インターネットで世の中を変える側に回りたい

2018/11/3

起業家志向ではなかった

私は今、グリーの創業者で、かつ現役の会長兼社長ですから、世間一般からは起業家とみられていると思います。実際、起業家と思われること自体は間違いではない。
しかし、昔から「必ず私は起業してやる、起業家になってやる」などとは思っていませんでした。
私が昔からやりたかったことは、インターネットの世界で素晴らしいサービスを作って多くの人に利用してもらい、それによって世の中を変えていくことです。
これは41歳になった今でも全く変わっていません。その思いを実現するには、会社に勤めるビジネスパーソンという形ではなく自分で会社を起業するしかないという状況になったので、やむなく起業したというのが本当のところです。
そんなふうに私がインターネットの世界に入れ込むようになったきっかけは、高校生の終わり頃にあります。
第2回でもう少し詳しく話しますが、当時、私は、高校生としては珍しく、家で日本経済新聞を読んでいたんです。
そこで、インターネットのサービスがどうこうというよりも、まずは自分よりも少し年上なだけの20代前半の若者たちが、自分の家で起業したような会社が米国では次々登場していることを知り、さらにそれはインターネットがあるからこそできると分かって衝撃を受けました。
これはすごい。インターネットというもので、これから世の中が大きく変わっていくんだと。
私は考えました。世の中が大きく変わるとき、それを見守っていく側に回るのか、あるいは自分も一緒になって世の中を変える側に回るのかで、人生は大きく道が分かれるはず。
ならば、実際に大きいことをできるかどうかはさておき、自分は世の中を変える側に回って、新しい波を体験したいと思った。それがインターネットの世界に入れ込むようになったきっかけです。
私が学生の時代は、起業すること自体が相当珍しいことだったので、インターネットに関連する会社に入りたいということしか考えていませんでした。
実際、大学を卒業して、まずはインターネットサービスプロバイダ(ISP)のソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)に入社しましたし、その後も、楽天に転職してそこで社員として働きました。
必ずしも起業したかったわけではなく、そういうインターネットで何かを生み出していく会社で働き、新しいインターネットのサービスを作って、世の中を変えていくことに参加していくことの方が、自分にとって重要でした。

教科書を3日で読んで考えた

今振り返ってみると、そういう考え方は、実は子どもの頃から持っていました。よく思い出しますが、私は小学生のとき、教科書をよく読み込んでいたんですよ。