EQスキルを高めるスタート地点

わたしが「心の知能」(Emotional Intelligence)という概念について学んだのは、30歳をかなり超えてからだった。
しかし、たとえあなたがそろそろ半世紀の節目に近づきつつあるとしても(というより何歳であろうと)、2020年までに最も必要とされるようになるであろうジョブスキルの1つとして称賛されてきたこの能力について、学ぶのに遅すぎることはない。
高いレベルの「心の知能指数」(EQ)を示す一流の職業人、起業家、そして指導者たちは一般的に自己認識力が高く、他人と協力するのが得意で、早く昇進するということがわかっている。
実際、このテーマに関して重要な本を数多く執筆しているダニエル・ゴールマンは、広範囲にわたる研究を行ない、次のように示唆した。
人がいったん専門分野の仕事に就き、自分の役割が増えていき、他の人たちを指導するようになり、政治的な状況の舵取りをするようになると、一般的な知能指数(IQ)はEQに対して、この先の仕事を引き継いでくれないかと頼みこむことだろう。
このテーマに関しては、非常に多くの影響力のある本が書かれてきた。以下の書籍リスト(順不同)は、わたしが選んだ最新リストであり、あなたのEQスキルを高めるのに正しい方向へスタートを切らせてくれるだろう。
1.『ビジネスEQ──感情コンピテンスを仕事に生かす』ダニエル ゴールマン著(邦訳:東洋経済新報社)
著者のダニエル・ゴールマンは、世界中の500以上の組織から集めた大成功や大惨事、さらには劇的な転換といった興味深い事例史を、この一冊に詰めこんだ。おそらく、同氏の最高傑作といえるだろう。
2.『EQ Applied: The Real-World Guide to Emotional Intelligence(EQを応用する:実社会で心の知能を生かすための手引き)』ジャスティン・バリソ著(邦訳なし)
著者のジャスティン・バリソはEQ界に参入して間もないが、説得力のある科学的研究と人目をひく実例や、魅力のある個人的な物語とを結びつけている。もしあなたがEQの概念を学んだうえで、それを応用することが難しいと感じたことがあるなら、この本がお薦めだ。
バリソは、日常的な状況あるいは感情的になっている状態で、EQを最大限に活用する方法についての現実世界における最新の戦略を数多く提案している。
3.『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』ダニエル・カーネマン著(邦訳:早川書房)
わたしたちはどうしてそのように考え、それがなぜ問題なのだろうか。説得力があり、わかりやすいこの書籍の中で、ノーベル経済学賞受賞者でもある心理学者ダニエル・カーネマンは、わたしたちがものを考え、より良い決定を下すために、どのように感情を使うことができるのかを説明している。
4.『EQの高い子供に育てるために』ローレンス・シャピロ著(邦訳:扶桑社)
著者のローレンス・シャピロ博士は、ゲームやチェックリスト、さらに実践的な子育てのテクニックをたっぷり詰めこんで、あなたの子どもが現代特有の感情的ストレスや成長にまつわる通常の問題に立ち向かい、乗り越えるのに力を貸してくれる。
5.『Applied Empathy: The New Language of Leadership(共感力を応用する:リーダーシップの新しい言語)』マイケル・ヴェンチュラ著(邦訳なし)
起業家であり、受賞歴のあるデザイン会社サブ・ローザ(Sub Rosa)のCEOであるマイケル・ヴェンチュラは、リーダーが自分の視野を通して物事を見極められるよう手助けすることにより、多様性があり、独創的でやる気に満ちたチームを作るための基礎を築いている。
もしあなたが、同僚や上司と気持ちを通じ合わせ、彼らを心から理解したいのであれば、この本がお薦めだ。
6.『Emotional Judo: Communication Skills to Handle Difficult Conversations and Boost Emotional Intelligence(心の柔道:難しい話し合いをうまく扱い、心の知能を高めるコミュニケーションのスキル)』ティム・ヒッグズ著(邦訳なし)
「心の柔道」は、難しい話し合いにおいて、自分自身の感情や相手の感情をコントロールしながら、何をいつ言えば良いかを知るのに役立つ一連のコミュニケーションツールだ。
著者のティム・ヒッグズはスキルを教えてくれるだけでなく、「心の柔道」を実践して、個人的な人間関係や職場の人間関係における課題を克服した人々の実生活のケーススタディを提示している。
7.『すべては「先送り」でうまくいく──意思決定とタイミングの科学』フランク・パートノイ著(邦訳:ダイヤモンド社)
著者のフランク・パートノイは、何百もの科学的研究からわかったことと広範囲にわたる専門家へのインタビューとをつなぎ合わせることで、めまぐるしい世の中でわたしたちが通常見ているものとは異なる、効果的な意思決定の全体像を提示している。
8.『The Leader's Guide to Emotional Intelligence(リーダーのための心の知能の手引き)』ドリュー・バード著(邦訳なし)
著者のドリュー・バードは、心の知能を概念とプロセスに分解するというすばらしい作業を行っている。彼はEQの特徴を説明したうえで、さまざまなツール、リソース、ワークシートを用いてEQを発達させるための実践的な提案を行なっている。
9.『The EQ Interview: Finding Employees With High Emotional Intelligence(EQを知るための面接:心の知能が高い従業員の見つけ方)』アデル・リン著(邦訳なし)
コンサルタントのアデル・リンが著したこの本を読むと、仕事に応募してきた者の心の知能を評価し、彼らがたしかにその仕事に適任であると思えるために必要なスキルと理解を得ることができる。
本書には、応募者が過去の経験でどのようにEQを使ってきたかがわかるように作られた、行動ベースの質問が250問以上含まれている。
10.『スイッチ!──「変われない」を変える方法』チップ・ハース&ダン・ハース著(邦訳:早川書房)
批評家が称賛しているベストセラー『アイデアのちから』(邦訳:日経BP社)の著者であるチップ・ハースとダン・ハースは、自分の目標をどうやって行動や感情と連携させるかについて考えるよう提案している。本書には、神経科学と心理学の最新の研究結果が含まれている。
11.『Wired to Care: How Companies Prosper When They Create Widespread Empathy(気遣いするようできている:共感を広く行き渡らせると、企業はうまくいく)』デブ・パトナイク著(邦訳なし)
ビジネス戦略の第一人者であるデブ・パトナイクは、ピーター・モーテンセンとの共著である本書において、あらゆる種類の組織がわたしたちがそれぞれすでに持っているが眠っているある力を活用した場合、どのように繁栄するかについて述べている。
その力とは共感力。つまり、自分自身の外側に到達し、他人とつながる能力のことだ。
12.『The Empathy Factor: Your Competitive Advantage for Personal, Team and Business Success(共感という要素:個人、チーム、ビジネスが成功するための競争優位)』マリー・ミヤシロ著(邦訳なし)
受賞歴をもつコミュニケーション戦略および組織戦略の専門家であるマリー・ミヤシロが、脳科学、心の知能、そして組織論における最新研究をふまえながら、共感の真の定義に関する数々の疑問に答える。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Marcel Schwantes/Principal and founder, Leadership From the Core、翻訳:岡田ウェンディ/ガリレオ、写真:percds/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.