものはないように見える」と指摘するのは、ライターのマット・トーマスだ。
旧約聖書「伝道の書」3章1節を引用すれば、「天が下のすべての事には季節がある」のだ。その格言を真剣に受け止め、パンプキン・スパイス・ラテを買うだけでなく、もっと秋らしい方法で、重要なことに取り組んでみてはいかがだろうか。
どうやら、ベストセラーの著者でペンシルバニア大学ウォートン校教授のアダム・グラントは、そのアドバイスを真剣に受け止めているようだ。
グラントは最近、リンクトイン(LinkedIn)を通じて、秋こそ新鮮なアイデアで思考に活を入れるのにぴったりの時期だと主張し、それに役立つ12冊の最新刊や近刊を紹介した。新しい季節には、新しい視点が必要だ。ここで紹介する本は、それを与えてくれるはずだ。
1.『Joyful』イングリッド・フェテル・リー著
「喜びは、幸せを構成するもっとも基本的な要素だ。この魅力的な本は、どこで喜びが見つかるのか、どうやって生み出せばいいかを教えてくれる」とグラントは語っている。著者は、有名なデザインファームIDEOの元ポートフォリオ・ディレクター。
2.『The Person You Mean to Be』ドリー・チャー著
「偏見と闘い、多様性とインクルージョンを堅持する方法、そして、力や特権を持たない人たちを支援する方法を、証拠にもとづいて生き生きと説いている」とグラントは紹介している。
3.『Farsighted』スティーブン・ジョンソン著
「人生で最も大きな後悔の中心には、未来について誤った予測を立ててしまったという状況がある。本書では、私たちが長期的に見てまずい判断をしてしまいがちな理由を、科学・歴史分野の人気ライターが解き明かしている」とグラントは語っている。
4.『The Coddling of the American Mind』グレッグ・ルキアノフ、ジョナサン・ハイド著
本書は、アメリカ合衆国憲法修正第1条の専門家と著名な社会心理学者による共著。簡単に言ってしまえば、「ヘリコプターペアレント(過保護・過干渉な親)」にならない方法と秘訣を説明するマニュアルだ。
5.『Rule Makers, Rule Breakers』ミシェル・ゲルファンド著
「政治的分断や幸福、自殺率、犯罪と創造性の共存といったことが、根源的だが見過ごされている社会的規範のある側面とどう関係しているのか。こうしたことについて、文化心理学の専門家が明らかにしている」同書は、興味をそそられる1冊だ。
6.『The Personality Brokers』マーヴ・エムレ著
グラントは本書について「活気に満ちた伝記。ただし人ではなく、広く普及している性格診断をめぐる伝記だ」と紹介している。本書は「性格診断『MBTI』の知られざる起源と、性格型がもつ誘惑的な魅力、そして致命的な欠陥を巧みに暴いている」。
7.『Imagine It Forward』ベス・コムストック著
「官僚的な組織のなかで成功し、そうした組織をイノベーション・マシンに変身させるための洞察に満ちた本」とグラントは紹介している。こうしたテーマのちょっとした助言が役に立たない人などいるだろうか。著者は、GE副会長。
8.『Wisdom at Work』チップ・コンリー著
Airbnb幹部による本書は「年配者の知恵を職業人生に活かす方法を探る、タイムリーで興味深い本」だ。「キャリアの半ばで成功し、高齢者差別と闘い、ミレニアル世代を導き、同時に彼らから学ぶための戦略」が提示されている。
9.『AI Superpowers』李開復 著
「中国でも指折りの影響力を持つテック系投資家によるもの。著者はこれまで、グーグル、マイクロソフト、アップルにおける先駆的な人工知能の開発に関わってきた」
本書では「テクノロジーの次なる波が、私たちの仕事を実際にどう改善するのか、テクノロジーに私たちの生活を乗っ取られないためにはどうすればいいのかについて、エキサイティングな視点が提示されている」とグラントは紹介している(AI全般についてもっと理解したいなら、この手の本は良い足がかりになるはずだ)。
10.『Thirst』スコット・ハリソン著
「この本が魂にもたらす効果は、カラカラに乾いた喉に水がもたらす効果と同じだ。アフリカの貧しい地域にきれいな水をもたらすことを目標とする世界有数のクリエイティブな慈善団体『charity:water』を率いるスコット・ハリソンが、パーティー大好き人間から、先見の明のあるリーダーへと、たぐいまれな変身を遂げた経緯を語っている」とグラントは紹介している。
11.『Blitzscaling』リード・ホフマン、クリス・イェ著
リンクトインの共同創業者であるベンチャーキャピタリスト、リード・ホフマンの実践的な助言を聞きたいと思う、売り出し中の起業家にぴったりの本だ。
グラントはこの本について「会社を急激に成長させる方法、そしてそもそも起業に挑戦する価値があるのはどういう時かを教えてくれるマニュアル」と説明している。
12.『The Job』エレン・ラッペル・シェル著
本書は「人生のなかで仕事がもつ基本的な役割をめぐる優れた本で、なぜ仕事が重要なのか、なぜうまくいかないのか、どうすれば修正できるのかを探っている」。
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秋の読書用の推薦書をもっと知りたいなら、リンクトインでグラントをフォローして、彼が定期的に紹介する、思索に満ちた推薦書をチェックしてほしい。あるいは、ほかの人がすすめる、秋の読書にぴったりの本をチェックしてみてもいいだろう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman/Contributor, Inc.com、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:CherriesJD/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.