「自己充足的予言」と負の効果

「自己充足的予言」という概念について、聞いたことがあるだろうか。
これはネガティブな例で言えば、物事や人物に対して何か誤った思い込みを持っていると、それがあなたの行動に影響を及ぼす結果、その思い込みが現実のものになってしまうことがあるという現象だ。これは良くない。
たとえて言えば、従業員とは怠けるものだと考えているマネージャーのようなものだ。こうしたマネージャーは、自分が考えている反応を引き出すようなやり方で、従業員を扱ってしまう(「ほら、怠け者じゃないか!」というわけだ)。
そのおおもとには、私たち自身の信念と価値観に根ざした思考パターンがある。しかしそれを、誤った思い込みを強化するような言葉として声に出して発すると、事態はさらに悪くなる。
つまり、自分たちが選んで発したその言葉が自分が世界をどのように感じるか、そして他者が自分をどのように感じるのかに対して影響を及ぼすのだ。
心というのは必ずしも真実ではないことを、私たちに巧妙に信じこませることができる。これは、誰もが意識的にも無意識にもやっていることだが、それによって私たちは人間として、労働者として、親として、リーダーとして、成長しにくくなってしまう可能性がある。
そうなると厄介だ。だから、どんな言葉を発するのかには注意を払おう。たとえば、こんなふうに考えたり、物事を表現してしまったりしたことはないだろうか。

1.「オール・オア・ナッシング」で考える

時によって、物事は「白か黒か」「正しいか間違っているか」であり、その中間はないという見方をしてしまうこともあるだろう。こうした傾向が自己充足的予言になってしまうと、完璧主義的傾向が「完璧ではない自分はダメな人間だ」といった言葉によって、さらに強化されていくことになる。

2. 一般化しすぎる

人や出来事、状況について「いつも」とか「絶対」といった言葉を使うことはないだろうか。昇進の条件を最も満たしているのはあなただったりするのに、「自分は絶対に昇進できない」という自己評価の低い思い込みを表す言葉を発しているかもしれない。

3. 物事を実際より悪くとってしまう

これは物事を実際の状態よりも非常に重要であるととらえるか、逆に重要でないというふうに誤って判断してしまうということだ。そういうことをすると、自分や周りの人たちにとってトラブルが生じやすい。
こうした傾向は、たとえば次のような言葉のなかに現れる。「締め切りまでに書類を送り忘れてしまった。これで上司はもう絶対に私を信頼してくれないし、昇給のチャンスもない。同僚たちも私を認めてくれないに違いない」

4. 過去にとらわれている

何かを分析しすぎて「こうすべきだったのに」「こうできたのに」「ああしただろうに」といったような状態に陥っていないだろうか。こうした態度は過去に注目しており、「今ここ」にある現実の問題に対する解決策を提示していない。そういう意味で役に立たないものだ。
たとえばこんな発言だ。「あの件についてはもっと頑張ることもできたはずなのに。達成するために、週に80時間は費やすべきだった」

5. ほかの人に不当に否定的なレッテルを貼る

同僚から間違った扱いを受けたとする。もしかしたらそれは、相手の単なる勘違いだったのかもしれない。それでもあなたは相手を許すことはせず、恨み続けることにした。相手の悪行を非難し、自分の行動を正当化することにしたのだ。
相手に「バカ」というレッテルを貼ってしまうことは、さらに協力したり改善したりするあなたの能力を傷つけるだけなのだ。

6. 結論を急ぐ

証拠や事実の裏づけなしに、ひどい決めつけをしたり、将来のことについて否定的な予測をしたりして、非難されたことがある人もいるかもしれない。
こんなことを言っていないだろうか。「この旅行に行ったら、住宅ローンが払えなくなってしまう」(実際には、5カ月分はゆうにカバーできる貯金があるのはわかっているのに)。

7. ほかの人の良いところにケチをつける

批判的になる傾向がある人は、否定的な部分を強調しすぎて、人の努力や善意にケチをつけてしまう。たとえば、高い成果を挙げている同僚について「誰でもできたはず」なのだから称賛には値しないなどと言ってしまうのは、まさに他者の良いところにケチをつける例と言えるだろう。

8. 誰かを責める

自分が全面的に悪いのではないのに自分を責める。あるいは人を責めて、自分がその状況で果たした役割について否定するというのが、このタイプの有害な思考パターンの典型的な例だ。
こうした思考パターンが表れる発言の例を挙げよう。「もし私が若ければ、あの仕事をもらえたはずなのに」とか「この件について彼女が要求さえしてこなければ、私が怒って言い返すこともなかったのに」といった発言だ。

9. くよくよ考えすぎる

ネガティブな細かいことやネガティブな事実についてクヨクヨ考えることで、楽しみやパフォーマンス、幸福、希望などを台無しにしてしまうというのは、あなたを制限する有害な思考パターンだ。
たとえばこんな状態だ。あなたのチームがここ数カ月で一番生産的な会議ができたと思っているのに、あなたは自分のパワーポイントのプレゼンが上手くいかなかったので、会議が台無しになったと思っている。他の人は誰もそのことを気にしていないのに、あなたはそれを忘れることができない。
*   *   *
さあ、こんどはあなたの番だ。あなたならこのリストに、どんなことを追加するだろうか──。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Marcel Schwantes/Principal and founder, Leadership From the Core、翻訳:半井明里/ガリレオ、写真:DrAfter123/iStock)
©2018 Mansueto Ventures LLC; Distributed by Tribune Content Agency, LLC
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.